中国共産党(中共)政権による軍事的圧力が強まる中、日本は南西諸島での軍事配備を加速させており、その中でも台湾からわずか110キロの距離にある与那国島が最前線の拠点となっている。
ブルームバーグの報道によると、政府は南西諸島全体で、ミサイルシステム、レーダー基地、弾薬庫、電子戦設備の整備を進めている。この一連の島々は九州から台湾にかけて広がり、防衛線として「ミサイル列島(Missile Archipelago)」と呼ばれるようになっている。これは過去40年以上で最大規模の軍事建設とされている。
九州ではF-35戦闘機や長距離ミサイルなどの戦力配備も進められている。
日中の緊張高まる
2022年、当時の米下院議長ペロシ氏が台湾を訪問した際、中共軍は複数のミサイルを発射し、その一部が与那国島近海に落下した。これを機に、日本は南西諸島での軍備拡張を本格化させた。
最近では、中共が高市早苗首相の「台湾有事」発言の撤回を強く要求しており、さらに緊張が高まっている。12月6日午後、沖縄本島の南東方向の公海上空で、中共のJ-15戦闘機が日本のF-15戦闘機をレーダー照射するという事件が発生した。
これにより、日中間の軍事的緊張はさらに高まっている。
自衛隊の与那国島配備
与那国島には現在、約230名の自衛隊員が駐留しており、来年には新たに約30人の対空電子戦部隊が加わる予定だ。さらに将来的には、防空ミサイルの配備も計画されている。
ワシントンに拠点を置くシンクタンク「新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security)」のフランツ=ステファン・ガディ研究員は、台湾海峡で紛争が起きた場合、日本がアメリカ主導の集団防衛に参加すれば、与那国島の電子戦部隊は、単なる監視役から、日米のミサイルシステムに対し、標的情報を提供する積極的な役割に変わるだろうと述べている。
その一方で、このような拡充は、与那国島を攻撃対象にするリスクも高めると指摘している。
与那国町民の反応 不安と歓迎が交錯
島内では、軍事配備の強化について意見が分かれている。一部住民は不安を感じる一方で、歓迎する声もある。
防衛省は12月初旬、住民向けに軍備増強計画の説明会を開催し、配備はあくまで防衛目的であると強調した。約80人の町民が参加した。
今年8月に町長に当選した上地常夫氏は、自衛隊の強化は島の防衛に役立つと理解を示す一方で、さらなる配備拡充は町民の心理的負担を増やしかねないとして慎重な姿勢も見せている。
また、多くの町民が高齢者であることを踏まえ、若い自衛官が島に来ることは歓迎していると語った。
一方、糸数健一前町長は、高市氏の台湾支持はまだ不十分だと主張。日本単独では防衛できない、与那国島にはもっと多くのミサイルシステムを配備すべきで、日本・アメリカ・台湾による共同軍事演習も行うべきだと提言している。
町長選挙では、上地氏が557票、糸数氏が506票を獲得しており、わずか51票差の接戦だった。
豊見城市議の新垣亜矢子氏は「沖縄の人々は軍事配備に反対しているというイメージは正確ではない」と指摘。
新垣氏は、中国(中共)は長年にわたり国際社会とかけ離れた主張をしており、日本の立場をまったく無視していると述べ、自分たちの要求が通らなければ、何も受け入れないという国だと付け加えた。
防衛強化への姿勢に世代間の違い 若年層は前向き
沖縄は第二次世界大戦末期に激しい地上戦の舞台となり、その後一時アメリカの統治下に置かれていた。1972年にようやく日本に返還されたこの地域では、戦争の記憶が根強く残っており、高齢世代の多くが憲法9条を重んじる平和主義を支持している。
一方で、若い世代は防衛力強化に前向きな傾向がある。
2025年11月に産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が行った世論調査では、18~29歳の83.2%が、高市氏の防衛費増額計画を支持しており、これは70歳以上の支持率の約2倍となっている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。