台湾の司会者 中国での広告や番組が相次ぎ削除された 民進党候補の選挙集会出席が波紋

2026/10/06
更新: 2026/10/06

台湾の著名司会者、蔡康永氏が、民進党の台北市長選候補、沈伯洋氏の選挙本部発足大会に姿を見せたことを受け、中国のネット上で批判が相次いでいる。一部の広告が取り下げられ、ファッション誌のインタビュー記事も削除された。さらに、蔡氏が司会を務めるポッドキャスト番組も配信停止となった。

産経新聞の元記者で、インド太平洋戦略シンクタンクCEOの矢板明夫氏は、この出来事について、中共と関わる台湾人にとって「重要な教訓だ」と指摘した。

10月4日、沈伯洋氏は選挙本部の発足大会を開いた。蔡氏は帽子とマスクを着用し、会場のVIP席に静かに座り、旗や応援グッズを手にする姿が撮影された。

蔡氏のマネージャーは、当日は選挙活動の様子を見るために訪れたと説明し、今後、台北市長選の候補者を取材する可能性があるとした。蔡氏本人も「見学に来ただけだ」とし、各方面の意見を聞きたいと語った。

沈氏は以前、中国共産党(中共)国務院台湾事務弁公室から、「台湾独立頑固分子」のリストに指定されている。このため、蔡氏が沈氏の選挙集会に姿を見せたことが中国のネット上で急速に拡散し、強い批判を浴びた。同時に、蔡氏と関係のある中国企業にも相次いで距離を置く動きが出た。

前月に蔡氏を起用したばかりの中国の電気自動車メーカー零跑汽車(Leapmotor)は4日夜、声明を発表した。蔡氏について、過去のコンテンツに参加した芸能人であり、正式な広告塔ではないと説明したうえで、関連コンテンツをすべて削除し、法的措置を取る権利を留保するとした。

また、中国版「ハーパーズ バザー」も、9月号で掲載した蔡氏の表紙に関する宣伝物を削除した。

騒動が広がる中、約3600万人のフォロワーを持つ蔡氏のウェイボーアカウントでも、公開投稿が見られなくなり、フォロー一覧も空になっていることが確認された。今回の騒動との関連は明らかになっていないが、関心を集めている。

10月5日には、「蔡康永が台湾独立派の選挙会場に登場」「蔡康永のアカウントが空になりフォローも解除」といった複数の関連ワードが微博のトレンド入りした。

同日、矢板氏はXへの投稿で、蔡氏は会場で静かに座っていただけで、壇上で応援演説をしたわけでも、支持を公言したわけでもないにもかかわらず、中国のネット上で直ちに批判が殺到し、提携ブランドも相次いで距離を置いたと指摘した。

そのうえで、これまで語られてきた「交流を増やせば敵意を和らげられる」という考え方は、必ずしも成り立たないとした。

矢板氏は、台湾の芸能人が中国市場で活動する際に直面し得る問題を、3つの点から指摘している。

第一に、「交流を増やせば敵意を解消できる」という考え方は、楽観的な期待にすぎない可能性があるという。

蔡氏は、中国との交流が特に深い台湾の芸能人の一人である。司会を務めた老舗バラエティー『康熙来了』は台湾と中国で広く知られ、蔡氏自身も長年、中国で仕事や番組出演を続けてきた。

しかし、長年にわたる交流や実績があっても、台湾の選挙集会に姿を見せただけで、それまで築いてきた関係が一瞬で失われる可能性がある。矢板氏は、政治的忠誠が何よりも優先される環境では、どれほど交流を重ねても最低限の尊重さえ得られないと指摘した。

第二に、経済面で中国市場への依存度が高くなればなるほど、自らの自由を失う恐れがある。

蔡氏をめぐる今回の出来事は、中国で仕事をする場合、自分が何を発言するかだけでなく、「何を言わなかったか」「どこへ行ったか」「誰と一緒にいたか」にまで注意を払わなければならない現実を示しているとした。

その結果、失われるのは言論の自由だけではなく、「沈黙する自由」さえなくなる可能性があるという。

第三に、矢板氏が最も深刻だと指摘したのは、中共の「レッドライン」が絶えず移動していることだ。

かつては中華民国の国旗を掲げることが「レッドライン」と考えられ、その後は民進党候補への支持が問題視されるようになった。現在では、壇上に立たず、発言もせず、選挙集会の観客席に座っているだけでもレッドラインを越えたとみなされ、批判や排除の対象になり得るとした。

矢板氏は、中国で稼ぐことについて「悪魔の手から小遣いを受け取るようなもの」と表現した。

「お金は本物だが、ルールを決めるのは自分ではない。しかも相手はいつでもルールを変えることができる」と指摘した。

矢板氏は、今回の出来事を機に、台湾の芸能人は、仕事や収入を中国市場に大きく依存した場合、どれほどの代償を払うことになるのか、そしてどこまで自分の自由を守れるのかを改めて考える必要があるとの見方を示した。

夏松