2022年7月に発生した安倍晋三元首相銃撃事件をめぐり、裁判員裁判の初公判が10月28日から奈良地裁で始まる。山上徹也被告(45)は殺人罪などで起訴され、殺人罪については起訴内容を認める方針を示す一方で、銃刀法違反や武器等製造法違反の一部については争う姿勢を見せている。裁判では、山上被告の母親が証人として出廷することが決定。裁判は12月に結審し、判決は来年1月21日に言い渡される予定だ。
事件の捜査や法医学的な検証に関しては、いくつかの未解明の点が残されている。銃弾の弾道、射入方向、安倍氏の救命治療に当たった奈良県立医大付属病院の福島英賢医師(教授)の所見と、奈良県警の司法解剖の食い違いなど、物理的・医学的に整合性が取りきれていないと指摘される部分があるが、こうした矛盾点について警察や政府が十分な再検証を行った形跡はない。
専門家の一部や政治家の中には、事件の経緯を改めて検証すべきだと訴える動きもある。自民党の高鳥修一元衆院議員は月間Hanadaの取材に答え、党内に独立した調査チームを設けて事実関係を再確認する必要性を指摘してきたと述べた。しかし元首相の暗殺であるにもかかわらず、政府や与党による再調査の具体的な動きは見られない。
裁判は法的手続きを踏んで進められているものの、公的な再検証や詳細な情報開示が不十分なまま進行することへの懸念は根強い。
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