松花江の被害を隠蔽、メディアは外部をミスリード

2005/11/30
更新: 2005/11/30

【大紀元日本11月30日】中国東北地方にある松花江が、発がん性の有毒物質によって汚染されたが、中国当局は民衆に対し、情報の隠蔽を2週間に渡って続けており、中国民衆と国際社会は、中国政府及び政府がコントロールしているメディアが信用できないものであることを再度痛感している。VOAが伝えた。

11月13日、中国東北地方の吉林市にある石油化学工場が爆発し、有毒物質のベンゼンが大量に松花江に流れ込み、松花江の汚染は深刻である。しかし、中国政府は、11月21日になって、ようやく、松花江が工場の爆発によって汚染された可能性があることを認め始めた。松花江沿岸の大都市・ハルピンは、水道水の供給を停止せざるを得なくなったが、当局が最初に提示した理由は水道管の検修であった。

これと同時に、市民は、重大な事故が発生していたことを噂に聞いていた。しかし、中国においては、共産党の宣伝部門が厳格な情報封鎖・検査制度を実施しており、大衆メディアは、民衆の生死に関る重要な情報を自由に報道することができない。このため、人口が400万人近いハルピン市において、様々な災害のデマが広がったが、その中にハルピンで地震が発生するというデマがあった。

このため、当局はハルピン等松花江沿岸の都市が水源汚染対策に力を尽くすと同時に、新聞の一面に「ハルピンに地震は起こらない」と掲載せざるを得なくなった。

11月25日付のニューヨークタイムズは、ハルピン発の報道で、仮に地震に関するデマが奇怪なものであったにせよ、これは中国政府が水源汚染の問題を処理する手法の悪い結果にすぎないと述べている。

鳥インフルエンザ制圧等の問題において、中国が誠実な国際社会のメンバーであることを世界に証明することに力を注いでいる時に、中国政府が松花江の汚染に対して行った対応は、明らかに「秘密にして公表せず、外部をミスリードすること」であった。

悪い情報は秘密にして公表せず

研究者らの見解によると、悪い情報を秘密にして公表しないのは、中国の終始一貫した国策である。2003年、中国政府は長期に渡ってSARSの感染状況を隠蔽し、SARSは後に中国国内の大規模な範囲で拡散するとともに、多くの国にも広がり、中国政府は、このために国際間の譴責を受けることとなった。中国政府が後に述べたのは、重大な災害に関する通報制度を改正し、中国民衆及び外部の人が、民衆の健康及び人身の安全に関する重大な情報を早く知ることができるようにすることであった。

しかし、松花江汚染の情報に関する中国政府の処理のあり方は、中国政府が悪い情報を隠蔽して報じないという一貫した手法を全く放棄していないことを明らかにしている。ワシントンポストが、26日にハルピンから報じたところによると、松花江が汚染されて12日が過ぎた後で、「中国政府は、現在政治危機及び環境危機の拡散の制止に力を注いでいる」ということであった。

25日夜にメディアは再度封鎖

ワシントンポストの報道によると、25日に中国の一部のメディアの記者は、大胆にも一連の報道を行い、関係部門の官員が、有毒化学物質が松花江を汚染した情報の隠蔽を試みたことを詳細に記述した。この中には、黒龍江省の省長が認めたこととして、ハルピン市の官員は、当初、水道水の供給問題について、民衆に対してうそをつき、真実を語らなかったが、その理由は、彼らが執政政党の上級者の指示を待っていたからである。

しかし、ワシントンポストの報道によると、その日の夜になって、中国の記者たちが語ったこととして、彼らは中共中央宣伝部の指示を受け、関係する問題を再度提起することができなくなったという。あらゆる新聞メディアは、中央の新華社の新聞原稿を使用することしかできなくなった。

関係部門は、中国の民衆に対し、彼らの生死に関る重要な情報を、長期に渡って封鎖しているが、その根拠は一体どんな法律に基づくものなのか、どの部門の指示によって封鎖を行っているのか。このことについて、中国政府と政府がコントロールする新聞メディアは、現在に到っても、中国の民衆に対して説明を行っていない。同時に、中国の主流新聞メディアは、松花江の汚染に関し、水の濾過に用いるための活性炭が寧夏からハルピンに運ばれた話、ハルピンにおいては飲料水でベンゼン中毒が発生していない話、ハルピンが日曜日の夜11時に水の供給を再開する話など、プラスの面での宣伝にむしろ大きく力を入れている。

プラス面を宣伝してマイナス面を隠蔽

プラス面を宣伝することでマイナス面の情報を隠蔽することは、中国が長期に渡って一貫して用いてきた手法である。今回、中国政府が宣伝したプラス面の情報については、中央電視台が金曜日に報道した一つのニュースがその代表と見てよいであろう。中央電視台の番組「東方時空」の報道において、「全国の人民は、ハルピンの状況に非常に関心を持っているが、我々は、ハルピン市民の生活が非常に安定しており、全体の秩序が非常に整然としているのを目にした」。

中央電視台は、更に、中国共産党ハルピン市党委書記である杜宇新の話を引用し、ハルピンの「多くの市民の心理状態は正常であり、生活は従来通りであると述べている」。 この、ハルピンの共産党高級幹部は、更に、ハルピンの一人暮らしの老人の家庭は、断水期間においても担当者のケアを受けており、「彼らは、政府の配慮を受けているので全く心配がないと語っている」と述べている。

ネットユーザは、幹部のうそが習慣化していると指摘

しかし、中国政府の新聞メディアは、命令を受けてプラス面の報道を大量に行っているが、民衆の、共産党及び実情を知る権利を剥奪されていることに対する不満を鎮めることはできないようだ。あるネットユーザは、人民の公僕と称している共産党と政府幹部は、“うそをつくことが既に習慣化している”と憤っている。また、あるネットユーザは、政府幹部は不誠実であり、腐敗分子は極めて少数であると説明していること、そしてハルピンの今回の断水についてうそをついていることは、この事実を説明している。

中国執政党である共産党及び政府は、重大な情報を再三隠蔽しており、民衆は政府を信じなくなっており、このために様々な噂やデマが伝わっている。中国衛生部は最近、噂に反論し、中国における「鳥インフルエンザの死者は数百人」の話は、全くのデマであると述べている。政府のこうした反論を信じる中国の民衆が、どれだけの割合でいるのだろうか。

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