中国共産党による技術的権威主義の拡大を抑止する狙いから、米下院「対中国特別委員会」ジョン・ムーレナー委員長は21日、新たな半導体輸出規制法案を提出し、米国務長官およびオランダ政府との迅速な協議を求めた。
米国の輸出規制の抜け穴を塞ぎ、中共の人工知能(AI)分野での急速な発展を阻止することが目的だ。
同法案は「半導体輸出制限調整法」と名付けられ、中国向けの先端半導体輸出に明確な基準を設けることで、米企業の公平な競争環境を確保しつつ、国家安全保障の強化を図る内容となっている。
ムーレナー委員長は、「同法案は、米国企業が世界最先端の半導体を中共に販売することを防ぐとともに、AI分野における米国の将来的主導権を確固たるものにする」と述べた。
同法案では、商務長官と国家情報長官が連携し、中国のAI向けハードウェア能力を示す客観的な性能指標(総処理能力、相互接続帯域幅、メモリ容量など)を策定・公表し、定期的に更新することが求められる。
さらに、輸出規制には「動的技術閾値(RTT)」が導入され、対象国が自国で量産可能な最先端チップ性能の水準に連動する形で制限が設定される。
これにより、相手国がすでに一定規模で量産できる半導体の性能を基準にし、その性能をわずかに上回る程度(約10%以内)の製品までしか輸出を認めない。
米国および同盟国の企業の競争力を維持しながら、相手国が自力では到達できないような急激な技術進歩を促さないことを目的としている。
また、相手国のAIハードウェアが米国市場全体の5%を超える場合には輸出許可が原則不承認となるなど、厳格な抑止措置も盛り込まれている。
加えて、既存の輸出規制や「エンティティ・リスト」掲載企業への制限も引き続き適用される。
同法案は、定期的な能力評価と数値基準に基づく規制体系を構築することで、予測可能かつ執行可能な枠組みを確立し、米国のAI分野における優位性維持を狙うものとされる。
オランダへの圧力 ASML輸出問題
ムーレナー氏は法案提出と同時に、ルビオ米国務長官とオランダ政府に対し、外交協議を行うよう書簡で要請した。これは、中国向け半導体製造装置輸出の抜け穴を封じることが目的とされている。
書簡では、オランダの半導体製造装置大手ASMLが2026年末までに中国の半導体工場へ深紫外線(DUV)露光装置を納入する計画に言及。これが米国の輸出規制の抜け穴となり得ると警告した。
ムーレナー氏は、トランプ政権が極端紫外線(EUV)露光装置の対中輸出制限に成功したことに触れ、「これにより中共は7ナノメートル以下の半導体量産能力を制限され、技術水準は約7年遅れた」と評価した。
一方で、「ASMLが現在、既存の規制枠組みの抜け穴を利用している」として、ルビオ国務長官に対し、より厳格な規制適用を求めた。
米議会の対中技術規制強化の動き
同日には、米下院情報委員会のリック・クロフォード委員長と外交委員会のブライアン・マスト委員長も、CIAやNSA、国務省、エネルギー省と連携したブリーフィング後に共同声明を発表した。
声明では、半導体製造装置およびAIチップに対する輸出規制が米国のAI軍事・技術競争における優位性を強化していると評価する一方、中共側が密輸やAIモデルの蒸留技術、遠隔アクセスなどを通じて規制回避を試みていると指摘した。
そのうえで、「米国は同盟国と連携し、中共による技術取得経路を全面的に遮断し、輸出規制の抜け穴を完全に封じる必要がある」と強調した。
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