専門家は、トランプ氏の演説が北京との戦略的競争への注力の再強化を反映しており、習近平の国内における立場にも影響を及ぼし得ると指摘する。
ドナルド・トランプ米大統領は16日、ゴールデンタイムの国民向け演説で、中国共産党(中共)が米国の選挙に介入してきたと述べ、北京が数億人分の米国有権者記録を入手し、自身の再選を阻止するために国内外のネットワークを利用したと明らかにした。
トランプ氏は、中共が2020年の選挙期間中に約2億2千万人の米国有権者の個人情報を入手したとし、このデータが有権者登録に関連する活動やその他の違法な目的に使用された可能性があると示唆した。
トランプ氏はまた、北京が2018年以降、自身の政権を標的とした影響工作を行ってきたと述べた。これには、自身の選挙支持基盤を弱体化させる工作、辞任を迫る圧力、再選阻止の試みなどがある。
トランプ氏は、米情報機関が中国による選挙介入に関する情報を隠蔽してきたと述べた。中央情報局(CIA)と国家安全保障局(NSA)による北京の活動に関する数十件の報告書が、大統領に提供される日次情報ブリーフィングに含まれていなかったという。
トランプ氏は国家情報長官室と司法省に対し、この問題の調査を指示した。関連情報を隠蔽したことが判明した当局者は解任され、刑事訴追の対象となり得ると述べた。
これらの暴露は、米国の選挙介入をめぐるトランプ氏の北京に対する最も直接的な非難の一つであり、米中関係の長期的な方向性をめぐる議論がワシントンで再燃するなかで行われた。
中国の著名な反体制派学者である袁紅氷氏を含む複数の専門家は、トランプ氏の発言がワシントンの対北京アプローチのより強硬な段階への移行を示す可能性があると同時に、習近平がトランプ氏との関係を中国の政権内部における政治資本として活用しようとする試みを困難にし得ると指摘した。

戦略的競争
オーストラリア在住の中国反体制派で元北京大学法学教授の袁紅氷氏は、大紀元に対し、トランプ氏の発言は米国の対北京政策の大きな変遷のなかで捉えるべきだと語った。
袁氏によれば、トランプ氏は第1期政権中に、数十年にわたる米国の対中「関与政策」の終結に寄与した。当時、政策立案者らは中共を米国の主要な長期的戦略的挑戦と見なすようになっていた。
袁氏は、トランプ氏の再任後、習近平に対する公の場での姿勢がより融和的になったのは、政権が当初、ウクライナ戦争や中東の不安定化を含む幅広い地政学的問題への対処で北京の協力を期待していたためだと述べた。
しかし袁氏は、中国がロシア、イラン、北朝鮮などの米国の敵対勢力との関係強化を続けたため、こうした期待は概ね実現しなかったと指摘した。
袁氏は「米国を再び偉大にするというトランプ氏の構想は、中共の世界的拡張の野心と根本的に相容れない。トランプ氏はこうした文脈においてこの演説を行っている」と述べた。
米中競争の局面転換
台湾・開南大学副学長で国際ビジネス学の陳文甲教授は、大紀元に対し、トランプ氏の発言は問題を選挙の公正性から国家安全保障のレベルに引き上げたと語った。
「これは単なるトランプ氏の批判ではない。政策の布石である」と陳氏は述べた。「核心的なメッセージは、米中競争が米国の国内政治と選挙の中心に直接据えられ、民主主義対権威主義の闘いとして位置づけられたことである」

袁氏も同様の見方を示し、この演説は、協力の経路維持の努力にもかかわらず、中共との戦略的競争が米外交政策の中心であり続けるというトランプ政権内の認識の高まりを反映していると述べた。
陳氏は、演説には少なくとも三つのメッセージが込められていると指摘した。
第一に、トランプ氏は自身を取り巻く政治的圧力を外国の介入問題へと転換し、支持基盤の結束を強化している。
第二に、トランプ氏は中共を単なる経済的競争相手ではなく体制上のライバルと見なしており、より対決的な政策への正当性を高めている。
第三に、この発言は習近平に対し、トランプ氏の対北京アプローチが一層強硬になる可能性が高いというシグナルを送っている。
は、選挙介入の指摘は国家主権に関わる問題であるため、ワシントンと北京の間の信頼をさらに低下させ得ると述べた。
「選挙への介入が確認されれば、双方の相互信頼の基盤は深刻に損なわれるだろう」と陳氏は述べた。
陳氏は、選挙介入の指摘は国家主権に関わる問題であるため、ワシントンと北京の間の信頼をさらに低下させかねないとの見方を示している。
「選挙への介入が確認されれば、双方の相互信頼の基盤は深刻に損なわれるだろう」
この問題はワシントンで超党派の幅広い圧力を生み、将来の政権による対中政策の大幅な転換を一層困難にする可能性もあるという。
「両国間の競争はより制度化され、長期化する可能性がある」
陳氏の見立てでは、北京は今後、米国の技術規制の拡大や米同盟国間の連携強化など、圧力の増大に直面しかねない。世界各地の民主的選挙への介入と結びつけられれば、中国の国際的イメージにも影響が及ぶ。一方で北京側は、超国家主義的な宣伝を推進し、米国の行動を中国封じ込めの試みとして描くことで対応する可能性もある。
その上で陳氏は、トランプ氏の演説は政治的レトリックにとどまらず、世界二大経済大国間のより持続的かつ構造的な対立に向けた新たな一歩だと総括した。

