「移民の武器化」に対抗へ 欧州委員長が危機感 「域外国境の警備強化要する」

2026/10/23
更新: 2026/10/23

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は今月21日、移民を政治的・戦略的な手段として利用する「移民の武器化」に対抗するため、EUの域外国境の警備を強化する必要があると述べた。

フォンデアライエン氏はEUが長年にわたり不法移民の流入に直面しており、その一部にはベラルーシとロシアが関与したとみられる事例もあると指摘。域外国境への脅威に対応するため、欧州委員会が「欧州緊急対応枠組み」を提案すると表明した。枠組みは年末に発表する予定という。

同氏は「ロシアとベラルーシが移民を武器として利用してきたことを、われわれは目の当たりにしてきた」と述べ、「国家主体、非国家主体が意図的に大規模な人の移動を引き起こしている」と指摘した。

その上で「狙いは明白だ。当局の対応能力を圧倒し、恐怖を広げ、我々を分断することだ」と語った。

発言の背景には、東欧のEU加盟国で中東やアフリカからの不法移民の流入が増加していることがある。

ラトビア、リトアニア、ポーランドは、ベラルーシがロシアと連携し、移民を自国に送り込むことで、国内の混乱を引き起こそうとしていると非難している。3カ国は、いずれもNATOの東側に位置する。ベラルーシとロシアは、こうした非難を否定している。

ラトビアでは夏の間、ベラルーシ側から不法入国を試みる移民が相次いだ。

これに対し、ラトビア軍の兵士は催涙ガスを使用し、警告射撃を行って越境を阻止。7月22日、ラトビア軍はXへの投稿で、ベラルーシ側から不法に国境を越えようとする少なくとも5人を確認したと発表した。

投稿によると、移民らは軍の隊員を目にすると攻撃的な態度を取り、木材を投げつけたため、軍が防御措置を取ったという。

ラトビア軍は当時、「これは、不法移民がハイブリッド戦争の手段として利用され、ラトビアをはじめ、EUおよびNATOの域外国境を抱える国々に対する意図的な挑発となっていることを示す、また一つの事例だ」と表明した。

相次ぐ移民の越境事案

EUとNATOの加盟国であるラトビアは、2021年以降、ベラルーシとの国境で不法移民の流入に直面している。同国は、ベラルーシとロシアが中東やアフリカから移民を航空機で運び込み、EU域内へ送り込んでいると非難してきた。

ポーランドでも同様の事態が起きている。2021年12月には、ベラルーシとの国境を越えてEUに入ろうとする不法移民に対し、ポーランドの治安部隊が放水車を使用した。

当時、EUへの入域を試みる数千人が国境付近に集まっていた。EUでは、加盟国間の人の移動を原則として自由にするシェンゲン協定の下、域内の多くの国で国境検査なしの移動が認められている。

ポーランドではその後も移民の越境事案が報告されている。昨年12月には、ベラルーシとの国境沿いの森林に隠されたトンネルを通り、180人以上が国内に入ったとポーランド当局が発表した。

今年8月には、ラトビア当局もベラルーシとの国境下にトンネルを発見したと明らかにした。

ラトビアのアンドリス・クルベルグス首相は当時、犯罪組織が不法移民の移動を支援しており、移民をシェンゲン圏内に送り込むことで、EU域内の別の国へ移動できるようにしていると述べた。

リトアニアも7月、ベラルーシ側からEU域内に入るために不法移民が利用していたトンネルを発見したと発表した。

ベラルーシとロシアは、不法移民に国境を越えるよう促しているとの疑惑を、いずれも否定している。

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