中国の「歴史ナラティブ戦と認知戦」の脅威 日本の対抗戦略は?

2026/06/16
更新: 2026/06/16

情報が国際社会のパワーバランスを左右する現代、目に見えない新たな戦場として「歴史ナラティブ戦」や「認知戦」が猛威を振るっている。16日の参議院外交防衛委員会において、参政党の松田学議員と茂木外務大臣の間で交わされた質疑は、まさにこの脅威から日本の主権と安全保障をいかに守るかという、国家の根幹に関わる重要なテーマであった。中国による歴史認識の歪曲や、沖縄を巡る不穏な情報工作に対し、日本政府はどのような戦略で立ち向かうのか。激動の安全保障環境下における日本の外交姿勢と、喫緊の課題である「政府一体となった認知戦対策」の最前線が議論された。

中国の「抗日戦争勝利80周年」ナラティブへの対応

質疑の冒頭、松田議員は2025年に行われた中国の「抗日戦争勝利80周年記念軍事パレード」において、「中国共産党がファシズムの日本と戦って勝利した」という事実と異なるナラティブが誇示されたことを問題視し、歴史ナラティブ戦が日本の安全保障や主権に関わる重大な問題であると懸念を示した。

2026年6月16日、参議院外交防衛委員会で質疑を行う松田学議員(参政党)(出典:参議院インターネット審議中継)

これに対し茂木外務大臣は、事態をエスカレートさせるのではなく、事実に基づいて冷静に対応することが国際社会からの信頼につながるとの考えを示し、「相手の土俵で論戦をすることは必ずしも正しい舞台設定ではない」と述べた。また、日本が戦後80年にわたり戦争を行わず、自由と民主主義を守る平和国家として歩んできたことは誰から見ても事実であり、世界各国にも十分理解されていると強調した。

ミュンヘン安全保障会議における中国の主張と日本の防衛力強化

続いて松田議員は、2026年2月のミュンヘン安全保障会議における中国外交部長の「日本は反省せず軍を復活させている」という発言を取り上げ、日本の平和国家としての歩みや防衛力強化の正当性が国際社会にどの程度浸透しているのかを質した。

茂木外務大臣は、安全保障環境が一段と厳しさを増す中で防衛力の抜本的強化を進めることは国の当然の責務であると説明した。同時に、戦後一貫した平和国家としての歩みを堅持する日本への期待は高まっているとし、引き続き国際社会への適切な発信に努めると答弁した。

沖縄「先住民」発言と非自治地域化への懸念

議論は沖縄問題へと移る。松田議員は、2025年10月の国連総会第3委員会で中国が「沖縄の人々に対する偏見や差別を止めるよう日本政府に促す」と発言したことを挙げ、沖縄を国連の非自治地域に組み入れようとする動きへの警戒感を示した。

茂木外務大臣は、日本政府として沖縄県出身者を先住民とする認識は全くなく、海外のカウンターパートからそのような話が出たこともないと明確に否定した。国連における中国の発言に対しても適切に反論を行っており、非自治地域に組み入れようとする動きは承知していないと明言した。一方で、このような議論を国会で殊更に取り上げることがどういう影響を持つか、よく考えながら進めるべきだと苦言を呈した。

沖縄「地位未定論」への対応と議論のあり方

さらに松田議員は、中国メディアなどがサンフランシスコ平和条約を認めず、沖縄の「地位未定論」を主張していることを挙げ、これを放置すれば領土主権に関わる重大問題になりかねないと指摘した。

茂木外務大臣は、事実に関する主張がなされた場合には適切に反論・発信をしてきていると述べた。しかし先ほどの答弁を繰り返し、他国から全く出ていない話を国会でことさら取り上げることへの懸念を重ねて示した。

認知戦としてのプロパガンダと「刺さる反論」の戦略

松田議員は、中国がこうしたプロパガンダを発する目的と、それが国際社会に広がった際のリスクについて政府の認識と戦略を問いただした。

ここで茂木外務大臣は、認知戦を新たな戦略の一つとして認識していると明言し、「一方的に言われ続けて、あたかも事実のようになってしまうことはあってはならない」と強い危機感を示した。その上で、単なる定型的な反論にとどまらず、国際会議の場や二国間会談など状況に応じて、「どういう発言が相手に一番刺さるかという観点から議論を行っている」と述べ、日本政府が情報戦に対処している実態を明らかにした。

政府一体となった情報戦対処体制の構築

最後に松田議員は、歴史ナラティブ戦や認知戦は国内外に働きかける「世論戦」であり、日本政府内に司令塔を定めて本格的に対処すべきではないかと体制強化の必要性を訴えた。

茂木外務大臣は、情報操作の余地を狭めていくことが重要であると応じ、政府一体となって情報収集・分析の充実や、正確な情報発信の強化に努めていくと締めくくった。

▶大紀元EPOCH TIMES JAPAN編集長 ▶「日本の思想リーダーズ」番組ナビゲーター 、「大紀元ライブ」番組ホスト。