米中西部ミズーリ州のキャサリン・ハナウェー司法長官は、中国系オンライン通販大手「テム(Temu)」が利用者の個人情報を違法に収集し、消費者を欺いているとして、同社の運営会社などを提訴した。州司法長官事務所が10月13日、発表した。
訴状によると、テムのアプリは利用者の同意なく個人情報を収集するよう設計されており、収集された情報が中国共産党政権に渡る恐れがあるという。ハナウェー氏は声明で「テムは利用者にうそをつき、データを盗み、中国共産党(中共)当局に渡した可能性がある」と指摘し、州民にアプリの削除を呼びかけた。
テムを巡っては、アーカンソー、ネブラスカ、ケンタッキー、アリゾナ、テキサス、オクラホマの各州も同様の訴訟を起こしている。
テムは2022年9月に米国でサービスを開始した。中国の電子商取引(EC)大手PDDホールディングスが運営し、同社は中国国内向け通販サイト「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」も展開する。調査会社マーケットプレイス・パルスは2024年1月、テムで営業する中国拠点の販売業者は10万を超えると推計した。
訴状によると、州側が雇った専門調査員がアプリを解析したところ、利用者の正確な位置情報や端末にインストールされたアプリ、関連アカウントの情報、携帯電話や無線LAN(Wi-Fi)のネットワーク情報など、一般的な通販アプリの利用に必要な範囲を超える情報を収集していたという。
訴状は、アプリが利用者の同意なく機微な情報を取得するだけでなく、第三者のセキュリティー研究者は収集の実態を把握できないように設計されていると指摘。GPSを通じて、少なくとも約3メートルの精度で利用者のリアルタイムの位置情報を取得できるとしている。
また、端末の音声や映像の記録・保存機能にも、利用者に気付かれない形でアクセスできる状態だったと指摘した。
さらに、プログラムのコードを解析しにくくする「難読化」や通信の暗号化、端末の状態を検知する機能、不正なシステムアクセスなど、情報収集の実態を隠すための仕組みを確認したという。アプリストアを通じて更新しなくても、利用者の端末上でアプリの動作を変更できる機能も備えていた。
訴状は、こうした仕組みによって、米アップルの「アップストア」やグーグルの「グーグルプレイ」で求められる審査を回避できると指摘。アプリには、サイバーセキュリティーの専門家がスパイウェアやマルウェアの特徴とみなすコードも複数含まれていたとしている。
州側は、中国では米国と同等の個人情報保護が保障されていないとし、2017年施行の国家情報法などにより、中国企業は情報機関への協力を法律で義務付けられているとして、テムが収集した州民のデータが中共当局に送られ、利用されていると合理的に推定できると訴えた。
このほか、テムは未成年者に対する年齢確認の手続きが不十分で、個人情報の収集や危険性のある商品の購入につながる恐れがあると指摘。対象となる商品には、サバイバルナイフや喫煙関連商品、薬物使用器具などが含まれるという。
また、知的財産権の保護体制が不十分なため、米プロスポーツチームの商標を無断で使用した商品を出品していたと主張した。対象として、米プロフットボールNFLのカンザスシティー・チーフス、大リーグのセントルイス・カージナルスとカンザスシティー・ロイヤルズ、北米プロアイスホッケーNHLのセントルイス・ブルースを挙げている。
さらに、米下院で中国問題を扱う米中戦略競争特別委員会の報告書を引用し、新疆ウイグル自治区のウイグル族に対する強制労働によって製造された可能性の高い商品を販売していたとして、同社の社会的責任への取り組みにも疑問を呈した。
ハナウェー氏は、州の消費者保護法「ミズーリ州商取引慣行法」違反に当たるとして、違法行為の恒久的な差し止めや民事制裁金の支払いなどを求めている。
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