【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

NASAの静音超音速実験機X-59 初飛行に成功

2025/10/29
更新: 2025/10/29

米国航空宇宙局(NASA)とロッキード・マーティン社が共同開発した静音超音速実験機「X-59」が、10月28日、南カリフォルニア砂漠上空で初飛行に成功した。都市部超音速運航の実現へ向けて、音爆の低減技術や新世代航空の可能性に注目している。

X-59は、超音速飛行時に発生する轟音を大幅に低減することを目的として設計された、世界でも類を見ない静音超音速機である。

機体の全長は約30メートル。現地時間の28日の朝、ロサンゼルス北方約100キロに位置するパームデール市のロッキード・マーティン社「スカンクワークス」第42工場の滑走路から離陸した。NASAの随伴機が伴走するなか、X-59は急上昇して北に針路を取り、約12マイル先のエドワーズ空軍基地へ向かった。その後、NASAアームストロング飛行研究センターに着陸した。

今回の試験飛行では、単発ジェットエンジンによる亜音速(音速未満)の飛行を実施した。ロッキード・マーティン社によれば、飛行はすべて計画通りに進み、機体の初期性能と安全性を確認したという。

スカンクワークス副社長のOJ・サンチェス氏は「X-59の初飛行を無事終えられたことは、私たちの革新力と技術力の成果であり、静音超音速技術の最前線に立てることを誇りに思う」とコメントを発表した。

X-59は、巡航速度925マイル(時速約1490キロ)=マッハ1.4、高度5万5千フィート(約1万6764メートル)での飛行が可能である。これは一般的な旅客機の2倍以上の高度であり、速度は約60%速い。

X-59の独特な細長い機体形状により、通常の超音速機で発生する爆発的な「音爆」を、車のドアを閉める程度の音にまで低減することが可能である。こうした低騒音技術の確立は、特に都市部や人口密集地域での商業超音速機運航を実現するための重要なステップとなる。

ロッキード・マーティン社は、「X-59の技術検証が進展することで、地上での超音速飛行に関する騒音許容基準を策定し、新世代超音速機の商業運航に道を拓く」との展望を示している。次世代機は、現行旅客機の2倍の速度で効率的かつ持続可能な形で乗客と貨物を運ぶ能力を備えるとされる。

NASA代理長官のショーン・ダフィー氏も「X-59はアメリカの創造力の象徴であり、さらに遠く、速く、静かに飛ぶという精神がアメリカの航空技術を牽引している」と述べた。

今後、エドワーズ基地での飛行試験フェーズが進行する予定であり、初の超音速飛行では最適な速度と高度で音爆の静音化を実現に挑む。NASAは、地域社会を対象に騒音許容性を調べる実験も計画している。

さらに、X-59は今年、カリフォルニア州の製造業技術協会の年次大会で「州内最も優れた技術製品」に選出された。

夏雨