仕事を頼んでおきながら、代金を払わない。催促すれば、今度は警察が出てくる。
そんな理不尽なことが、中国では政府発注の公共工事をめぐって起きている。
中国各地で、地方政府や国有企業による工事代金の未払いが深刻化している。建設業者の中には、工事費用を工面するため、自宅を担保に借金したり、友人から金を借りたりした人もいる。しかし、工事を終えても代金が支払われず、返済できなくなった。本人だけでなく、金を貸した友人や家族まで困窮し、病気になっても入院費を払えない人が出ているという。
本紙の姉妹メディア「NTD新唐人テレビ」が各地の建設業者や住民を取材したところ、次のような深刻な被害が明らかになった。
広西チワン族自治区の建設会社経営者、韋氏は、政府の公共工事を請け負ったが、4年経っても約2億円以上の代金が支払われず、会社は経営難に陥った。「工事のために友人から借金したが、返済できず、その友人まで巻き込んでしまった」と嘆く。
湖北省でも、道路工事を請け負った業者が、1年以上にわたり工事代金を受け取れずにいる。支払いを求めても、元請け業者は「さらに上の発注元である国有企業から工事代金が支払われていないため、こちらも払えない」と説明するばかり。何度催促しても支払いはないという。
広東省では、かつて建設業で成功した人々が、不動産不況を境に一転して困窮するケースも出ている。地元住民によると、約18億円もの工事代金を回収できず、弁護士を雇って裁判を起こしても解決しない事例があるという。
さらに理不尽なのは、未払いの代金や賃金を求める人々が、逆に取り締まりの対象になることだ。
中国では近年、「悪意討薪(あくいとうしん)」という言葉が使われるようになった。誰が言い始めたのかは定かではないが、政府系メディアの報道にも登場する。文字通りには「悪意を持って賃金を要求する」という意味で、正当な未払い賃金の請求まで問題行為として扱われかねないとして、批判を集めている。
広東省の住民はNTDの取材に対し、未払いの工事代金や給料を求めて抗議すると、当局に取り押さえられたり、拘束されたりすることがあると明かした。
中国政府も未払い問題を認識し、企業への支払いを促す対策を打ち出している。しかし、長年代金を回収できずにいる業者からは、実効性を疑う声が上がっている。
背景には、不動産不況による土地売却収入の減少と、地方政府の深刻な財政難がある。政府が支払わなければ元請け企業も下請けに払えず、その先の労働者まで賃金を受け取れなくなる。
上海や広州などの大都市でも、家賃を節約するため橋の下で寝泊まりする配達員や出稼ぎ労働者の姿が報告されている。かつて安定した職業とされた公務員や教師にまで、給与の遅配や手当の削減が広がっている。
政府が発注し、企業が工事を終え、労働者が汗を流す。それなのに、肝心の代金が支払われない。
高層ビルや立派な道路を造るお金はあっても、それを造った人に払うお金はないのか。これが中国の誇る「経済発展」の舞台裏である
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