中共封じ込めと反制へ 米軍「タイフォン」が日本に展開

2026/06/30
更新: 2026/06/30

日米共同演習「ヴァリアント・シールド2026」が6月22日に開始された。日本メディアが事前に報じたところによると、米軍はこの演習に向けて中距離ミサイル発射システム「タイフォン」を日本最南端に展開した。専門家は、この展開が第一列島線の抑止力を強化し、米日同盟の実戦能力を高めるとともに、中共に対する包囲・反制の態勢を形成するものだと分析している。

多機能中距離ミサイル発射システム「タイフォン」

「ヴァリアント・シールド2026」演習は6月22日に始まり、7月1日まで続く見通しだ。今次演習の注目点の一つは、米軍が高い能力を持つ中距離ミサイル発射システム「タイフォン」を、九州最南端の鹿屋市にある海上自衛隊航空基地に展開したことだ。

台湾国防安全研究院の助理研究員・鐘志東氏は大紀元に対し、タイフォンは「陸上ベースのミサイルシステム」であり、主に遠距離打撃・対艦・防空の三つの機能を持つと語った。

同氏はさらに「射程1600〜2500キロの『トマホーク』巡航ミサイルを発射でき、対艦・防空の射程は500キロ以上で、改良型パトリオットミサイルも搭載できる」と説明した。

「最も重要なのは陸上ベースであることで、機動性も非常に高い。ミサイル搭載車両であるため移動が可能で、機動性が高く、搭載するミサイルシステムによって多機能にも対応できる。要するに、対海・対陸・対空の攻撃が可能な中距離ミサイルシステムだ」と同氏は述べた。

鐘志東氏はまた、タイフォンのもう一つの大きな利点としてコストの低さを挙げ「海上の空母打撃群と比べて運用コストが相対的に低く、生存性も非常に高い」と指摘した。

「空母打撃群の能力を陸上に移したようなものだが、コストは相対的に低く、多数を展開でき、一度に破壊されにくい」と述べた。

完全なタイフォンシステム一式は、ミサイル発射車両4両、指揮統制車1両、および関連支援車両等で構成される(米陸軍提供)

タイフォンの射程は中国本土に到達 中共への抑止力形成

日経アジア(Nikkei Asia)の報道によると、タイフォンは9月に予定される米日年次共同演習「オリエント・シールド(Orient Shield)」にも再び参加する見通しだ。その後、10月中旬ごろに演習が終了した時点で、タイフォンは在日米軍基地内に移転される予定だという。

日本政府当局者は、タイフォンを日本国内に留置することは「必要な際に展開可能であることを示すものであり、中国(中共)への抑止に活用できる」と述べた。

日経の報道によると、鹿屋基地は第一列島線の要衝に位置し重要な戦略的価値を有しており、同基地へのタイフォン展開は「東シナ海および台湾海峡に対して直接的な戦略的圧力をかける」ことができ「日本本土が初めて米軍の中距離打撃網の一部となる」ことを意味するという。

鐘志東氏は大紀元に対し、日本南端に展開されたタイフォンシステムは中国沿岸省を攻撃可能であり、特に中国北部の都市も射程に入ると述べ「これは、米国が信頼に足る実力を通じて抑止を強調しようとしているものであり、中国(中共)を抑止するための計画だ」と語った。

さらに鐘志東氏は、この抑止には陸上ベースのタイフォンシステムと米軍の海上空母打撃力が共同で構築する「二重打撃力」も含まれると指摘した。

地政学者で台湾・開南大学副学長の陳文甲氏は大紀元に対し、今回の米国によるタイフォンシステムの日本展開について「核心的な目的は第一列島線の抑止能力を強化することだ。これまで軍備管理条約の制約により、米軍はインド太平洋に陸上ベースの中距離打撃力を欠いていた。今回その欠落が補われ、応答速度と打撃範囲が大幅に向上する」と述べた。

米国は2019年に中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱後、2025年9月に日本との二国間年次演習「レゾリュート・ドラゴン(Resolute Dragon)」の期間中、初めて日本でタイフォンを公開したが、演習終了後に日本を離れていた。

鐘志東氏は、今年タイフォンを在日米軍基地に入れる計画は、在日米軍基地の安全保障を向上させ、在日米軍戦力の運用強化にもつながると述べた。

陳文甲氏は、日本が中国東部沿岸と西太平洋の間に位置する米国の「天然の戦略的前線」であるとした上で、「これは日本防衛にとどまらず、在日(米軍)基地を攻守両面に活用できる前方展開拠点へと転換させるものであり、同時に日米同盟をより高い実戦能力を持つものにする」と述べた。

