「32日も休まず働いて亡くなった人」を英雄と呼ぶべきなのか。それとも、そんな働き方をさせた組織を問題視すべきなのか。中国でこの問いが大きな議論を呼んでいる。
チベット自治区で36歳の警察官が、標高約4700メートルの警備拠点で32日間連続勤務した後に脳出血で倒れ、死亡した。国営メディアは「職務に身をささげた模範」として大々的に報じたが、世論の反応は予想とは逆だった。
亡くなった警察官は妻が妊娠7か月で、勤務が終われば育児休暇を取ることを楽しみにしていたという。しかしネットには「なぜ交代させなかったのか」「人手不足なら増員すべきだ」「こんな働かせ方を美談にするのはおかしい」と批判が殺到。「英雄ではなく制度の犠牲者だ」との声も相次いだ。
ネット上のアンケートでは、約7割が「本来なら防げた死だった」と回答し、「偉大だ」と評価した人はごく少数だった。
かつて中国では、過酷な長時間労働や過労死を「献身」「奉仕」として称賛する報道は珍しくなかった。しかし今回は、「亡くなった人を褒める前に、なぜ32日も働かせたのか説明すべきだ」という声が世論の中心となった。
「英雄が一人増えた」のではない。「防げたはずの犠牲者がまた一人増えた」。
それが多くの中国人の受け止め方だった。
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