独製薬大手CEO 欧州の供給網は中国依存が過度と指摘 日本も同様なリスク

2026/01/20
更新: 2026/01/20

ドイツ最大の製薬・医療サービス企業で、私立病院運営も手がけるフレゼニウス(Fresenius SE)のミヒャエル・ゼン最高経営責任者は、ヨーロッパの製薬業界が中国に過度に依存していると警鐘を鳴らした。

ゼン氏は1月19日、スイス・ダボスでブルームバーグの取材に応じ、ヨーロッパは長年にわたり医薬品生産を国外に委託してきた結果、中国の活性医薬品成分(原薬)に対して「不健全な依存状態」に陥っていると指摘した。

ゼン氏は、世界的な貿易摩擦が激化する中、ヨーロッパは中国共産党(中共)がこうした成分を政治的な圧力手段として利用する事態を防ぐため、重要な医薬品成分の供給体制を早急に強化する必要があると述べた。

同氏は、「この新たな世界秩序の下では、活性医薬品成分が『武器化』されるリスクがある」とし、「重要な医薬品が不足すれば、極めて深刻な状況に陥る。医薬品が権力闘争の道具として使われかねない」と警告した。

ゼン氏はこれまでも、ヨーロッパが中国の医薬品成分に依存している状況を、中国がレアアース分野で握る支配的地位になぞらえてきた。

ヨーロッパの研究者が2024年に発表した「医薬品の国際貿易と国家安全保障」と題する研究では、EU域内の医薬品生産に必要な化学物質の最大80%が域外から供給され、その多くが中国とインドに依存していることが明らかになった。供給地域の集中は構造的な脆弱性を生み、国家安全保障や医療分野の自立性に対する懸念を高めているという。

また、著名な米経済学者であるミルトン・エズラティ氏は、2025年12月に米誌「ナショナル・インタレスト」に寄稿し、中国の医薬品サプライチェーンは極めて複雑であり、中共が「生物安全法」に基づいて輸出規制を発動した場合、その影響は甚大になると指摘した。

エズラティ氏は、中共政府がこれまで公にこうした措置を示唆したことはないとしつつも、コロナの流行時には、中共が世界の約80%を占めるヨウ素造影剤の供給を一時的に停止し、欧米の病院が最大10か月にわたり画像診断を制限せざるを得なくなったと振り返り、西側諸国はすでにその影響を経験していると述べた。

ゼン氏は今回の発言の中で、「昨年は移行期にあると述べたが、今回は新たな秩序の始まりに立っていると言いたい。この秩序は取引を重視し、合意形成を軸に、国家利益を最優先するものだ」と語った。

こうした発言の背景には、地政学的緊張の高まりが世界貿易に及ぼす影響へのヨーロッパの懸念がある。ロシアによるウクライナ侵攻に加え、最近ではトランプ米大統領がグリーンランド問題をめぐり、欧州8か国に対する関税引き上げを示唆したことも、不安を一段と強めている。

同様の構図は日本にも当てはまる。日本で流通する医薬品は最終製剤の多くを国内で生産しているものの、有効成分である活性医薬品成分(API)や中間体については海外依存度が高い。業界や公的資料によると、日本が輸入するAPIのうち、3~4割程度が中国由来とされ、抗菌薬、解熱鎮痛薬、循環器系薬剤、抗がん剤の一部では、中国への依存度が特に高いと指摘されている。

政府は医薬品の安定供給を経済安全保障の観点から重要課題と位置づけ、原薬の国内生産や調達先の多元化に向けた支援策を進めている。ただ、中国依存の構造を短期間で転換するのは容易ではなく、ヨーロッパと同様、日本でも医薬品サプライチェーンのあり方が問われている。

林燕
清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。