自民党政務調査会のインテリジェンス戦略本部は28日、政府の情報活動強化に関する提言をまとめた。安全保障を目的に行政機関がメールや電話などの通信情報を収集する、いわゆる「行政傍受」の導入検討が柱の一つとなっている。複数のメディアが報じた。
提言は、安全保障上の理由に限って政府が通信を傍受できる制度のほか、外国勢力の代理人に登録を義務づける仕組みや、不正な干渉に刑事罰を科す「外国干渉防止法」の検討を求めた。小林鷹之政務調査会長は「公正な民主主義を守っていく、そのための情報防衛力の強化は待ったなしの国家的な課題だ」と述べた。
時事通信などの報道によると、提言は裁判官の令状を必要としない行政傍受を想定する一方、実施には厳格な承認要件を設け、独立機関が事後審査する仕組みを併せて求めている。
自民党本部が3月に政府へ提出した第1次提言では、通信や電波、電子信号を収集・分析するシギント能力が対外情報収集で「圧倒的な重要性を占める」と指摘した。人権保護に配慮しながら、必要な法制度と実施体制の整理を急ぐよう要請している。
また情報活動の拡大に伴う民主的な監視の強化も課題に挙げた。英国では超党派の議員による委員会が情報機関を監査し、豪州では独立した監察官が監督権限を持つとして、日本でもガバナンスの具体化が必要だとした。
政府は情報機関の体制整備を先行させている。国家情報会議設置法が5月27日に成立し、内閣情報調査室を改組した国家情報局が7月31日に発足する。高市早苗首相は、同法について行政機関相互の関係を定めるもので、プライバシー侵害の危険を高めるものではないと説明し、衆参両院の附帯決議を踏まえて運用する考えを示した。
ただ、日本の現行制度では、通信傍受は犯罪捜査に限られている。憲法21条2項は通信の秘密の不可侵を定め、通信傍受法は裁判官が発付する傍受令状を必要としている。
警察庁の「通信傍受法に基づく国会報告」によると、令和7年には15事件で傍受令状が請求、発付され、対象はいずれも携帯電話で、薬物事件が大半を占め、その他、銃器事件や組織的な殺人、詐欺もあった。同法は、実施状況を国会に報告し、公表することも政府に義務づけている。
安全保障目的の通信情報収集については、こうした法的枠組みが現在の日本にはない。行政傍受を導入する場合、通信の秘密との関係に加え、対象とする人物や通信の範囲、傍受を認める要件、収集情報の保存期間や利用目的を明確にする必要がある。
海外では、米国が法律に基づき外国情報の収集を認め、裁判所が収集の枠組みを審査している。英国は閣僚の決定に司法当局者の承認を加える「二重の鍵」を採用し、ドイツも独立監督機関による事前・事後の審査を設けている。
自民党の提言は行政傍受の導入方針を示した段階であり、承認を政府内で完結させるのか、司法機関を関与させるのか、独立監督機関にどのような権限を与えるのかは定まっていない。政府は今夏に情報活動改革に関する有識者会議を設置し、来年の通常国会への関連法案提出を視野に制度設計を進める方針だ。
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