中国 ジャーキーの欠片に群がり、わずか数分で次々死ぬ

子どものおやつを食べたアリが全滅 中国の食品、大丈夫?

2026/08/13
更新: 2026/08/13

子どもが食べていたおやつが、地面にこぼれ落ちた。
そこへアリが群がり、食べ始めた。
ところが数分後、そのアリたちが全滅した。

中国・海南省で、そんな驚きの動画がSNSに投稿され話題となった。「アリが食べて死んだおやつを、子どもが食べていて大丈夫なのか」。そんな不安の声が上がった背景には、中国で根強く続く食品安全への不信がある。

投稿した女性によると、子どもと住宅団地を散歩していた際、食べていたジャーキーの細かな欠片を子どもがうっかり地面に落とした。すると大量のアリが集まり、欠片を食べ始めたという。

しばらくして女性が掃除しようとすると、思いもよらない光景が広がっていた。欠片に群がっていたアリが、わずか2~3分ほどで次々と死んでいたのだ。

女性が商品の袋を確認したところ、原材料には香りをつける「エチルマルトール」や、肉製品の発色剤などに使われる「亜硝酸ナトリウム」などが記載されていた。

しかも製造元は、その辺の無名業者ではない。四川省から農業産業化をけん引する有力企業として認定されている会社だ。

 

なぜアリは死んだのか

中国メディア「大象新聞」は、エチルマルトールの甘い香りがアリを引き寄せ、亜硝酸ナトリウムがアリに強く作用した可能性があると分析。両者の組み合わせが、結果的に市販のアリ用毒餌に似た働きをした可能性を指摘している。

一方、中国紙「羊城晩報」によると、亜硝酸ナトリウムは肉製品などに使われる添加物で、菌の増殖を抑え、保存性を高めるほか、肉の色を保つ働きがある。ただし、摂り過ぎれば中毒を起こすおそれがあり、条件によっては発がん性が指摘される「ニトロソアミン」に変化する可能性もあるため、使用量には基準が設けられている。

また、アリと人間では体の大きさも代謝も大きく異なるため、人間には問題のない量でも、アリには強く作用する可能性があるという。

つまり、「アリが死んだ=この食品は人間にも危険」と単純に結びつけることはできない。

とはいえ、わが子がさっきまで口にしていたおやつ。その欠片にアリが群がり、わずか数分で次々と死んでいく。目の前でそんな光景を見せられた親の衝撃は、相当なものだっただろう。

 

「別の使い道」

衝撃を受けたのは、投稿した親だけではない。動画を見た中国のネットユーザーも騒然。「こんなおやつを子どもに食べさせて大丈夫なのか」「一体何が入っているんだ」と不安の声が相次いだ。

だが、そこは皮肉の効いた中国ネット。あまりの光景に、心配を通り越して「別の使い道」を見つける人まで現れた。

「新しいアリ駆除剤を発見した」

「うちにもアリが多い。どの商品か教えてほしい」

すると、さらに強烈な返しが。

「市販のおやつなら、大体どれでも使える」

冗談とはいえ、食品への不信がよほど根深くなければ、なかなか出てこない発想である。

 

「食品検査員」

そして中国の食品安全ネタには、もう一つおなじみの存在がいる。犬や猫など、家で飼われているペットたちだ。

中国のSNSでは食品の安全性が話題になるたび、ペットを「食品検査員」に見立てる自虐ネタがたびたび登場する。「人間より鼻が利く」「変なものなら食べないだろう」と、食べ物をまずペットに差し出し、その反応を見るというものだ。

今回もやはり、この「ペット検査員」の話が出てきた。

あるネットユーザーは、火鍋用に買った市販の牛肉や羊肉を犬に与えてみたところ、犬がまったく口をつけなかったという。犬が喜んで食べれば、「よし、自分も食べよう」。匂いを嗅いでそっぽを向けば、「犬も食べないなら、自分もやめておこう」。

いつの間にか、愛犬が家庭の「食品検査員」である。

もちろん、犬や猫が食べるかどうかで、人間にとって安全な食品かどうかを判断できるわけではない。ペットが食べない理由はいくらでもあり、科学的な検査とはまったく別の話だ。

それでも、なぜこんな冗談が繰り返しウケるのか。

それは、「食品表示を見ただけでは安心できない」という消費者の不信が、それだけ広く共有されているからだ。

食品の安全を確かめるはずの検査や監督より先に、愛犬の鼻を頼る。もちろん冗談だが、その冗談が成立してしまうところが笑えない。

そして今回は、犬の出番すらなかった。

子どものおやつが偶然地面にこぼれ、それを食べたアリがわずか数分で全滅。ネットではすかさず「新しいアリ駆除剤」と、食品とは別の使い道まで提案された。

食べる前には、まず犬に。こぼれたら、今度はアリが身をもってチェックする。

冗談としてはよくできている。だが、食品安全の話として考えれば、まったく笑えない。

本来、店で普通に売られている食品を買うたびに、消費者が「これは本当に食べても大丈夫なのか」と疑う必要などないはずだ。

安全を確かめるのは犬でもアリでもない。食品を作る企業と、それを検査・監督する仕組みの役目である。

ところが、その仕組みに十分な信頼が置けないからこそ、中国のネットではペットが「食品検査員」にされ、今度はアリの死骸まで安全性を測る物差しのように語られてしまう。

問題なのは、犬が食べるか、アリが死ぬかではない。「自分や家族が毎日口にしているものを、本当に信用していいのか」

人々がそんな疑いを抱きながら食べ物を選ばなければならないことこそ、深刻なのである。

食べる前には犬に聞き、こぼれたらアリの反応を見る。そんな冗談が成立してしまうこと自体、中国の食品安全が失ってきた「信頼」の大きさを何より物語っている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!