王毅外相会見が示す「被害者ナラティブ」と対抗戦略

2026/03/09
更新: 2026/03/09

2026年3月8日に行われた中国の王毅外相による記者会見は、日本にとって極めて危険なシグナルであった。王毅は戦後80年という節目を盾に取り、「日本は反省せず侵略を繰り返そうとしている」と一方的に非難した。さらに、日本の防衛政策について「日本政府は憲法を『掏空(骨抜き)』にしている」と批判し、台湾問題については「完全な内政であり、日本の自衛権行使は違法である」と断言したのである。また、東京裁判を意図的に引き合いに出し、中国こそが戦後秩序の守護者であるかのように振る舞ってみせた。

我々は、これらの発言を単なる「歴史認識を巡る批判」と矮小化してはならない。この背後にあるのは、日本の安全保障政策の根幹である「集団的自衛権」や「平和憲法」の解釈に直接介入し、その国際法上の正当性を根底から剥奪しようとする、極めて高度な「法律戦」と「心理戦」の複合攻撃である。

中国の戦略的意図は明白だ。台湾問題を「内政問題」と強弁することで、日米同盟の抑止力を法的に分断しようとしている。そして、日本がいざ自衛権を行使しようとした際に、それを「侵略の再来」と定義し、自らの反撃を「正当な防衛」と偽装するための口実作りに他ならない。また、「14億人の意志」を強調することで日本国民に「再び戦火に巻き込まれる」という恐怖や無力感を植え付け、政治・経済・メディアに自己検閲を蔓延させようとする「心理戦」の罠も仕掛けられている。

だが、我々が最も警戒すべきは、この複合的な「三戦」の刃が、最終的に「沖縄(琉球)の主権剥奪」に向けられているという事実である。中国はカイロ宣言やポツダム宣言といった戦後秩序の枠組みを都合よく解釈し、「日本が放棄すべき領土」の範囲を歪めようとしている。台湾植民地支配の批判から始まり、日本の軍事行動を違法と断じ、さらには「沖縄(琉球)の主権は日本にない」とする「琉球地位未定論」を国際世論に浸透させるという論理のすり替えが着々と進められている。これは、沖縄の自衛隊や米軍基地の存在を「他国への侵略準備」として違法化し、住民の不安を煽って内部から日本の統治を揺さぶるという極めて危険なシナリオである。

このような中国共産党(中共)政権による詭弁と現状変更の試みに対し、日本は座して死を待つわけにはいかない。我々は、中共の「三戦」を無効化するための強力な「カウンター・ナラティブ」を直ちに発信し、主導権を握るべきである。

第一に、日本が戦後80年間、一貫して国際法を遵守し、平和的に発展してきた「法の支配の真の守護者」であることを国際社会に再認識させる必要がある。自ら国連海洋法条約の仲裁裁判裁定を無視しておきながら戦後秩序の守護者を気取る中共には、法の支配を語る資格はない。

第二に、サンフランシスコ平和条約および沖縄返還協定に基づき、「沖縄の主権は完全に日本に帰属しており確定済みである」という事実を毅然と主張し、これに対するいかなる異議も国際秩序への重大な挑発とみなす姿勢を示すべきだ。

第三に、台湾海峡の平和は国際社会の共通利益であり、武力による現状変更の試みこそが明白な危機であると訴え、日本の自衛権行使が普遍的価値を守るための正当な権利であることを明言しなければならない。

歴史を現代の領土拡張の道具とする「歴史の武器化」を、我々は国際社会と共に断固として非難するべきである。中国の描く「被害者ナラティブ」を打ち破り、彼らこそが「現状変更者」であるという真実を世界に露呈させることこそが、日本の主権と平和を守る唯一の道である。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
▶大紀元EPOCH TIMES JAPAN編集長 ▶「日本の思想リーダーズ」番組ナビゲーター 、「大紀元ライブ」番組ホスト。