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高市総理 令和8年度予算編成で「責任ある積極財政」を徹底 社会保障改革と17分野の戦略投資で「強い経済」構築へ

2025/12/07
更新: 2025/12/07

高市総理は令和7年12月5日、総理大臣官邸で第14回経済財政諮問会議を開催し、令和8年度予算編成の基本方針などについて議論を行った。

総理は、令和8年度予算編成は「責任ある積極財政」の考え方の下、令和7年度補正予算と一体となって編成する方針を示した。また、「強い経済」の構築に向けた重要施策に重点化しつつ、歳出・歳入両面の改革を推進し、マーケットからの信認を確保していく必要があると述べた 。特に、持続可能な社会保障制度の確立に向けた抜本的な制度改革が、喫緊の課題として浮上している 。

第14回経済財政諮問会議でまとめを行う高市首相(出典:首相官邸ウェブサイト)

 

令和8年度予算案の概要

令和8年度予算編成は、将来世代への責任を果たす「責任ある積極財政」を基本的考え方とする。これは、戦略的な財政出動により官民が協力して「危機管理投資」と「成長投資」を進め、「強い経済」を実現していくことを目指すものである。

予算は、令和7年度補正予算と一体として編成され、切れ目のない経済財政運営を行う。また、6月13日に閣議決定された「骨太方針 2025」等における重要政策課題に加え、高市内閣が掲げる「強い経済」の構築に向けた重要施策(例えば、17の戦略分野)に予算を重点化する。その際、「経済・財政新生計画」に基づき、歳出・歳入両面から改革を推進する。

政府は、経済成長を通じて税収を増やし、成長率の範囲内に債務の伸びを抑制することで、政府債務残高対GDP比を引き下げていく方針だ。これにより、財政の持続可能性を確保しつつ、「強い経済」の実現と財政健全化を両立させる。既存経費については、物価上昇に合わせた公的制度の点検も踏まえ、経済・物価動向等を適切に反映させるとしている。

社会保障改革と成長投資への重点化

令和8年度予算編成の最大の焦点は、社会保障改革の実行と「強い経済」を支える施策への大胆な重点化である。

1. 持続可能な社会保障システムの構築

社会保障分野については、物価や賃金の上昇に対応し、国民が安心して医療・介護・福祉サービスを受けられる体制の整備を図る。同時に、人口や世帯構成の変化に対応した適切な制度の効率化や資源配分の最適化を図る必要がある。最大の目標は、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことである。

具体的には、総理は関係大臣に対し、以下の課題について年末までに結論を得て、予算編成や制度改正に反映させるよう指示した。

  • 次期診療報酬改定などにおいて、保険料負担の抑制努力を継続しつつ、賃上げ、物価高を適切に反映させ、経営の改善や現場で働く幅広い方々の賃上げに確実につながる的確な対応を行う。
  • 持続可能な社会保障制度のための改革を実行し、現役世代の保険料を抑えるため、OTC類似薬を含む薬剤自己負担や金融所得の反映などの応能負担の徹底等に関する具体的な制度設計を行う 。
  • 高額療養費制度や介護の利用者負担の見直しを行う 。

また、全ての世代が納得感を得られる社会保障制度の構築に向け、給付と負担の在り方について国民的な議論を着実に進めることが求められている。

2. 「強い経済」を実現する戦略的投資

予算は、「強い経済」の構築に向けた重要施策(総合経済対策に盛り込まれた危機管理投資・成長投資に関する17の戦略分野など)に大胆に重点化される。

  • 賃上げ環境の整備: 中堅・中小企業が持続的かつ安定的に賃上げを行えるよう、適切な価格転嫁や生産性向上、事業承継・M&Aを後押しする。地方公共団体の官公需を含め、発注において労務費・物価の上昇を踏まえた価格転嫁を徹底する。
  • 危機管理投資・成長投資の推進: AI・半導体、量子、フュージョンエネルギー、バイオ、航空、宇宙等の17の戦略分野への官民連携の戦略的投資を促進し、GX・DX、経済安全保障、エネルギー・資源安全保障の強化を図る。
  • 未来に向けた投資: 科学技術・イノベーション推進、医療・介護DXを推進し、健康医療安全保障を構築する。大学振興等を通じ、イノベーション人材の育成を進める。
  • 国土強靱化と復旧・復興: 東日本大震災からの復興・創生に加えて、令和6年能登半島地震からの復旧・復興に全力で取り組む。また、令和8年度中の防災庁の設置に向けた取り組みや、「国土強靱化基本計画」に基づく取り組みを推進する。
  • 防衛力強化と外交力の強化: 「国家安全保障戦略」等に基づき、防衛力の抜本的強化や自衛隊員の処遇改善に取り組む。また、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向け、外交力の抜本的強化を推進する。

成長型経済への移行と残された構造課題

我が国経済は現在、名目GDPが600兆円を超え、賃上げ率も2年連続で5%を上回るなど、「デフレ・コストカット型経済」から新たな「成長型経済」へ移行する段階にある。財政状況もプライマリーバランスの改善傾向や政府債務残高対GDP比の低下が見られる。

しかし、潜在成長力は伸び悩んでおり、賃金の伸びが物価上昇に追いつかないため、食料品を中心とした物価上昇により個人消費は力強さを欠いている。さらに、少子化や地方の衰退といった、早急に克服すべき構造的な課題が国内に残されている。

このため、政府は、まず生活の安全保障や危機管理投資・成長投資を柱とする「強い経済」を実現する総合経済対策を策定し、令和7年度補正予算の早期成立を図ることで、切れ目のない経済財政運営を行う方針である。

今後の動き

政府は今後、「責任ある積極財政」の下、デフレに後戻りすることのない物価安定を前提とした持続的な経済成長の実現を目指す。経済成長を通じて税収を増やし、債務の伸びを抑制することで、財政健全化と「強い経済」の両立を図る方針だ。

金融政策に関しては、政府は日本銀行と緊密に連携し、日銀には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することが期待されている。

特に社会保障制度改革においては、高市総理が年末までの結論を求めた応能負担の徹底や利用者負担の見直しなどの課題が、迅速に具体化され、令和8年度予算編成や制度改正に反映される見通しである。これは、持続可能な社会保障システムを確立し、現役世代の保険料負担を抑えていくための重要な実行段階となる。

この予算編成の議論は、停滞していた船が、船体を補強(社会保障改革)しつつ、新しい高性能エンジン(成長投資)を搭載して、力強い成長という新たな航路へ進むための準備段階であると言える。

今回の予算編成の取り組みは、日本経済がデフレからの完全脱却を目指し、「成長型経済」へとギアを入れ替えるための羅針盤となることが予測される。

例えるならば、この予算編成は、病から回復期に入った経済体が、体質改善と未来への投資という二つのリハビリを同時に行うようなものだ。特に社会保障改革は、未来の健康を確保するための「体質改善」であり、成長投資は、潜在能力を引き上げるための「筋力トレーニング」に相当する。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。