中国で民主化を訴え、獄中で亡くなったノーベル平和賞受賞者・劉暁波氏をたたえて創設した「劉暁波人権賞」を、武漢で新型コロナの実態を取材した中国の市民記者・張展(ちょう・てん)氏が受賞した。
だが張氏は現在も服役中のため、授賞式には出席できず、中国出身の作家・厳歌苓氏が代理で賞を受け取った。
授賞式は7月13日、ドイツ東部ライプツィヒで開かれた。今回が第1回となる同賞は、中国の人権や民主化を支えるために創設された。今年は張氏と、ドイツの職業学校教師で牧師のローラント・キューネ氏(Roland Kühne)の2人が受賞した。
賞の名前となった劉暁波氏は、中国の民主化と言論の自由を訴えた作家、人権活動家である。中国共産党による一党支配の見直しなどを求めた文書「08憲章」の作成に関わり、懲役11年の判決を受けた。
劉氏は服役中の2010年にノーベル平和賞を受賞したが、中国当局は本人だけでなく家族の授賞式出席も認めなかった。授賞式では、本人の代わりに空席の椅子へ賞が置かれた。劉氏はその後も自由を奪われたまま、2017年に肝臓がんで亡くなった。
今回、張氏の代理で授賞式に出席した中国出身の作家・厳歌苓氏は、張氏が過去に語った言葉を紹介した。
「人々が嘘と災難の中で暮らしているのを見た。自分が生きるために声を上げることが犯罪になるとしても、私は黙ることはできない」
「この国の問題は制度そのものにある。だから私は勇気を持って進み、信念を貫きたい。自由は決して無償で手に入るものではない。この国が変わることを願っている」
市民ジャーナリスト・張展
張展氏は1983年生まれ。元弁護士で、キリスト教徒でもある。人権活動に参加したことで弁護士資格を失い、その後は組織に属さず、自ら取材・発信を行う「市民ジャーナリスト」として活動してきた。2019年には香港の民主化デモを支持する活動を行って拘束されるなど、中国当局からたびたび弾圧を受けてきた。
2020年、新型コロナの感染が拡大し、厳しい都市封鎖が行われていた武漢に入り、病院や街の様子、市民の生活を動画などで発信し、当局が公表しない現地の実態を伝えた。
しかし同年5月に拘束され、社会秩序を乱したなどとして懲役4年の判決を受けた。獄中では抗議のため長期間にわたって食事を拒み、健康状態の悪化がたびたび伝えられた。
2024年5月に刑期を終えて一度は自宅に戻ったものの、その後も厳しい監視を受けた。さらに、ほかの人権活動家を支援したことなどを理由に再び拘束され、2025年9月に懲役4年を言い渡された。
張氏はこれまでにも、報道や言論の自由を守ろうとした勇気を評価され、海外で複数の賞を受けている。しかし、本人が自由の身で授賞式に出席したことはない。
世界は張氏をたたえ、中国は張氏を閉じ込める。その皮肉な対照こそが、中国で「真実を伝えること」の重い代償を物語っている。

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