米下院の対中国共産党(中共)特別委員会は4日、超党派の調査報告書を公表し、中国の国有通信大手3社がアメリカで通信事業免許を拒否または取り消された後も、規制の抜け穴を利用して、アメリカの重要な通信インフラに関与し続けていると明らかにした。
報告書は、「ストレンジャー・ピングス:中共が支配するインフラが米通信基幹網にもたらす脅威」と題されている。
委員会は数か月にわたる調査の結果、米連邦通信委員会(FCC)が中国電信、中国移動、中国聯通のアメリカ子会社に対する事業免許を拒否または取り消したものの、現行法では、規制対象となる小売通信サービスの提供を禁止できるだけで、通信設備の撤去やネットワーク接続の解消までは命じられないと指摘した。
委員会のジョン・ムーレナー委員長は、「中国通信企業のアメリカ子会社は中共の支配下にあり、すべての米国民に脅威を及ぼしている」と述べた。
さらに、「これらの企業はアメリカの顧客に対し、中共の法律に従って情報を検閲するよう求め、私たちが依存する国内通信網の安全性を損なっている。その結果、アメリカ最大の敵対勢力を背景とする新たなサイバー攻撃を受けやすい状況が生まれている」と強調した。
免許取り消し後も米通信網への接続を維持
調査によると、FCCはこれまでに3社に対し、通信法第214条に基づく認可を拒否または取り消し、同制度の対象となる通信サービスの提供を制限した。
しかし、第214条は通信サービスを認可するための制度であり、企業に設備の撤去やデータセンターからの退出、ネットワーク接続の解消を命じる権限までは与えていない。
報告書はこの状況を、公共運送の免許を失った運送会社が、倉庫やトラックを保有したまま、規制対象外の民間契約で同じ設備を自由に使える状態に例えた。
3社はその後、IP伝送やデータセンター運営、企業向けネットワーク、システム統合など、第214条の規制が及びにくい分野へ事業を移し、米国内の重要なインターネット接続拠点で活動を続けている。
中国電信のアメリカ法人「China Telecom Americas」は、アッシュバーン、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンノゼなど、全米7都市圏に10か所の稼働中のネットワーク接続拠点(PoP)を残している。
中国移動のアメリカ法人「China Mobile International USA」については、米国内で39か所のPoPが確認されており、27か所のデータセンターや相互接続施設に展開している。ネットワーク容量は最大1380Gbpsに達する。
中国聯通のアメリカ法人「China Unicom Americas Operations」も、アッシュバーン、シカゴ、ダラス、ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、シアトルなどに、データセンター設備やラック、電源設備、相互接続回線を残し、アメリカの主要な基幹通信事業者との接続を維持している。
担当者「親会社の法令順守を保証できない」
委員会は、宣誓証言や内部文書を通じ、これらのアメリカ子会社が実際には独立して運営されていないことを明らかにした。
基幹ルーターの管理やサービスの開通、顧客情報の管理、障害対応、コンプライアンス業務などは、程度の差はあるものの、中国本土や香港にある親会社や関連会社に依存していた。
委員会の聞き取り調査では、中国聯通の子会社のコンプライアンス担当者が、「関連会社、特に中国聯通国際がアメリカ法を順守するとは保証できない」と認めた。
また、中国聯通のアメリカ法人は、米企業との契約で「利用規定」の順守を義務付け、中国法に違反する政治ニュースや、中国の国家安全保障法に反する情報、「社会秩序と社会の安定」に反する情報の発信を禁止していた。
ムーレナー委員長は、「米国民を守るため、これらの子会社をアメリカ内の通信インフラから排除しなければならない」と述べた。
BGPハイジャック10万8千件超
報告書は、ネットワーク経路に関する異常も明らかにした。
委員会は、2018年1月から2025年5月末までに、確度の高い「ボーダー・ゲートウェイ・プロトコル(BGP)ハイジャック」の事例を10万8千件以上記録した。少なくとも477の米ネットワークが関係していたという。
こうした異常により、アメリカの通信データが中国本土や香港に関係するネットワークへ迂回し、監視や複製、改ざんを受ける可能性がある。
報告書はBGPハイジャックを、高速道路に偽の迂回案内標識を設置する行為に例えた。データが異常な経路に誘導されても、利用者が気付くことは難しいという。
委員会は、すべての事例が意図的な攻撃だったわけではなく、一部は設定ミスや管理上の不備によって発生した可能性があると説明した。
一方で、異常な経路変更の一部は、中共の支援を受けたサイバー攻撃と時期が重なっていた。
中共と関係あるとされるハッカー集団「ソルト・タイフーン」の事例では、2024年9月22日から25日までの間、中国移動国際のネットワークが、58台の攻撃用サーバーへの通信経路に少なくとも192回含まれていた。
報告書は、このような構造上の弱点が、中共に長期にわたり発見されにくい通信監視の機会を与える可能性があると指摘した。
超党派で規制強化を提言
委員会の民主党側筆頭委員、ロー・カンナ議員は、中共による最近のサイバー攻撃を踏まえ、今回の報告書は「米国内で事業を行う中国政府と関係する通信会社を継続的に監督することの重要性」を浮き彫りにしたと述べた。
また、通信ネットワークの保護を担う政府機関が、潜在的な脅威に対処するための十分な資源を確保できるよう、議会が対応すべきだと訴えた。
委員会は安全保障上の抜け穴を埋めるため、次の6項目を政策提言として示した。
1.安全保障上のリスクが高い企業による包括的な第214条認可の利用を禁止し、アメリカの通信事業者との相互接続を制限する。
2.免許取り消し後も残る通信設備の撤去やネットワーク接続の解消を、政府が命じられるようにする。
3.データセンターの賃貸、IP伝送、遠隔管理などの民間契約も国家安全保障上の審査対象に含める。
4.安全保障上の脅威とされる通信機器やサービスを掲載したFCCの「対象リスト」を整備し、高リスク設備の撤去・交換に必要な資金を確保する。
5.同盟国と共通のBGP経路安全基準を構築する。
6.設備の撤去やリスク軽減措置が完了するまで、通信記録の保存、異常の監視、関連記録の保全を義務付ける。
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