世界の政治リスクや軍事紛争について分析を提供するシンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」の最新の報告によると、周辺地域の安全保障環境が悪化する中、日本は抑止力を強化するため、より遠方から敵部隊を攻撃できる長射程のスタンドオフ兵器の配備を進めている。これにより、日本は新たな打撃能力と情報収集能力に支えられた「反撃能力」の運用態勢へと実質的な方針転換(舵切り)を行っている。2026年は、国内開発された超高速や低視認性(ステルス性)を持つミサイルの初期配備が始まる年となる可能性がある。
日本の反撃能力構築の中核を担うのは、以下のような多角的なミサイルシステムの整備である。
第一に、三菱重工業製の「島嶼防衛用高速滑空弾(HVGP)」が挙げられる。これは弾道ミサイルと極超音速滑空兵器を組み合わせたもので、離島防衛を目的とした対地攻撃任務を担う。初期射程は公表されていないが500kmと報じられており、さらに長射程の改良型の配備も控えている。
第二に、米国レイセオン社製の巡航ミサイル「トマホーク」の導入である。射程1600kmを誇るこのミサイルにより、海上自衛隊に深部への精密打撃能力がもたらされる。2026年3月末までに日本への引き渡しが開始され、同年9月にはイージス護衛艦「ちょうかい」の改修と米国での関連訓練が完了する予定である。
第三に、対艦ミサイルの強化として「12式地対艦誘導弾能力向上型」の配備が進められている。低視認性設計を採用し、少なくとも900kmの射程を持つとされ、陸海空の多様なプラットフォームからの発射が想定されている。さらに、川崎重工業が開発中の「新地対艦誘導弾(新SSM)」は、ターミナル段階(終末誘導段階)で敵の防衛網を突破するためのバレルロールなどの機動が可能であり、12式能力向上型を超える射程を持つとされる。防衛装備庁は他にも、極超音速ミサイルのスクラムジェットエンジンなどの試作を開始している。
これらの長射程打撃能力を実戦で有効に機能させるためには、宇宙ベースの情報収集・警戒監視・偵察(ISR)などの支援機能が不可欠である。現在稼働中のISR衛星は9基にとどまり能力が限定的であるため、日本はIHIやフィンランドのICEYEと連携し、全天候型の目標探知・追跡能力を持つ合成開口レーダー(SAR)搭載の衛星コンステレーションの構築に乗り出している。2026年4月から段階的なデータ提供が始まり、2029年度までに完全なシステムとなる予定である。
しかし、日本独自の能力が向上しても、特に移動目標の特定や追跡においては、引き続き米国からの情報共有への依存が必要となる見込みである。日米両国は「反撃能力において協力する」と明言しており、オーストラリアを含めた3カ国間でも「トマホーク」の実弾訓練などの協力を推進している。
総じて、これら一連の開発と配備の動きは、悪化する安全保障環境に対する日本の防衛態勢の大規模な再構築(リキャリブレーション)を明確に示すものである。
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