トランプ米大統領がベネズエラの独裁者マドゥロ氏の拘束やイランへの打撃といった奇策に打って出たことは、世界を驚愕させた。これは独裁政権を震え上がらせ、中国共産党(中共)に強い恐怖を抱かせている。反対勢力の一部は、トランプ氏の行為は国際法に違反し、他国の主権を侵害するものだと主張している。しかし、国際法の本質および主権の概念から分析すれば、トランプ氏の行動は国際法に違反していないばかりか、むしろ国際法を実践し、人権を保護するものだといえる。
国際法の目的:人権優先・主権有限
まず、何をもって国際法とするかを定義しよう。
第二次世界大戦後の国連設立、および国連が採択した一連の公約、条約、規範を国際法とするならば、国連設立の趣旨と当時発表された「世界人権宣言」こそが、国際法全体の基本理念を構成している。国連および国際法の核心は、「平和」と「人権」の二点に集約されるが、その中でも人権こそが平和実現の前提である。
第二次大戦後、ナチス政権による人権の蹂躙、民衆への虐殺、他国への侵略という人類の惨劇を二度と繰り返さないために国連は設立された。
国連憲章の序文には、「われらの一代のうちに二度までも人類に言語に絶する悲哀をもたらした戦争の惨禍から後世を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値に対する信念をあらためて確認し」と記されている。
1948年12月10日、国連で採択された「世界人権宣言」にはこうある。「人類家族のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利を承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」「人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮な行為をもたらしたこと、……言論及び信仰の自由を享受し、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣言されたこと」「人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権を保護することが肝要である」
その後、この宣言の約束を現実のものとするため、二つの国際人権規約などが採択され、包括的な人権保護の国際法体系が形成された。
また、国連憲章は「大小各国の平等権」の原則を再確認している。つまり、大国も小国も主権は平等であり、国連の議事手続きにおいて一律に対等な一票を持つ。
ここからわかる通り、戦後の国連と国際法の本質は、ナチスの全体主義による人間尊厳の蹂躙への反省に基づいている。人権保障のためのルールも、戦争防止のための主権平等も、すべては「主権を制限する」ためのものなのだ。
さらに、人権は平和の前提でもある。戦後の歴史を俯瞰すれば、政府が自国民の人権を尊重し、国家権力が憲法と法の支配によって制約されている国が、自ら戦争を仕掛けたり他国を侵略したりすることはない。逆に、権力が抑制されない独裁国家では人権が保障されず、独裁者は自己の利益のために民衆を「砲弾の餌食」として戦場へ送り出す。
国連の設立自体が、加盟国の主権がある程度制限されることを前提としている。国連に加入した以上、その国の主権は無限ではなく国際法の制約を受ける。国連の公約に署名・批准したことは、締約国として自国民の人権を尊重するという、政府が本来持つべき責任を果たす義務があることを意味する。
総じて、国際法体系の核心は「基本的人権の保障」と「国家主権の制限」にある。
共産全体主義による国際法への打撃
国連と国際法体系は、設立以来、常に共産全体主義からの打撃を受けてきた。かつてはソ連を筆頭とする共産陣営が人権規約の採択を阻み、公然と出兵して他国の民衆の抗議を弾圧し、独裁政権を支援した。
その後、中共が中華民国を国連から追い出して常任理事国の座を奪うと、国連への系統的な浸透を開始した。彼らは国際法の人権体系を破壊し、戦後に築かれた人権ベースの国際秩序そのものを転覆させようと企てている。
まず、中共は買収と浸透を通じて国連の人権監視機関をコントロールし、国際法を形骸化させた。
周知の通り、中共の全体主義は世界で最も深刻な人権犯罪を犯している政権である。政権奪取以来、中国人の殺戮を続け、1989年6月4日の天安門事件における学生虐殺は世界を震撼させた。
1999年以来、中共は法輪功学習者に対して残酷な迫害を加えている。信仰を奪うだけでなく、恣意的な拘禁、拷問、殺害を繰り返し、さらには「この惑星でかつてない邪悪」とされる行為――法輪功学習者からの臓器強制摘出(生体臓器収奪)を行っている。20世紀後半において、この迫害は世界最大の人権侵害の悲劇であり、典型的な人道に対する罪、ジェノサイド(集団殺害)罪である。この迫害は今なお続いている。
