中国 なぜか気持ちがわかってしまう顔

中国「泣き馬」爆売れの真相 若者「泣けない現実」を代弁

2026/02/12
更新: 2026/02/12

「もし声を上げて泣けないなら、この馬が代わりに泣いてくれる」

今年は馬年である。本来なら前向きさや元気の象徴とされる年だが、中国で今、静かに売れ続けているのは、笑顔ではなく、泣きそうな顔をした馬(「哭哭馬」)のぬいぐるみなのだ。

赤い小さな馬。しかし、その顔は笑っていない。口がへの字に曲がり、今にも泣き出しそうである。

もともとは失敗作だった。本来はにこっと笑うはずの口を、工場で反対向きに縫ってしまった。それだけの話だった。

ところが、この「泣きそうな顔」を見た人々が、こう言い始めた。
「これ、まさに今の自分」。
そんな声が広がり、気づけば大ヒット商品となっていた。

今の中国では、若者の多くが生活の余裕を失っている。仕事はなかなか見つからず、見つかっても給料は安い。家は高すぎて買えず、結婚も現実的ではない。都会で一人、黙々と働く生活が当たり前になっている。

しかし、つらいとは言いにくい。弱音を吐けば「甘えるな」と言われる。明るく前向きであることが求められる社会である。

そんな中、このぬいぐるみ馬は何も言わず、ただ黙って悲しそうな顔をしている。それが逆に、「わかってもらえた気がする」と多くの人に感じさせた。

「泣きたいけど泣けない」。
「苦しいけど、口に出せない」。
その気持ちを、この泣いている馬の表情が代弁したのである。

馬年なのに、走り出す元気がない。
前を向く余裕もない。
それでも毎日をこなしながら、生きている。

この馬が売れているのは、単にかわいいからではない。今の中国の若者が置かれている現実に、あまりにも近いからである。

泣き出しそうな小さな馬は、いまの中国の空気を、静かに伝えている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!