近年、中国の一部SNSやセルフメディアのアカウントが、官僚の経歴を投稿するなどして、当局の発表前に幹部の失脚を「予告」している。中国共産党(中共)の官製メディアは近日、一部の公職者が「内通者」となり、中共の汚職摘発情報に便乗した地下ビジネスが形成されていると異例の指摘を行った。学者は、こうした情報漏えいは金銭目的だけでなく、権力闘争にも関わっていると指摘する。官製メディアの今回の記事は、中共第21回党大会を前に、当局が各派閥による情報流出を封じ込めようとしていることと関係している可能性がある。
官製メディア、失脚情報が有料グループで拡散と報道
中共官製メディア新華社傘下の「半月談」は最近、調査記事を発表し、一部のSNSやセルフメディアのアカウントが、幹部の失脚前にその詳しい経歴を掲載したり、同音語や別称、失脚をほのめかす表現を使ったりしていると報じた。例えば、2025年7月6日、あるWeChat公式アカウントは、湖北省政協の元党委員会メンバーで副主席だった周先旺の詳しい経歴を掲載した。その2日後、中共中央規律検査委員会のウェブサイトは、周が審査・調査を受けていると発表した。
記事によると、幹部の失脚や人事異動に関する情報が流出すると、まず一部のチャットアプリのグループ内で拡散される。新規メンバーがグループに入るには料金を支払う必要がある。一部の公式アカウント運営者は情報を入手した後、公開アカウント上で示唆的な内容を発信し、読者を新たな有料グループへ誘導する。各公式アカウントの背後には3〜4つのグループがあり、初級グループの料金は数十元程度と比較的安いが、新しいグループの入会費は高く、中には399元を求めるものもあるという。
記事は、一人の捜査関係者の分析として、閲覧数に応じた収益を得るため、一部の体制内関係者が「内通者」となって関連情報を漏らしていると伝えた。
シドニー工科大学の馮崇義准教授は大紀元に対し、習近平が政権に就いて以降、いわゆる「全体的国家安全保障体制」の構築を進め、インターネット管理を極めて重視してきたと述べた。当局は膨大な人員と資金を投じ、自らに不利な情報を封じ込める一方、自らに有利な情報を流している。これも中共の情報戦の一部だという。
馮氏はさらに、近年、中共による国内弾圧が強まる中、体制内部で働く人々の中には、被害を受けて現状に不満を抱く者もいると指摘する。また、ひそかに反中共の立場を持つ人もいる可能性があり、彼らはさまざまな方法で自分たちが発信したい情報を出したり、拡散したい情報を転送したりしているという。もちろん、それとは別に、この種の情報を発信する多くの人々は金銭目的だとも述べた。
馮氏は、中共支配下の政権は一見すると隙なく統制されているように見えるが、内部の不満などがあるため、多くの抜け穴が生じると見ている。
「金銭目的だけではない」 学者が指摘する権力闘争の陰
中共官製メディアが指摘した問題について、台湾の政治学者、孫国祥氏は大紀元に対し、これはいわゆる新型の情報漏えいであり、中共の汚職摘発制度と人事制度が極めて不透明であることに起因していると述べた。汚職事件は、党の規律検査機関、組織部門、公安、地方の党・政府機関など複数の段階を経るため、事情を知る者が多い。一方で、社会には公開された検証ルートがないため、内部情報には高い希少性と商業価値が生まれる。SNSやセルフメディアによる収益化、有料グループ、さらに情報の転売を通じて、政治機密は取引可能な情報商品へと変わるという。
孫氏は、今回、官製メディアが情報源に体制内関係者が関わっていると認めたことは、問題が単なるネット上のうわさではなく、権力体系内部の守秘と規律が機能していないことを示していると指摘した。
官製メディアは、こうした問題を利益目的のチェーンとして強調している。しかし孫氏は、金銭目的のほかにも、一部の情報漏えいには政治的操作の目的がある可能性があると見る。具体的には、世論や党内の反応を探ること、政敵とその関係ネットワークを攻撃すること、関係する幹部や実業家に対して距離を置いて自衛するよう警告すること、あるいは特定人物がまもなく失脚するという既成事実を先に作り出し、上層部に処分を加速させることなどが含まれる。
孫氏は「案件が完全に確定する前に、異なる部門や派閥が、議題を主導する権限や案件をどう説明するかをめぐる主導権を争っている可能性もある」と述べた。
官製メディア 第21回党大会前の派閥による情報流出封じか
「半月談」の記事は、汚職摘発情報の漏えいが地下ビジネス化している問題について、取材を受けた専門家や末端幹部が複数の対策を提案したとも報じた。貴州省などではすでに、規律検査監察機関と公安部門の間で情報共有と連携対応の仕組みが作られているという。規律検査監察機関が情報の真偽を迅速に判断して公に否定し、公安部門が発信源の追跡と摘発を進める仕組みだ。
孫氏は、官製メディアが今回の記事を出したことは、「内通者」の摘発、SNSやセルフメディアの整理、政治情報の発表権と説明の主導権の奪回に向けた動きである可能性があると指摘する。これは中共第21回党大会に向けた高層人事と深く関係しているとみている。
中共第21回党大会は慣例上、2027年秋に開かれる見通しだ。香港紙「明報」は以前、中共上層部の人事考察がすでに始まっており、第21回党大会に向けた政治日程が本格化したことを示していると報じた。
孫氏は、中共第21回党大会を前に、各派閥や利益ネットワークの間では人事情報への需要が特に高まっていると分析する。当局がこの時期に「失脚予告」の取り締まりに乗り出したのは、「内通者」を洗い出すと同時に、派閥による情報流出を封じ、非公式な政治情報の流通空間をさらに狭める狙いがある可能性が高いという。
ただ孫氏は、中共が強権的で不透明な統治をさらに強めれば、社会が目にできる政治情報はますます少なくなるものの、情報漏えいの問題を根絶することはできないとみている。むしろ内部情報が手に入りにくくなることで、その市場価値はさらに高まるという。
馮氏は、中共の高層人事が交代するたびに、昇進する者がいれば失脚する者もおり、意図的に情報を流して内部駆け引きを行う者が出てくると述べた。中共政権には共通の信念や理念による支えがないため、高度な皮肉や当てこすり、さまざまな陰謀論が必ず現れるという。
注目されるのは、これまで表に出ることの少なかった中共国家安全部と国家秘密保護局が、近年は機密漏えいやスパイ事件をめぐって競うように文章を発表し、「スパイ」事例を打ち出していることだ。しかし今回、官製メディアが注目した「内通者」の問題について、この2部門はまだ見解を示していない。
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