中国で公開された宣伝映画『火種』が、観客のいない上映回を「満席」と表示して人気を装っているとの疑いが浮上。主演女優の田海蓉(でん・かいよう)は、俳優・于朦朧の不審死事件で「関与を疑われる人物の一人」としてSNS上の「加害者リスト」に名を連ね、若者たちのボイコットの的となっている。
各地の映画館で、昼は客がいないのに深夜だけ「完売」と表示されるなど、不自然な上映が続出している。劇場が閉まっているのに「満席」とされた例もあるという。
SNSでは「いつもやっているが今回は露骨すぎる」と批判が殺到。観客がいなくてもチケットを「売れたこと」にすれば、裏金を「映画の売上」として処理できるため、資金洗浄の手口に使われていると指摘している。
于朦朧事件
于朦朧事件は、中国の中堅俳優・于朦朧(ユ・モンロン/アラン・ユー、37歳)が9月に、北京の高級住宅で不審な死を遂げた事件である。

警察はわずか1日で「酒に酔った転落事故」と発表したが、現場には不審な点が多く、どう見ても他殺を疑わせる状況が相次いで指摘された。事件直後から徹底した言論封鎖が行われ、関連投稿は即座に削除され、アカウント封鎖も相次ぐなど、前例のない検閲が行われた。
投稿の削除と報道の封鎖は、かえって人々の疑念を深めた。やがて中国国内にとどまらず、海外の華人社会にも波及し、民衆による「真相調査」が本格的に始動、事件の全貌を少しずつ明らかにしていった。分析の結果、于が長期間監禁され、虐待を受けた末に計画的に殺害された可能性が浮上した。
さらに、権力者の性的要求を拒んだ報復や、上層部の儀式的な「いけにえ」、人体標本ビジネスや特権階級の犯罪隠蔽など、国家権力の闇を示す疑惑が次々と表面化している。事件は、中国社会の底に潜む恐怖と腐敗の象徴となっている。

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