米国が中央アジアへの関与を強めている。ルビオ米国務長官は10月18日、ウズベキスタンのサマルカンドに入り、翌19日、中央アジア5か国外相との「C5+1」会合に出席した。米企業の幹部ら200人以上も同行し、貿易や投資、重要鉱物を軸に協力拡大を進めている。
中央アジアは、中国共産党(中共)が進める一帯一路の欧州への要衝であり、エネルギーや戦略資源の確保でも重要な地域だ。米国の進出が強まれば、中共が長年築いてきた影響力にも変化を迫る可能性がある。
中央アジアはなぜ一帯一路の戦略的要衝なのか
習近平が進める一帯一路において、中央アジア諸国は地理的に重要な位置を占めてきた。
カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの5カ国は、中国からカスピ海、コーカサスを経て欧州へ向かう重要なルートに位置する。
第一に、中央アジアは中国と欧州を陸路で結ぶ重要な中継地である。
鉄道や道路、物流拠点、国境検問所を整備することで、中国はユーラシアを横断する物流網を拡大し、貨物輸送量を増やすことができる。
第二に、中央アジアはエネルギーや鉱物資源が豊富である。
天然ガス、石油、ウランなどの重要資源は、中国のエネルギー安全保障に関わるだけでなく、新エネルギー産業や電子産業、先端製造業に必要な原材料の確保にも直結する。
中央アジア5カ国はいずれも豊富なエネルギー・鉱物資源を持つ。カザフスタンには約300億バレルの石油と約2.3兆立方メートルの天然ガスがあり、石炭、ウラン、クロム、銅、マンガンなども豊富である。2024年のウラン生産量は約2万3300トンで、世界最大だった。
トルクメニスタンは天然ガスが主要資源で、確認埋蔵量は約14兆立方メートルに上り、世界有数の天然ガス資源国である。
ウズベキスタンは金、ウラン、銅、天然ガスなどを産出し、2024年の金生産量は約113トン、ウランは約4千トンだった。
キルギスは金や石炭、水力発電資源に恵まれ、タジキスタンも大きな水力発電の潜在力を持つほか、金、銀、アンチモンなどの戦略鉱物を産出している。
第三に、中国にとって中央アジアとの関係強化は、新疆を含む中国西部の経済発展とも密接に関わる。対外貿易の拡大や地域インフラの整備、周辺国との経済的な結びつきを強める上でも重要となる。
このため、中共にとって中央アジアは単なる海外投資市場ではない。交通、エネルギー、サプライチェーン、さらにはユーラシア全体を見据えた地政学・経済戦略に関わる重要地域である。
米国の関与は中共にどのような影響を与えるのか
今回の米国の動きで注目されるのは、外交関係の強化と並行して、幅広い経済協力を進めている点である。
米企業幹部ら200人以上がルビオ氏に同行し、重要鉱物が主要議題の一つとなったことは、米国が米企業による中央アジアへの投資や取引を拡大しようとしていることを示している。
米企業が鉱山開発権や長期購入契約、鉱物加工への投資機会を獲得すれば、中国企業との間で資源調達や投資案件、市場シェアをめぐる競争が強まる。
中共にとっての課題は、鉱物資源の流出だけではない。採掘から加工、資金調達、販売まで、中国企業に依存しない新たなサプライチェーンが形成される可能性があるためだ。
米国にとっては、中央アジアとの経済関係を深めながら、重要資源の調達先を多様化できるメリットもある。
経済競争は外交・安全保障にも波及
経済関係の強化は、外交関係の深化にもつながり得る。
米企業が中央アジアで長期投資や技術サービス、調達網を構築すれば、米国と各国との経済的な結びつきはさらに強まる可能性がある。
それに伴い、米国が中央アジアの外交や安全保障に関与する余地も広がる。
中央アジア諸国にとっても、経済、外交、安全保障で選択肢が増えることになる。
これまで安全保障面ではロシア、経済面では中国との関係を重視してきたが、米国などの関与が強まれば、より多角的な外交・経済関係を築く余地が生まれる。
中共が直面するのは米国との競争だけではない
中央アジアへの関与を強めているのは米国だけではない。
EUも交通、エネルギー、重要原材料をめぐる中央アジアとの協力を進めている。
ロシアは中央アジア諸国と歴史、言語、経済、安全保障の面で深いつながりを持つ。トルコや湾岸諸国なども、中央アジア市場への投資機会を探っている。
こうした動きにより、中央アジア諸国は外交や経済協力の相手を、より幅広く選べるようになっている。
これまで中共は、地理的な近さ、中国市場の規模、インフラ投資、旺盛なエネルギー需要を背景に、中央アジアとの経済・貿易関係を拡大してきた。
しかし、他国からの投資や協力が増えれば、中央アジア各国は融資条件、技術力、購入価格、市場アクセスなどを比較しながら、提携相手を選べるようになる。
中央アジアでは現在、一帯一路と米国やEUによる投資・協力が競合し始めている。
なかでも米国が今後、投資や経済・安全保障協力をどこまで継続・拡大できるかは、この地域における一帯一路の位置づきにも影響を与えるとみられる。

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