中国各地で、知的障害者や身体障害者を狙った強制労働の実態が次々と暴かれている。法治国家を標榜するはずの中国で、なぜいまだに奴隷労働が絶えないのか。しかも、過酷な重労働を強いられているのは、本来社会的に支援を受けるべき存在である障害者たちである。
似たような事件が報じられるたび、人々はその答えを考えざるを得ない。そして、「想像できるが、当たってほしくはない」最悪の黒幕の存在にも、すでに多くの人々が薄々気づいている。
9月7日、人身売買摘発に関する情報を発信するセルフメディアを有志で運営する上官正義さんが、広西チワン族自治区欽州市の奴隷工場で6人の障害者が強制労働させられている映像を公開した。
この工場では、「病気になると捨てられる」「肉を食べさせてもらえない」といった証言もある。しかし、通報を受けた警察が現場に到着する前に、関係者が障害者を逃がす場面が確認された。
(奴隷工場の内部の様子。2025年9月7日。上官正義さんの公開動画より)
こうした事件は今回に限らない。中国では昔から「黒窯(ヘイヤオ)」と呼ばれる知的障害者に対する奴隷工場での強制労働が繰り返し明らかになっている。
(体制を直接揺るがさない範囲で国内の社会問題やスキャンダルを報じることも時にはある)北京紙「新京報」によると、2015年以降少なくとも50か所の奴隷工場で障害者が強制労働させられ、その数は400人近くにのぼる。
障害者が奴隷工場に連れ込まれる経緯はさまざまだ。街頭で誘拐されたり、数百元で「売買」されたりするケースもあれば、武装した人間が別の工場から障害者を奪い取る事件すら起きている。被害者は1日12時間以上、休みなく働かされ、賃金は支払われず、反抗すれば鎖につながれ殴打される。名前を奪われ、身分証を取り上げられ、逃げ場を失う実態が報じられてきた。

河南省でも、精神障害を抱える男性が村から失踪したのち、9年間にわたり複数の奴隷工場に転売され、殴打や虐待を受けながら強制労働させられていたことを中国メディアが報じていた。先月発見された際の様子は痩せ細り、歯もほとんど失っていた。
男性は、同じ境遇の障害者が十数人も監禁されていたと証言している。しかし家族が工場や責任者を突き止めても、公安や地元政府はまともに動かず、処罰も依然として不透明なままである。
ネット上では「十年以上問題視されてきたのに、なぜ解決されないのか」「いつも警察が到着する前に工場が片付けられるのは偶然ではない」「地方の保護なしに続くはずがない」との声が相次いでいる。犯罪の背後にある政府の存在に人々は薄々気付いているもようだ。
当たってほしくはないが、最悪のケース──障害者を搾取する奴隷工場の背後には、地方政府や権力機関が絡んだ保護ネットワークという黒幕が潜んでいるのではないか。
もちろん表向きの報道は沈黙する。しかし、2007年の山西省奴隷工場事件はすでにその構図を示していた。工場経営者と地方幹部の癒着、通報者への圧力、警察内部からの情報漏洩、そして労働者保護を担うはずの地方政府の部門・人社局の不作為など、今回のケースもその延長線上にあるのではないか。
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