米海兵隊は20日、日本の訓練場においてHIMARS(高機動ロケット砲システム)の実射訓練を富士山近傍で実施した。日本と台湾が米国の支援のもとモバイルミサイル能力の拡充を進める中での訓練となった。
米国防総省の公式軍事情報発信プラットフォームであるDVIDS(国防視覚情報配信サービス)によると、第3海兵師団第12海兵連隊第3大隊の海兵隊員らが、静岡県キャンプ富士の複合武器訓練センターでHIMARS実射訓練を行った。
DVIDSの発表によると、今回の訓練は海兵隊の即応態勢強化と、地域安全保障および日本防衛に対する海兵隊のコミットメントを示すことを目的としている。
海兵隊員らは御殿場市内のモバイル発射機から模擬ロケット12発を発射した。訓練は自衛隊と連携して実施され、安全対策として発射地点と着弾地点の間の公道は閉鎖された。
キャンプ富士における機動火力
HIМARSはロケット弾またはミサイルを発射後、即座に陣地変換できるトラック搭載型発射機である。米軍はこのシステムを「高機動・長射程の多連装ロケット砲プラットフォーム」と位置づけており、迅速な展開・射撃・離脱が可能だとしている。
DVIDSによると、東富士演習場はリアルな地形、十分な射程距離、HIМARSの運用に必要なインフラを備えている。今回の訓練はキャンプ富士での2回目のHIMARS実射訓練となった。初回の乾式(空撃ち)訓練は2025年6月11日から13日にかけて行われていた。
第3大隊第12海兵連隊長のアネス中佐は発表の中で、キャンプ富士でのHIMARS実射訓練の統合は即応態勢を高め、日本の同盟国に対する米国のコミットメントを示すものだと述べた。
「ここで長距離精密射撃能力を拡充することで、地域内のいかなる危機に対しても即座に戦力投射できることを実証している」と語った。
AP通信は今回の訓練を「シュート・アンド・スクート」演習と表現した。これは発射機が隠蔽陣地から移動し、射撃後に敵の反撃前に離脱する戦術である。ドローンにより静的陣地が攻撃に対してより脆弱になる中、この戦術の重要性は増している。
日本がスタンドオフミサイルを配備
キャンプ富士での訓練は、日本が国産スタンドオフミサイルの初配備を発表してから2か月足らずで実施された。
小泉進次郎防衛大臣は3月31日、改良型の12式地対艦誘導弾(SSM)と高速滑空弾(HVGP)の開発が完了したと発表し、それぞれ「25式SSM」「25式HVGP」に改称したと述べた。25式SSMは熊本県・健軍駐屯地に、25式HVGPは静岡県・キャンプ富士にそれぞれ配備されたとし、これが日本における国産スタンドオフミサイルの初の実戦配備となった。
防衛省はこれらの兵器を「スタンドオフ防衛能力」の一環と位置づけた。小泉大臣は、この能力により日本に侵攻しようとする敵部隊の脅威圏外から対処できると述べた。
中国はこの配備に反発した。外務省報道官の毛寧氏は4月1日、熊本・静岡への長距離ミサイル配備に「深刻な懸念」を表明し、日本が防衛の名目のもとに「攻撃的兵器」を配備していると非難した。
台湾も兵器調達予算を推進
台湾もHIMARS調達の拡充を進めている。
米国防安全保障協力局(DSCA)は2025年12月17日、国務省が台湾の駐米代表機関・台北経済文化代表処に対し総額40億5千万ドル規模の武器売却を承認したと議会に通知した。売却案には、M142 HIMARS発射機82両、M57陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)420発、M31A2 GMLRS単頭弾ポッド756基、M30A2 GMLRS代替弾頭ポッド447基が含まれている。
DSCAは、今回の売却案は台湾関係法に基づく米国の法律・政策と合致しており、台湾の軍近代化と信頼性ある防衛能力の維持を支援するものだとしている。
台湾はロッキード・マーティンから29両を購入し、2025年5月に米国供与のHIMARS初の試射を実施した。すでに11両が引き渡されている。
20日、台湾行政院は米国が承認済みの兵器取引の資金手当てとして、総額2949億9千万台湾ドル(約1兆4823億円)の特別予算を承認した。立法院は翌週に同予算を審議する予定で、パッケージにはHIMARS向けの8億台湾ドル(約40億2千万円)の頭金支払い期限が5月31日と設定されている。
地政学的背景
キャンプ富士での訓練は、米国・中共・日本・台湾政府が台湾をめぐり相次いで重要な声明を発した1週間の直後に実施された。
中共政府はかねてから米国の台湾への武器売却に反対しており、トランプ大統領の北京訪問を前に改めて台湾への武器供与中止を求めた。トランプ氏は訪中前、習近平との会談で台湾への武器売却を議題にする意向を示した。首脳会談後、トランプ氏は台湾への大規模武器パッケージを進めるかどうかはまだ決めていないと述べた。
台湾の頼清徳総統は20日、台湾が引き続き米国製兵器を購入すると表明し、これは台湾の自衛強化と台湾海峡の平和維持に不可欠だと述べた。頼総統はまた、トランプ氏と直接話せるなら台湾の立場を説明したいと語った。
トランプ氏は20日、武器売却の決断をする前に頼総統と話すと記者団に述べた。
「彼と話す。私は誰とでも話す。この状況は十分掌握している」とした上で、「台湾問題は取り組んでいく」と語った。
高市早苗首相はトランプ氏が5月15日に中国を離れたエアフォースワン内から電話があり、習近平との会談内容について説明を受けたと述べた。日本の首相官邸によると、両首脳は日米同盟の重要性を改めて確認した。
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