緊急事態条項「創設不要」 参院緊急集会で対応可能 憲法審査会で有識者が見解

2026/06/11
更新: 2026/06/11

参議院憲法審査会は6月10日、大災害や武力攻撃などの非常時に備えた「緊急事態条項」の創設をめぐり、参考人質疑を行った。有識者として出席した長谷部恭男・早稲田大教授と只野雅人・専修大教授は、新条項の創設に否定的な見解を示し、非常時でも現行憲法下の「参議院の緊急集会」で対応できると主張した。

政府や緊急事態条項の推進派は、大規模自然災害や武力攻撃など、平時の統治機構では対処できない危機を想定し、憲法に新たな規定を設けるべきだとしている。具体的には、衆議院の解散中や任期満了時に大災害などが発生し、広範囲で選挙の実施が困難になった場合、国会機能を維持するため、解散された衆議院を復活させたり、国会議員の任期を延長させたりする制度が必要だとする。

また、国会による法律の制定や予算の議決を待つ余裕がない特別な事情がある場合、内閣に権限を集中させ、法律と同一の効力を持つ「緊急政令」を制定したり、緊急の財政処分を行えるようにしたりする制度の創設も求めている。

これに対し、長谷部氏は「憲法を変えることはプラスよりマイナスが大きい」と述べ、只野氏も例外を広く設けることのデメリットに言及し、両有識者は新設に反対した。

長谷部氏は、衆議院不在時に大災害などが起きても、現行憲法の「参議院の緊急集会」を活用することで国会の機能を代替でき、法律の制定や予算の議決も可能だと指摘した。憲法が定める衆院解散から総選挙まで「40日以内」、国会召集「30日以内」という日限については、従前の政府が居座り続けることを防ぐためのものであり、緊急集会の活動期間を70日以内に制限する趣旨ではないと説明した。

国会議員の任期延長について、長谷部氏は、国会の議決によって延長が可能となれば、いつまで議員でいるのかという懸念があり、任期が止めどなく延長されるリスクがあると警告した。

さらに、内閣の判断のみで法律と同じ効力を持つ政令を制定できる仕組みについて、長谷部氏は、日本という国のあり方自体が根本から歪められるリスクがあるとして、極めて不穏な提案だと批判した。只野氏も権力濫用のリスクを挙げ、例外的な措置を憲法で容認することに強い懸念を示した。

緊急事態に対する法整備のあり方は、OECD諸国の間でも一様ではない。憲法に緊急事態条項を持つ国としては、フランス、ドイツ、イタリアがある。

フランスは、憲法に「合囲事態」や、大統領に強大な権限を付与する「例外的権限」を定めている。ドイツは、憲法に当たる基本法に「防衛事態」や「災害事態」などを設け、発動要件や権限配分の変更を詳細に規定している。イタリアは、憲法に「戦争事態」や、政府が「法律の効力を有する暫定措置」をとれる旨を規定している。

一方、アメリカ、イギリス、カナダ、日本は、憲法に包括的な緊急事態条項を持たず、法律によって対応する国に分類される。アメリカは憲法に包括的な緊急事態条項を持たず「国家非常事態法」に基づき、大統領が緊急事態を宣言して特別の権限を行使する。イギリスは成文憲法を持たず、「2004年民間非常事態法」によって対応している。カナダは「非常事態法」という通則的な法律によって緊急事態に対処している。

諸外国を見ても、憲法に緊急事態条項を設けず、法律によって危機管理を行う国は複数存在する。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます