冷凍食品が解凍被害 仏スーパー数百店にサイバー攻撃 日本の家電は大丈夫か

2026/10/15
更新: 2026/10/15

フランスのスーパー数百店で、冷蔵・冷凍設備の管理システムがサイバー攻撃を受け、冷凍食品の解凍などの被害が出た。家庭の冷蔵庫やネット家電も、不正操作の対象になり得るのか。日本メーカーの製品で公表した脆弱性や国内の感染事例を踏まえ、家庭でできる対策と、購入時の目安となる「JC-STAR」を紹介する。

フランスで10月11日深夜から12日未明にかけて、スーパー数百店の冷蔵・冷凍設備がサイバー攻撃を受けた。犯人は設備を遠隔操作して霜取りモードに切り替え、設定温度を50度まで上げた。朝、出勤した従業員が異常に気づいたときには、庫内の冷凍食品は全部ダメになっっていた。被害を受けた店舗は大量の商品を廃棄せざるを得ず、パリ検察が捜査を始めた。

フランスのスーパー数百店で被害 冷凍設備の管理システムに攻撃

フランスのメディアによると、攻撃を受けたのは、冷凍設備を遠隔で監視・制御する管理システムである。デンマークの空調・冷凍機器大手ダンフォス(Danfoss)の製品。

被害を確認したのは、大手スーパーチェーンのアンテルマルシェ(Intermarché)で約150店、生協系のU(Coopérative U)で100店近く、ルクレール(E.Leclerc)の一部店舗などである。ルクレールのある店舗では、約22万ユーロ(約3900万円)相当の商品を廃棄したという。

共同通信によると、被害を受けた設備の大半は、すでに製品寿命を迎えた旧型で、ソフトウェアの更新やセキュリティー対策の提供が終わっていた。

12日夜から13日にかけても、別の店舗で同じような攻撃があったと報じられている。フランス国家サイバーセキュリティ庁(ANSSI)は、ダンフォス以外の冷凍制御システムにも注意が必要だとして、警戒を呼びかけている。「攻撃は続いている可能性が高い」としている。

犯行声明や身代金の要求は、現時点で確認していない。

家庭の冷蔵庫も乗っ取られる? ネット家電への侵入経路

ネットにつながる家庭用の冷蔵庫も、理論上は乗っ取られる恐れがある。

機器本体が直接攻撃されるほか、スマートフォンのアプリやメーカーのクラウドサービス、家庭内のWi-Fiなどを通じて、不正アクセスの危険性がある。

2015年に、アメリカ・ラスベガスで開催したハッカーの会議で、研究者がサムスン製スマート冷蔵庫の通信の一部を傍受できることを実証した。ただし、通信の傍受と、温度設定などを変える遠隔操作は別のものである。

攻撃の標的になりやすい機器には、防犯カメラ、カメラ付きインターホン、ホームセキュリティー機器、スマートロック、エアコンや床暖房の制御機器などがある。

一方、セキュリティ業界のデータによると、ネット接続機器への攻撃の4分の3以上は、家庭用ルーターに向けられている。冷蔵庫そのものより、家庭のネットワークの入り口となるルーターの方が狙われやすい。

攻撃者の主な目的は、情報を盗むことや、機器を不正に操作することである。カメラやマイクを使ったのぞき見や盗聴、ルーターを経由した通信の盗み見、機器の設定変更などが考えられる。パスワードを変えられ、利用者が自分のアカウントにログインできなくなるおそれもある。

対策が不十分な家電を足掛かりに、同じネットワークにつながるパソコンやスマートフォンに侵入される危険もある。

車の遠隔操作も 家電以外に広がるサイバー攻撃のリスク

2015年には、アメリカの研究者が、車載の情報・娯楽システムを通じて、走行中のジープ・チェロキーを遠隔操作することに成功した。親会社のフィアット・クライスラーは約140万台をリコールした。

2024年には、韓国の自動車メーカー、起亜(Kia)の一部車種で、ナンバープレートの情報だけで位置の追跡やドアの解錠、エンジンの始動ができる脆弱性を公表した。起亜は数か月で修正し、実際に悪用された形跡はないとしている。

電力や水道などの重要インフラでは、何重もの防御や監督の仕組みが設けられ、一般の家電に比べて攻撃は難しい。ただし、設備や管理の状況によって異なり、一律に安全とは言えない。

日本メーカーの製品は安全か 脆弱性と国内の感染事例

日本メーカーの家電やネット接続機器も、こうしたリスクと無縁ではない。

シャープの機器で7件の脆弱性
2024年1月、家庭の太陽光発電や家電を制御するシャープの「クラウド連携エネルギーコントローラ(JH-RVB1、JH-RV11)」で、7件の脆弱性が見つかった。

悪用されると、認証なしでアクセスされたり、設定を変えられたりするおそれがあった。機器に不正な命令を実行させることも可能だった。

シャープは修正版を配信した。また、機器をインターネットに直接接続しないことや、初期パスワードを変更することを呼びかけた。

国内でも1日平均約542台の感染を確認

日本国内でも、ネット接続機器が不正なプログラムに感染する事例を確認している。

情報通信研究機構(NICT)の2025年の観測によると、国内でマルウェア「Mirai」に感染した機器は、1日平均約542台だった。攻撃に使われる通信は、IPアドレス1つ当たり年間約250万件に上り、観測開始以来、最多となった。

標的として目立ったのは、防犯カメラの録画機(DVR)、ネットワークカメラ、家庭用Wi-Fiルーターである。ただし、これは国内で確認した感染事例であり、感染した機器が全て日本メーカーの製品だったという意味ではない。

日本のスーパーやコンビニでも、冷蔵・冷凍ケースを遠隔で監視する仕組みは広く使われている。古い設備を更新せずに使い続ければ、フランスと同じような被害に遭うおそれがある。

IoT機器の購入時に確認したい「JC-STAR」とサポート期間

国も対策を進めている。経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は2025年3月、ネット家電などのIoT機器のセキュリティー水準を星の数で示す制度「JC-STAR」を始めた。

基準を満たした製品にはラベルが付く。二次元コードを読み取ると、セキュリティーに関する情報やサポート期間を確認できる。製品を購入する際の目安となる。

ネット家電を守る 家庭でできるセキュリティー対策

家庭では、次のような対策が挙げられる。

・初期パスワードを変更する

・対応する機器やサービスでは、2段階認証を有効にする

・ルーターや家電のソフトウェアを最新の状態に保つ

・メーカーのサポートが終わった機器は、買い替えるか、ネットから切り離す

・外出先から操作する必要のない機器は、家庭内のネットワークだけで使う

・ネットにつなぐ機器を減らせば、攻撃の入り口も減る。便利さだけでなく、接続の必要性を見直すことも、被害を防ぐための一歩である。

張婷