中国共産党(中共)は最近「国防動員法」を改正した。改正内容には、予備役人員を後備兵員に変更することや、民間資源の収用など、複数の変更が含まれており、関心を集めている。複数の専門家は、新条文が中国国内外に及ぼす影響を分析し、中共政権の侵略性と拡張性が核心的な脅威であるとの見方を示した。
分析 中国共産党の拡張を背景に新条文は脅威に
中国共産党が新たに改正した「国防動員法」は、2010年の旧法を改正したもので、全14章、計82条からなり、今年10月1日に施行される。
胡錦濤政権時代の2010年に制定された旧法とは異なり、新法には、いわゆる中共の指導の堅持や「総体的国家安全観の堅持」などの文言が追加された。これは習近平の就任後に公布された文書の慣例でもある。
新条文は初めて、国防動員を「平時と戦時の迅速な転換を保障し、経済力と社会力を国防力へ転換する活動」と定義した。
台湾の国家政策研究基金会の李正修研究員は大紀元に対し、中共による国防動員法の大幅な改正には、新興分野や金融など、多くの新たな内容が盛り込まれたと述べた。中共当局は、ロシア・ウクライナ戦争を通じ、ロシアがウクライナに対する戦争を開始した後、対外的に直面した大きな圧力の一つが経済制裁だったことを認識し、中共もこうした準備を進めているのだという。
台湾の国防安全研究院で国防戦略・資源研究所長を務める蘇紫雲氏は、あらゆる軍事的措置は正常な国家であれば防衛に用いられるが、中共の拡張主義の下では、政権による対外拡張を支えるものへと転化されるため、こうした戦争準備に関する法律には脅威があると分析した。
蘇紫雲氏は「重点は国防動員法ではない。重点は、中共政権の性質そのものが侵略性と拡張性を備えていることであり、これこそが問題なのである」と述べた。
中国共産党が後備兵員を拡大 出国政策の厳格化と呼応か
注目すべき変更の一つは、2010年版国防動員法の予備役人員が2026年版では後備兵員に変更され、後備戦力に関係する、より多くの人員が動員体制に組み込まれたことだ。
後備兵員には予備役人員のほか、召集して現役部隊に補充できる後備人的資源も含まれる。具体的には、その他の退役軍人、兵役条件を満たす一般市民、基礎訓練を受けた者などとなっている。
蘇氏によると、予備役人員とは動員可能な人を指し、補充という概念である。一方、後備兵員は、すでに部隊に編成された人員である可能性がある。人員の編成がすでに済んでいるため、動員時には後備部隊がそのまま部隊単位で作戦に参加できる。これは予備役人員と現役人員の差を縮め、前線を支援する際の対応を迅速化することを意味する。
「18~60歳の男性公民と18~55歳の女性公民は国防勤務を担わなければならない」とする規定は、2026年版国防動員法で新設されたものではない。しかし、中共がこれに先立って示した、2026年9月15日に正式施行される「出境入境管理に関する規定」は、中共が国民の出国を制限するのは、兵員を国内にとどめて戦争に備えるためではないかとの連想を呼んでいる。
中国の央広網は中共の新法について、動員令が発令された後、召集予定者は登録地を無断で離れることができず、登録地以外にいる場合は直ちに戻るか、その場で待機し、定められた時間に出頭しなければならないと解説した。
また、「強調しておきたいのは、国防勤務を担う者、特に元々仕事に就いていなかった者は、一定の手当を受けられるということだ」とした。
あるネットユーザーは海外の交流サイトで、中国で失業状態にある若者や、さらには海外から中国へ一時帰国した華人まで、砲弾の餌食にされる可能性が高いとして懸念を示した。
独立評論家の蔡慎坤氏は大紀元に対し、中共はロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアで後備兵員が著しく不足し、若者が大量に国外へ逃れた状況を目にしたと述べた。また、中共は、台湾海峡で戦争を起こせば、日本と米国を巻き込む可能性が高く、短期間では終わらないかもしれないと認識しているため、十分な兵員を準備しようとしているとの見方を示した。
蘇氏は、改正後の国防動員法によって中共の鎖国政策が一層具体化され、海外に住む華人は「中国へ行けば、片道切符になってしまう可能性が高い。行ったら戻れなくなる」と述べた。
民間資源 「徴用」から「徴収・徴用」に拡大
新条文は、従来の「民間資源の徴用と補償」を「民間資源の徴収、徴用と補償」に変更した。単なる「徴用」から「徴収、徴用」へと範囲を拡大した形である。徴収は所有権の移転を伴う一方、徴用は一時的な使用にとどまる。
