中国 一本の紹介動画から始まった、思わぬ騒動の行方

ファーウェイと「竹ゼミ事件」 巨大企業の逆鱗に触れた小さな玩具のはなし

2026/08/05
更新: 2026/08/05

振ると「ワーワーワー」とセミのような鳴き声がする中国の伝統的な竹製玩具、「竹ゼミ(邦訳、中国語:竹知了)」

そんな、中国で昔から子供たちに親しまれてきた竹製玩具が、なぜか「愛国ブランド」の代表格として知られる中国IT大手、ファーウェイ(華為)の逆鱗に触れた。

紹介動画は次々と削除される一方で、玩具は飛ぶように売れていく。削除すればするほど話題になる、なんとも皮肉な騒動が中国で起きている。

「竹ゼミ事件」

発端は、ある動画投稿者が竹ゼミを振りながら、「1千万元(約2億円)以内で最高のおもちゃ」と紹介した一本の動画だった。

この一言がファーウェイを連想させた。ファーウェイ常務取締役の余承東氏が、新エネルギー車「問界(AITO)M9」の発表会で、「1千万元(約2億3400万円)以内で最高のSUV」とアピールしていたのは有名な話だ。その直後、会場では観客から一斉に「わぁー!」という大きな歓声が上がった。この場面は中国のネットでも「大げさすぎる」とたびたび話題となっており、「1千万元以内で最高」は余氏の決まり文句として知られるようになっていた。

そこで、投稿者が添えた「1千万元以内で最高のおもちゃ」という一文と、竹ゼミの「ワーワー」という音が、その発表会を思い起こさせるとして動画はネットで一気に拡散。「まるでファーウェイの発表会だ」と話題になり、多くの人がファーウェイを皮肉る動画だと受け止めたのである。

これに対しファーウェイは、「企業や企業家の社会的イメージを傷つけ、名誉を侵害した」として、SNSや動画サイトに動画の削除を申し立てた。動画は実際に公開停止となった。

これを受け、投稿者は「子供の頃に遊んだ懐かしい玩具を紹介しただけで、誰かを皮肉ったつもりはない」と反論。「玩具を売るのも、作るのも問題ないのに、私が振っただけで権利侵害になるのか。音を聞いて誰かを連想するなら、それは連想した側の問題ではないか」と訴え、ファーウェイの対応に疑問を呈した。

ところが、騒動はここで終わらなかった。

その後も、最初の投稿に続けとばかりに、「1千万元以内で最高のおもちゃ」と余氏の決まり文句をもじって竹ゼミを鳴らす動画が次々と投稿された。しかし案の定、それらもファーウェイの削除申請の対象となり、一部は公開停止やコメント削除が相次いだ。

それでも投稿は止まらなかった。削除すれば新たな動画が投稿され、また削除される。その繰り返しのなかで竹ゼミはネット上の「ネタ」となり、注文が殺到した。

結果的に、ファーウェイの削除申請は、今どきの子供たちにそれまでほとんど知られていなかった昔ながらの玩具を、爆発的人気の商品へ押し上げるという皮肉な結末を迎えた。

これが、ここ最近中国で大きな話題となっている「竹ゼミ事件」である。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!