それにもかかわらず、深刻な人権侵害を繰り返す中共が、国連の人権機関のメンバーに名を連ね続けている。2023年10月10日、中共は第78回国連総会で人権理事会のメンバーに再選された。任期は2024年から2026年までだ。中共は2006年以降、計6回もメンバーに当選している。
人権理事会は国連総会の補助機関であり、人権の促進と保護を目的として47の加盟国で構成されるが、その選挙の実態は目を覆いたくなるものだ。
昨年9月22日、国連本部は米メディア「大紀元時報(エポックタイムズ)」と「新唐人テレビ(NTD TV)」の記者数名に対し、記者証の発行を再び拒否した。これは過去20年間続く慣行であり、台湾のメディア記者も同様に拒絶されている。
国連は理由の明示を拒んでいるが、これらが法輪功学習者によって運営され、中国の人権状況を告発し続けているメディアだからであることは誰の目にも明らかだ。
国際法の執行機関であり人権公約の監視主体であるはずの国連が、中共による信仰の自由への迫害を公に非難しないどころか、中共に協力して信仰の自由を弾圧している。
国連がいかに中共に深く浸透されているかがわかる。
2024年4月16日、英国議会外務委員会は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の元職員エマ・ライリー氏の証言を公表した。そこには、中共が国連の投票メカニズムに干渉し、報告書から中共への批判意見を削除させ、国連職員を買収している実態が暴露されていた。
さらに中共は、人権監視機関を操るだけでなく、公然と是非を逆転させ、国際法の内涵を歪曲して「米国には人権がない」と指弾している。
米国が中共の人権侵害を非難しても、中共はそれを「人権問題の政治利用だ」と決めつけ、逆に米国を批判し返している。
同時に「内政不干渉」「主権不可侵」の旗印を掲げ、国際社会による罰を逃れようとしている。
中共はさらに「国際ルールの策定者」になると称して国際法の書き換えを狙い、戦後の国際秩序を根底から覆そうとしている。
本来、国連の拘束力や国際法の存在は道義的原則に基づいたものであり、厳密な意味での法執行力には欠けていた。
中共による人権原則への公然たる挑戦は、他の独裁国家に悪しき手本を示した。特に中露が常任理事国として、イラン、ベネズエラ、北朝鮮などの邪悪な政権と結託して「邪悪な同盟」を形成し、国際法秩序に対抗している。国連は、人権状況の劣悪な国家たちの舞台へと変貌してしまった。
以上のように、国際法に人権の条文がいくら書かれていようとも、独裁政権はそれを踏みにじり続け、戦時中よりも残酷な非道を行っている。国際法は今や、効力を持たない空文、単なる飾りと化している。
トランプ氏の行為は国際法の実践である
近代以降、「主権在民」は世界のコンセンサスとなり、政府の権力の正当性を測る前提となった。国際法における人権概念もこの原則に基づいている。すなわち、人権は政権の合法性を測る基準であり、人権を保障すれば人民の支持を得られるが、逆に蹂躙し続ければ、その政権はすでに合法性を喪失している。
米国の独立宣言にはこうある。「我々は、以下の真実を自明のものと信じる。全ての人間は平等に造られ、造物主によって、生存、自由、そして幸福の追求を含む不可譲の権利を与えられている。これらの権利を確保するために、人類の間に政府が組織されるのであり、政府の正当な権力は被統治者の同意に由来する。どのような形態の政府であれ、これらの目的にとって破滅的となったときには、人民はそれを変革し、または廃止して、新たな政府を樹立する権利を有する」
チェコのハヴェル大統領も、カナダ議会での演説で「人権は主権に優先する」「国家は人の産物であり、人は神の産物である」と述べている。
したがって、国家は人民のものであり、独裁者のものではない。人民を殺傷する独裁者はすでに合法性を失った「国を盗む大泥棒」である。
古代においても、人民に惨虐な君主は合法性を失い、「無道」と呼ばれた。人民には立ち上がって非合法な強盗政権を覆し、徳のある者に代えさせる権利があり、暴政への抵抗は正義の行いとされた。
しかし、現代は刀や槍で戦える時代ではない。政府が軍隊や警察を掌握しており、人民の抵抗はしばしば暴政によって残酷に鎮圧される。
イランやベネズエラなどの独裁政権は、自国民を迫害するだけでなく、全世界の安全を脅かしている。
昨年12月、イラン現政権は1万人以上の国内抗議者を虐殺した。イランは何年にもわたり国際法に違反して核実験を継続し、ハマスやヒズボラといった国際的に認知されたテロ組織に公然と資金援助を行い、周辺諸国および世界の安全を脅かしている。

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