脱北者たちの大遠征

2005/11/22
更新: 2005/11/22

【大紀元日本11月22日】2003年中国烟台でボートに乗って韓国に脱出しようとした脱北者40人余りが逮捕されて北朝鮮に強制送還されたなかで、その中の「オックス母娘」が再度北朝鮮脱出に成功した。韓国行を要請したプロセスの中に、脱北者たちの入韓経路に対する関心が高くなっている。最近の脱北者たちは、大部分が韓国に既に入韓した家族の助けを借りて入韓する。南韓に家族のいない脱北者は 、NGOの助けを借りるとか、ブローカーに金で依頼する方式、あるいは自ら数万里の道を歩いて第3国を通じて入韓する。

ソウル市ヤンチョン区に居住する脱北者ゾン・グオックフィ(仮名、2004年入韓)さんは、「家族のことを考え眠れない時が多い。機会があったら家族皆を韓国に連れて来たい」と強い意志を見せた。現在チョン氏は政府補助金とアルバイトで稼いだ金を蓄えて、一月に一度、北朝鮮にいる家族に送金をしている。チョン氏は、「家族と一緒に南韓に住みたいという希望をもって、一 日 一 日を一生懸命に生きている」と述べた。

2003年統一研究員が 870人の脱北者を対象にアンケート調査をした結果、 65%が「定着金を家族に送金するか、入韓させることに最優先に使う」と回答した。脱北者の定着教育施設である「ハナウォン」を出所するやいなや、脱北者たちは中朝国境地域の華僑、朝鮮族たちを通じて家族と連絡を試みる。

家族と連絡をしてくれる代理人が決まれば一定額を支払う。家族を中国に連れて出れば、どれ位の費用がかかるという一種の契約が成り立つ。それから代理人たちは、自分の人脈を動員して依頼人の北朝鮮内にいる家族たちと接触を試みる。代理人は中国と北朝鮮を出入りすることができる北朝鮮国籍の商人を連絡責任者として活用する。

家族を見つけると、国境地域に連れて出る。南韓に入韓した脱北者に北朝鮮内部の家族が生存しているということを確認してもらうためだ。方法は携帯電話による通話で、北朝鮮国境地域では中国の携帯電話が通じるので南韓と国際通話を通じて電話による再会が成り立つ。

南韓に入韓した脱北者たちは、家族たちと持続的な連絡を取りながら、生活費名目で、少なくとも何十万ウォン、多くて何百万ウォンまで送金する。北朝鮮内の家族は代理人を通じてお金を受け取る。代理人の口座に費用が振り込まれれば、代理人は手数料の名目で 20-30% 位徴収し、残額を北朝鮮の家族に渡す。普通、南韓に入韓した脱北者たちは、北朝鮮の家族と通話をする時、自分が南韓にいると話さない。中国でたくさん稼いだと話す。家族たちが受ける精神的な衝撃と南韓社会に対する理解不足を考慮するからだ。時には南韓の情報機関の指示を受けて情報を探り出すために電話をしたのではないか、と疑う家族もいるという。

2003年入韓したキム・ソンミ(仮名)さんは、今までに母と弟(妹) 2人を入韓させた。北朝鮮にいる母を説得して中国に連れて来るのが難しかったと言う。キムさんは、「6ヶ月間お母さんと通話をしながら中国へ来るよう何回か話したが、国境を越えることをとても憚った。最後になるかも知れないから、必ず一度会いたいと言って国境を越えさせた」と明らかにした。

代理人の助けで国境を越えた家族たちは、中国で一定期間生活するようになる。このようになれば、南韓にいる脱北者たちは家族の韓国行作業を本格的に始める。普通、自分が直接中国に行って家族を説得する。家族たちを説得するための方法は易しい。発展した中国を見た家族たちは、今まで北朝鮮で受けた教育が全部虚構だったことがすぐ分かるようになる。キムさんはお母さんに、「世界で一番貧しい国が北朝鮮」と言ったが、年を取ったお母さんは頭を振った。しかしきらびやかな中国の表通りの灯りを見て、たちどころに心を翻したという。そして「中国よりもっと発展した国が韓国」という中国人たちの言葉にキムさんのお母さんは韓国行を決心した。

自由が保障された韓国に対して、初めは気経に信じることができないが、結局、自由を求めて大遠征に出る。2004年に家族 4人を同時に入韓させたアン・ギョンマン(仮名、2001年入韓)さんは、「北朝鮮にいる家族たちと連絡をしながら、控え目に説得をした。中国が食べて暮すに値するということと、南韓社会の発展をきちんと話し、南韓ビデオ、歌のテープを、代理人を通じて見られるようにした」と述べた。

家族が説得されれば、代理人を通じて北朝鮮の脱出ルートを決めて、必要とする費用を支払う。この費用がしたたかだ。一名当り少なくとも200万ウォン、 多くて1、000万ウォンを支給する。4人家族を基準にした時、最低800万ウォンで最高4、000万ウォンまで必要となる。韓国行の準備が完了すれば、普通ラオスを経て、タイを経由して入韓する。バスとタクシー、汽車に乗って長期間移動する。ラオスを脱してタイへ行くまで安心することができない、ラオスはタイと違い、北朝鮮と犯罪者引渡條約を結んでいるからだ。もし逮捕されれば、金で買収して釈放されることもあるが、運が悪いと送還されることもあるので、脱北者たちは用心に用心を重ねる。これらの移動する距離は中国-ラオス-タイまで延々6、000kmを超える。

タイを通じて入韓したイ・ミンチォル(仮名、2004年入韓)さんは、「南韓に行けるという希望で一杯であったが、北朝鮮の脱出旅程数万里が、あまりにも大変だった。しかし自由に対する念願、暮らしが良くなるという希望で切り抜けることができた」と当時の心境を語った。北朝鮮脱出の長い旅程に成功した脱北者たちは、タイの国連移民局や韓国大使館を通じて亡命を求める。

 ギム・ヨングフン記者 kyh@dailynk.com
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