フィリピンのタイフォンシステムと合わせ、中共包囲・反制の態勢形成

第一列島線へのタイフォンシステム初展開は2024年4月で、米比共同演習「サラクニブ(Salaknib)」後にシステム一式がフィリピン・ルソン島北部に留置された。このタイフォンは中国南部の軍事基地を「トマホーク」ミサイルの射程内に収めている。

2024年4月7日、米陸軍の中距離打撃能力(MRC)発射機(タイフォン兵器システムとも呼ばれる)がフィリピン・ルソン島北部の戦域に到着した。同能力が第一列島線に初めて展開されたもの(米太平洋陸軍司令部提供)

鐘志東氏は、米国の国防戦略・国家安全保障戦略報告書が「列島線戦略」の重要性を繰り返し強調していると指摘した。

「列島線戦略」は主に、中共が「地域の現状変更、第一列島線突破、台湾併合、南シナ海での既成事実化」を図ることへの対抗戦略であると説明した。

同氏は、米国がタイフォンを第一列島線の南北、すなわちフィリピンと日本に展開したことは、「中国の玄関口への配備」に等しく、第一列島線における「地理的なホームアドバンテージ」を確保し「全体として中国(中共)に対する全面的な包囲網を形成する」とし、中共が「島鏈突破・現状変更」を図ることへの反制態勢を構築するものだと述べた。

鐘志東氏は、中共軍は「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略、すなわち米軍の台湾海峡および東アジア全域への介入、特に米海軍空母打撃群を阻む戦略を有していると述べた。しかしタイフォンが日本および第一列島線に展開されたことで、「相当程度、中国の『接近阻止・領域拒否』能力を削ぐことができる」とともに、「解放軍の海空軍が第一列島線を通過する能力を圧縮できる」と指摘した。

その結果として鐘志東氏は、これが米軍の「拒否反制・抑止能力」を強化することになり、台湾有事を念頭に置いた配備であるとした上で、「もし実際に台湾有事が起きた場合、中国(中共)が台湾を武力攻撃・封鎖するコストを高めることにもつながる」と述べた。

中国沿岸の重要軍事施設がタイフォンの射程に入ることで、陳文甲氏は中共軍に「実質的な軍事的圧力と戦略的警告」を与えるものだと指摘し、防空・ミサイル迎撃システムの強化、軍事配備の分散化による一斉無力化リスクの低減、自国のミサイルおよび長距離打撃力の開発加速という三つの対応調整を中共に迫る可能性があるとだと述べた。

タイフォンの展開により中共軍は受け身の立場に置かれるとし、陳文甲氏は「米国は前方展開を通じて、台湾海峡や東シナ海の突発事態に即時対応できる軍事ネットワークを構築し、中共の軍事行動を直接牽制しようとしている」と語った。

タイフォン展開が示す台湾海峡の平和の日本にとっての重要性

日本の高市早苗首相はすでに公式に言及しており、中共が台湾に武力行使した場合、日本の「存立危機事態」に該当し得るとの見解を示している。

陳文甲氏は「日本はすでに台湾海峡情勢を安全保障戦略に組み込んでおり、近年は琉球諸島、与那国島を含む諸島でミサイル配備を強化してきた。これは台湾に向けた防衛線の構築だ。これらの島々は台湾に非常に近く、台湾有事が起きれば日本は局外に置かれることはできない」と述べた。

「今回の(タイフォン)中距離ミサイル展開は、日本の安全保障政策の一段の格上げを意味し、これまでの純粋な本土防衛から、より高い地域抑止・反撃能力へと転換したものだ」と同氏は語った。

鐘志東氏はさらに、5月28日の日比首脳会談共同声明、および6月8日の日米比「三者海洋対話」において「いずれも『台湾海峡の平和』が特に強調された」と指摘し「これは第一に、台湾海峡の平和が日本の国家安全保障にとっていかに重要かを浮き彫りにするものだ」と述べた。

「第二に、私が重要だと思うのは日中の地政学的競争に関してだ」と鐘志東氏は説明し、日本がすでに中共を「日本にとって最大の戦略的脅威」と位置付けており、中共の対外的な拡張主義を抑制するため「日本は中国(中共)による東アジア支配・独占を受け入れられず、共産独裁を受け入れることもできない」と述べた。

鐘志東氏は、今回のタイフォン展開は日本が日米安全保障条約の要請に応じ、第一列島線において「米国と協力して地域安全保障ネットワークを構築するものでもあり、日中地政学的競争および台湾の日本にとっての重要性という国家安全保障上の考慮とも合致している」とし「これはすべて中共を標的とし、中共を反制するためのものだ」と述べた。

陳文甲氏もこう強調した。

「日本はすでに台湾海峡で起こり得る衝突に備えており、防守のみならず米軍と一体となった共同作戦体制を形成している。これは、台湾有事が日本の安全保障に影響を及ぼすという認識が概念から具体的な軍事的布陣へと変化したことを示している」

易如
程雯