トランプ氏の戦略変更の可能性
台湾の国防安全研究院の蘇紫雲研究員は、大紀元に対し、トランプ氏と習近平の間で最近関与の兆候が見られたことを踏まえると、トランプ氏の発言は予想外だったと語った。
両首脳はこれまで互いの関係を肯定的に表現しており、習近平は9月に訪米する予定だった。
蘇氏は、トランプ氏の今回の発言がトランプ政権の対北京政策の転換を示す可能性があると述べた。
ただし、政権が協力と対決の二本立ての戦略を継続するかどうかは依然として不明だと述べた。
トランプ氏は繰り返し習近平を友人と表現し、習近平との個人的関係を強調してきた。蘇氏は、トランプ氏のアプローチが、穏やかに語りつつ軍事力を維持する政策で知られたセオドア・ルーズベルト元大統領のそれに似ていると指摘した。
「(トランプ氏の)友好的な口調は、単なる戦術的アプローチかもしれない」と蘇氏は述べた。
蘇氏は、第一列島線における集団防衛体制の強化と、台湾の武力による奪取の阻止を強調する米国の国家安全保障戦略文書を挙げた。
北京の対応について蘇氏は、中共は9月に想定される米中首脳会談を予定通り進めるかどうかを決定する前に、依然として状況を見極めている可能性が高いと述べた。
袁氏は、この演説が習近平の国内政治にも影響を及ぼし得ると述べた。
袁氏によれば、習近平はトランプ氏との関係を自身の外交的地位と影響力の証としてたびたび誇示してきた。
しかし、トランプ氏が中共を直接非難したことで、習近平がその関係を党内における政治的資産として描くことはより困難になり得るという。
袁氏は、軍と党の高官をめぐる最近の人事異動や調査を挙げ、習近平がすでに政治的圧力に直面していると指摘した。
「トランプ氏が中共による重大な選挙介入を公に非難する決断を下したことは、習近平がトランプ氏との関係を中国国内における政治的強みとして描こうとする努力を弱め得る」

北京への長期的な注力
台湾の国防安全研究院の沈明室研究員は、大紀元に対し、トランプ氏の演説は、中共を米国の主要な長期的競争相手とする米国のより大きな戦略的注力を反映していると語った。
沈氏は、トランプ氏が米国独立250周年の記念行事でも共産主義を糾弾したことに触れ、共産主義政権との対決がトランプ氏のより広範な政治課題の一部であり続けているとみている。
「キューバであれ中共であれ、これらはトランプ氏が偉大な大統領となり米国を再び偉大にするという目標の一環として捉える主要な(敵対的)標的に含まれる可能性が高い」
トランプ氏の発言は必ずしも米中関係の完全な決裂を意味するのではなく、競争と選択的協力を組み合わせた戦略の継続を示すものだという。
「トランプ氏は自らの戦略的意図を明確に示した。協力が一切なくなるという意味ではないが、中共がトランプ氏の見るところ自身を弱体化させる試みを続けるなら、米国は断固として対応するだろう」
沈氏によれば、トランプ氏はこれまで北京に対する公の発言では比較的抑制的だった。しかし、習近平の対米姿勢や台湾などの問題への対応を見極めた結果、トランプ氏と閣僚の間でより強い共通認識が形成されたようだ。
しかし、習近平氏の対米姿勢や台湾などの問題への対応を見極めた結果、トランプ氏と閣僚の間でより強い共通認識が形成されたようだ。その理由について沈氏はこう説明している。
「中東であれ西太平洋であれ、多くの主要な問題が中国とつながっていることを米国は理解しているからだ」
(唐氷、易如、駱亜が取材に協力した)
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