中国の「おから工事」の実態=第12回九評セミナー開く

2007/04/23
更新: 2007/04/23

【大紀元日本4月23日】(記事更新)中国の真相を探り、中国の未来を語る第12回「九評セミナー」(主催・大紀元時報、共催・新唐人テレビ、博大書店)が4月22日、東京・駒込で開かれた。広東省建築部門の元高級幹部で建築専門家の一凡氏を講師に迎え、建築工事事故のさまざまな事例から見た「中国の知られざる建築事情」をテーマに講演が行われた。設計・施工面から入札・検査部門まで中国の建築事情を知り尽くした夏氏ならではの説得力ある資料と体験に、セミナー参加者らは中国共産党(中共)政権下における腐敗の構造を再認識するとともに、同氏の真摯な語り口からにじみ出る祖国を思う純粋な正義感に心撃たれる場面もあった。

講演する夏氏(大紀元)

夏氏は、高級技師・一級技師・監理技師の資格を持ち、広東省前汕頭保税区シニアエンジニア、建築調査設計院・構造設計技師、副院長兼シニアエンジニアなど、数々の重職を歴任し、工事建設の入札審議の専門家であり、中国の建築事情を詳しく知る立場にあった。

セミナーは新唐人テレビの建設工事事故ニュースが映像で紹介された後、夏氏が、北京五輪のために建設された北京懸索橋がわずか3カ月で倒壊した事故、温州の中国銀行ビルが建設中にもかかわらず品質に問題があったため解体爆破され約80億円の建設費用が無駄になった例など実際の写真を使いながら紹介し、建築物の倒壊事故が2000年から急増し、年々増加している実態を明らかにした。

こうした建築品質の基準を満たしていない工事を中国では「おから工事」と呼ぶ。工事の建築品質がまるで豆腐のおからのようだと形容した造語で、1990年代初めに、当時の朱鎔基首相がずさんな建築プロジェクトを批判する際に初めて使われたと言う。

日本では、建築偽装事件が社会不安をもたらしているが、中国では「建築偽装」という言葉が存在しないと言う。なぜなら、不正が横行し、偽装がほぼ当たり前になっているのが現状だからだ。夏氏は、こうした事故が増加し続ける原因を、①共産党体制下での官僚腐敗②政府(特に公安)部門の特権③マスメディア統制により社会の監視が欠如④道徳水準の低下をあげた。

設計から施工、監理・入札に至るまですべてに官僚腐敗による不正が横行、防災を監督する公安が防火意識が薄いため多くの犠牲者を出した大火災、事故を隠ぺいするために地域ぐるみで情報統制を図るなどの行政側の腐敗による災禍について詳述した。

また、品質基準を満たしていない建材を製造する業者が、中国で使用される建材の約4分の1を占める事実、また、学生イベントが行われていた会場での火災で、出席していた共産党幹部を先に避難させたため3百人近い学生が死亡した事件など、利益を優先して人間としてのあるべき姿を失った事例などをあげた。

さらに、建設分野以外の中国の問題として、①蔓延する腐敗問題②中共政権の利益優先が社会にもたらしたひずみ③貧富の格差④社会のすみに追いやられた農民の問題などをあげた。特に、夏氏の出身である河南省のエイズ村で、感染した農民らが自暴自棄になり出荷する豚肉やスイカなどの食品産物に自分たちの血を混ぜている実態を息を詰まらせながら語った。

最後に、夏氏は、中国の現状は、中共一党独裁政権の下で市場経済を展開しており多くの矛盾を抱えており、政治改革なくして将来の発展はないとしながらも、単なる法律の改正や改革では、この現状を改善することはできず、抜本的に制度を見直し、その上で道徳の再建こそが中国の生きる道であると主張した。

同氏は、建築部門の技術責任者の立場と、人間としての良識から、諸問題を本にまとめようとしていた矢先に、中国政府から迫害の対象とされ、妻子を残し、国外に脱出、現在、日本政府に難民申請中であることを明らかにした。

講演終了後の質疑応答では、中国の現状について活発に質疑が交わされ、夏氏の明快な回答に参加者らは長時間のセミナーにもかかわらず充足感を得たようだ。