李氏は「『徴用』であれば、拒否できるようにも見える。しかし、『徴収』には強制性がある。中国共産党は、国家のためだからまずは取り上げる、と言う可能性がある。正常な国家であれば、政府は台帳を作成し、後日返還する可能性があり、損傷があれば賠償しなければならない」と述べた。
徴収、徴用の対象となる民間資源について、新条文は「組織および個人が所有または使用し、社会の生産、サービスおよび生活に用いられる施設、設備、交通手段、場所その他の資源」と改めて定義した。「その他の資源」には、工場の生産能力、さらにはデータや技術人材などが含まれる可能性がある。
さらに、新法第64条は「いかなる組織および個人も、法に基づく民間資源の徴収、徴用を受け入れる義務を負う」と規定している。
台湾基進の元秘書長で、空軍予備役大佐の馬依翔氏はフェイスブックへの投稿で、台湾海峡で戦争が起きた場合、米国企業、日本企業、欧州企業は、中国国内の資産が戦争動員に使われるリスクに直面すると指摘した。台湾企業については、さらに不合理な状況に直面し、中国本土にある自社の資本、設備、技術、生産能力が、最終的に中国共産党の国防動員体制によって台湾に対する軍事行動の支援に使われる可能性があるとした。
蘇氏は、中国共産党がこの法律によって自らの権力を拡大し、国家が負うべき賠償責任を軽減しているとして、権利と義務の不公平な関係だと述べた。中共が私有財産を公共目的に転用すれば、外国企業の国外移転が加速するという。
また、民主国家にも同様の徴用制度はあるが、補償が行われるほか、国会など民意を代表する機関による事後承認があると説明した。中国では中共がすべてを決定し、監督の仕組みが全く存在しないと指摘した。
「これが権威主義と民主主義の違いである。したがって、この動員法自体はそれほど大きな問題ではない。真の問題は中国共産党そのものだ」と述べた。
蔡氏は、中国共産党の「国防動員法」には権限拡大につながる多くの要素が含まれているとの見方を示した。軍事的な緊急事態への移行が宣言されれば、多額の預金を含むあらゆるものを管理できるようになるとし、これも出国を制限する理由であり、中国共産党は富裕層を国外へ出したくないのだと述べた。
徴収の手法について蔡氏は、中国共産党が政権を樹立した後、社会の各階層を対象に没収、徴収、強制買い上げ、国有化を行ったことと同じだと表現した。当時、中国共産党は一部について借用証書を発行し、その後、返還した可能性もあるが、大半は返還しなかったという。
中国共産党の新法は、国防動員の実施後、関係地域内で交通、インターネット、エネルギー、食品などを管理し、人員や物資の移動を制限できることにも言及している。
上海電信では8月30日夜、突如として広い範囲でインターネットがつながらなくなった。同社は同日夜、一部回線の障害が原因だと発表した。上海電信で同様の大規模な通信障害が発生したのは、この2年間で3回目であり、戦争の予行演習や負荷試験など、さまざまな臆測を呼んだ。
中国共産党の新法改正は台湾との戦争に関係するのか
中国共産党の「国防動員法」が前回改正されたのは16年前である。中共がこの時期に改正を行ったことについて、現在、多くの人が、台湾への武力侵攻、または西太平洋や第1列島線で米国、日本と開戦するための準備ではないかと論じている。
今回の改正は台湾に強い警戒感を引き起こした。台湾の陳冠廷立法委員は8月31日、台湾は平時から戦時への転換能力を強化し、民間資源を統合して戦争に備えなければならないと述べた。また、国家の強靱性、エネルギー安全保障、国防自主能力の整備も加速させなければならないとした。
独立評論家の蔡氏は大紀元に対し、中共は現在、財政が枯渇に直面しており、さらに大きな問題として、失業する若者が増え続け、社会への不満や恨みの声、習近平への不満が広がっていると述べた。
このような政権は、内部矛盾が極めて先鋭化するたびに、外部に敵を求めると指摘した。台湾は中共が征服しようとする対象であり、現在の状況から見て、中共による国防動員法の改正は戦争への準備だとして、台湾は十分に備えるべきだと述べた。米国も、中共が台湾海峡で重大な衝突を引き起こすことを警戒しているという。
李氏は、現時点で中共と習近平にとって重点となっているのは内部問題であり、直ちに台湾との戦争を始めなければならないほどの切迫性はないと述べた。
一方、蘇氏は、中共が一貫して戦争準備を強化しており、台湾が警戒を強めることは必要だが、根拠のない臆測をする必要はないと述べた。
責任編集:李仁和
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。