複数の関係者によると、カナダ安全情報局(CSIS)は今年7月、ブリティッシュコロンビア州リッチモンド市の市長と市議会議員全員を対象に非公開の説明会を開き、10月17日に予定している地方選挙について、中国共産党(中共)による干渉の恐れがあると警告した。カナダの中国系有権者コミュニティーを標的とした影響力工作も含まれるという。
独立系ニュースサイト「The Bureau」の報道によると、説明会はCSISの地域担当幹部が主催した。内容は機密情報ではなく、外国干渉を調査したホーグ委員会で示された資料など、これまで公に取り上げられてきた事例が主に紹介された。
情報筋によると、CSISは、中共とつながりのある人物が選挙期間中にリッチモンド市の候補者へ接触し、選挙過程に介入して公正性を損なう可能性があると警告した。関係者は事案の性質上、匿名を条件に取材に応じた。
ブリティッシュコロンビア州の複数の自治体首長にも警告
ブリティッシュコロンビア州では近年、複数の地方自治体関係者が、CSISから同様の警告を受けたと公に明らかにしている。
バンクーバー市のケネディ・スチュワート前市長と、ポートコキットラム市のブラッド・ウェスト市長は、いずれも選挙への中共の干渉リスクについて、CSISから警告を受けたと述べている。
2022年のバンクーバー市長選をめぐっては、流出したCSISの情報から、当時の中共駐バンクーバー総領事や一部の中国人コミュニティー関係者が、カナダの中国系有権者に対し、特定の中国人系候補を支持するよう働きかけていたと指摘された。
カナダ紙「グローブ・アンド・メール」も当時、同じ情報に基づき、中国人コミュニティー内のネットワークが、現職のケン・シム・バンクーバー市長の選挙運動を支援していたと報じた。シム市長は報道内容を否定している。
ブリティッシュコロンビア州の地方自治体の中でも、リッチモンド市ではより踏み込んだ対応が取られた。CSISは非公開の説明会で、市長と市議会議員全員に対し、候補者が中共の干渉を受けるリスクが高まっていると説明した。
地方選挙まで約3か月となる時期に、CSISが市長と市議会議員を集めて非公開の説明会を開いたことは、同局が市政選挙への干渉リスクを具体的なものとみていることを示している。
CSISは今回の非公開説明会について、開催の事実を肯定も否定もしていない。
一方、CSISの報道官は、近年の「カナダ安全情報局法」改正により、国家安全保障上の脅威に関する情報を、連邦政府以外の機関にも共有できる権限が拡大されたと説明した。
共有先には地方自治体のほか、学術機関、産業界、地域団体なども含まれ、カナダ全体の安全保障上の強靱性を高めることが目的だとしている。
調査報告書、中国人コミュニティーへの中共の影響を指摘
公開資料によると、カナダの選挙監督当局は2024年、112ページに及ぶ調査報告書をまとめ、2021年の連邦下院選挙で、バンクーバー都市圏の中国人コミュニティーを対象とした外国勢力による干渉工作が行われていたと認定した。
調査によると、当時、保守党からスティーブストン・リッチモンド東選挙区に立候補していたケニー・チウ氏は、ウイグル人の人権や香港の民主化運動を支持し、外国代理人登録制度の創設を提唱していたことから、中共の主要な標的となった。
報告書は、中共駐バンクーバー総領事館の職員や一部の地域団体、中国語メディアが、チウ氏を中国人コミュニティーの利益を損なう人物として印象付けていたと指摘した。
証人は調査担当者に対し、一部の中国人団体の幹部が、中共領事館職員の代弁者となっていたと証言した。
また、ある証人は、選挙後に開かれた宴会で、地域関係者の一人が「チウ氏を落選させることに成功した」と誇っていたと振り返った。
リッチモンド市では、10月17日の地方選挙に向けた動きが本格化している。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。