「全面的な党の厳格統治」をテーマとする中国共産党(中共)第20期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開かれている。中共当局が公表した最新の汚職摘発データからは、汚職事件が依然として相次いでいることが分かった。
中共の学者は党の機関誌に寄稿し、反汚職運動をめぐって党内にある5つの疑問や異論を明らかにした。専門家は、官僚組織全体に寝そべりの風潮が広がっている証拠だと分析する。また、中共は汚職を生み出す土壌を本気で取り除くことはできず、取り除けば中共政権そのものが崩壊するとの見方も示した。
汚職摘発相次ぐ 習近平が自ら選んだ高官も次々失脚
当局が公表した最新データによると、今年1~9月、全国の規律検査・監察機関は省・部級以上の幹部73人を立件した。
過去の公式統計を見ると、省・部級以上の幹部の立件数は2024年が年間73人、2025年が年間115人(うち1~9月は90人)だった。今年の1~9月は前年同期を下回ったものの、2023年以降、多数の高官が失脚しており、その影響は広範囲に及んでいる。
中共は別の統計として、中管幹部の摘発状況も公表している。中管幹部とは、中共中央が直接管理する幹部を指し、そのほとんどが省・部級の高官に当たる。
香港の親中共メディア「大公文匯」によると、2012年の中共第18回党大会から2022年の第20回党大会直前までに、500人を超える中管幹部が審査・調査の対象となった。
第20回党大会以降、中央規律検査委員会と国家監察委員会が調査した中管幹部は、2023年が87人、2024年が92人、2025年が181人に上った。
中央規律検査委員会と国家監察委員会のデータによると、今年に入ってから調査対象となったことが公表された中管幹部は約60人に達し、中央政治局委員2人も含まれている。
香港紙「明報」は、第18回党大会から第19回党大会までの間に失脚した中管幹部は440人に上り、その多くが前指導部に近い幹部だったと報じた。
大紀元の独自集計によると、2022年の第20回党大会で選出された中央委員会では、発足時の376人(中央委員205人、中央委員候補171人)のうち、これまでに70人以上が粛清された。中央委員会全体の約2割に当たる。
これは1976年に文化大革命以来、1期の中央委員会から失脚した人数、割合ともに最多となる。
第19回、第20回党大会の閉幕後、中共の官製メディアは、習近平が中央委員の人選を「自らチェックした」と盛んに称賛していた。特に第20回党大会で昇進した高官は、広く「習家軍」と呼ばれている。
カナダ在住の評論家で、『遠華事件の内幕』の著者でもある盛雪氏は、大紀元に対し、習近平が自ら抜擢した高官まで次々と失脚していることについて、「習近平が人選で忠誠心ばかりを重視し、能力や清廉さを考慮していなかったのか。それとも、中共の官僚組織そのものが汚職の巣窟と化し、汚職と無縁の幹部などいないということなのか。いずれかだ」と語った。
盛雪氏は、現在の中共では汚職がさらに大規模になっており、内部から改革を進めたり、自力で立ち直ったりする余地は、もはや残されていないとの見方を示した。
台湾国防安全研究院の研究員、沈明室氏は、中共が汚職撲滅を掲げながら、かえって汚職が深刻化している背景には、主に3つの原因があると分析した。
第一に、絶対的な権力は絶対的に腐敗するという点だ。外部からの権力の制約や監視がなく、さらに権力闘争で互いに相手を排除しようとする動きも重なり、失脚する高官が増え続けている。
第二に、汚職が制度そのものに根付いているため、人事を入れ替えても解消できないことだ。
第三に、景気低迷によって利用できる資源が減少すると、内部で不正な利益の分け前をめぐる対立が生じる。さらに、政治的に表裏のある「二面人」と疑われることも、新たな粛清につながる要因となるという。
官製メディアが明かした反汚職運動への5つの疑問
5中全会の開幕を前に、中共の機関誌「求是」のサイトは、国防大学規律検査・政法学院の邱新松教授による論考を掲載した。
論考は、反汚職運動に対する5つの「誤った認識」として、「悲観論」「緩和論」「有害論」「容忍論」「無関係論」を挙げている。
「悲観論」は、汚職を摘発すればするほど、新たな汚職が次々と発覚し、取り締まりを強めるほど汚職が増えているように見えるため、腐敗を根絶することはできないと悲観する考え方だ。「洪洞県には善人がいない」という古い言い回しになぞらえ、誰もが腐敗していると捉える見方もある。
「緩和論」は、すでに10年以上にわたって前例のない規模で汚職摘発を進めてきたのだから、これ以上厳しい取り締まりを続ける必要はなく、そろそろ取り締まりを緩め、一息ついてもよいという考え方を指す。
「有害論」は、「水清ければ魚棲まず」ということわざを引き合いに、反汚職運動をやりすぎるべきではないとする立場だ。幹部に厳しすぎる要求を課し、行動を過度に制限すれば、仕事への意欲や新たな事業に取り組む積極性が損なわれ、経済・社会の発展にも悪影響を及ぼすと主張する。
「容忍論」は、摘発された幹部の中には有能な人材も少なくなく、多少の賄賂を受け取ったり、不正な利益を得たりしても大きな問題ではないとして、大目に見るべきだという考え方だ。
「無関係論」は、反汚職運動は中共の問題であり、一般の幹部や国民にはあまり関係がないとする見方である。
官製メディアがこうした5つの疑問を取り上げたことについて、盛雪氏は、中共の汚職はすでに人々の強い怒りを買うほど深刻になっていると指摘した。また、これらの疑問は党内や世論の中で以前から繰り返し提起されてきたものであり、習近平の3期目の任期が後半に入った今、反汚職運動への疑問や批判は今後さらに増えるだろうと述べた。
沈明室氏は、中共の学者が取り上げたこれらの見方について、官僚組織全体に仕事への意欲を失い、積極的に動こうとしない「寝そべり」の姿勢が広がっていることを裏付けるものだと分析した。
そのうえで、5つの見方を批判したのは、5中全会を前に、党内で高まる反汚職運動への反対の声を抑え込むためだとの見方を示した。
「汚職の土壌を取り除けば中共は崩壊する」
前述の論考は、汚職が繰り返し発生し、取り締まってもなくならない根本的な原因について、「汚職を生み出す土壌や条件が、まだ完全には取り除かれていないためだ」と主張している。
中国本土の弁護士、黄東氏(仮名)は、現在の制度そのものが汚職に手を染める官僚を次々と生み出していると指摘した。
黄氏は、反汚職運動について、民間で使われる「肥だめをそのままにしてハエをたたく」という例えを挙げた。
「肥だめを放置してハエだけをたたいても、次々とウジが湧き、新たなハエが生まれる。これでは、いくらたたいてもきりがない」
盛雪氏は、中共自身も、汚職を生み出す土壌を取り除くことは不可能だと分かっていると語った。
汚職を生み出す土壌を取り除けば、もはや共産党ではなくなるというのだ。中共の組織や最高権力者が好き勝手に振る舞えるのは、まさにこの独裁体制があるからだと説明した。
盛雪氏は、数年前、中国社会で公職者の資産公開を求める声が上がった際、中共がそれを訴えた人々を逮捕したことにも言及した。こうした事実から、中共が自らの腐敗に本気で歯止めをかけることなどあり得ないとし、「汚職を生み出す土壌がなくなる日こそ、中共が崩壊する日だ」と語った。
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