石油化学製品の基礎原料であるナフサの供給不安が深刻化するなか、川崎重工業が水素からナフサ(粗製ガソリン)を生産する技術提案を進めている。中東依存からの脱却を視野に入れた新たな取り組みとして注目されている。
ナフサは石油から精製される液体で、エチレンなど石油化学基礎製品の原料となる。プラスチック、合成繊維、合成ゴム、合成洗剤、塗料など幅広い製品に使用されており、パソコンや携帯電話、自動車部品、医療器具など日常生活を支える多様な製品に欠かせない素材だ。
住宅分野でも用途は広く、塩ビパイプや壁紙、断熱材、浴室樹脂、塗料、接着剤など、建材の多くに使用されているとされる。
こうした中、2026年2月以降の中東情勢悪化を背景に、ナフサ供給への懸念が高まっている。ホルムズ海峡の物流停滞が続くなか、日本国内で使用されるナフサは44.6%を中東からの直接輸入に依存し、さらに国内製造分の原油も9割超が中東産だ。輸入ナフサの82%が中東諸国由来とされ、供給遮断が現実味を帯びれば、食品包装材や物流資材不足など、日本経済への影響は避けられないとの見方が出ている。
この状況を受け、川崎重工は水素を原料にナフサを生産する構想を打ち出した。同社はこれまで、トルクメニスタンで天然ガスから高品質ガソリンを製造する世界最大級のガス・ツー・ガソリン(GTG)プラントを受注・納入した実績を持つ。
この商業プラントで培った天然ガス由来水素の加工技術を応用することで、ナフサや石油化学材料の製造が可能になるとしている。日本経済新聞によると、橋本康彦社長は「水素を使ってガソリンやナフサをつくれると知らない人がまだ多い。色々な方に紹介し期待を寄せられている」と述べ、水素活用の新たな可能性に期待を示している。
原油に依存せず、水素を活用してナフサを国内外で柔軟に生産できれば、調達先の分散が進み、地政学リスクへの耐性向上につながる。経済安全保障の観点からも、川崎重工の取り組みは日本の産業基盤を支える重要な選択肢となり得るものである。
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