中国バブル経済と解決策

2007/08/02
更新: 2007/08/02

【大紀元日本8月2日】今や日本はバブル経済の後遺症からやっと脱却する段階に到達したが、翻って今の中国を見ると、文字通り,あの頃の日本を彷彿とさせる問題が少なくない。上場企業の財務健全性も定かではないのに株式投資をする個人口座が既に一億を突破し、マンションへの不動産投資も依然過熱状態と聞く。企業の銀行借り入れが、本来の使途を外れ株式投資に向かっている例も後を絶たぬと言う記事もある。その一方で大学卒業生の半数近くが就職難と言う話もあり、民工の悲惨な話や土地を奪われた農民のニュースも後を絶たない。巷間では土皇帝と言われる地方の事業者の振る舞いが全部ではないにしても最早看過出来ないところまで来ているようだし、公害の問題も今や限界に近づいていると思われる。世銀の報告書があまりにも厳しいために世情不安を起こすとして、かなりの部分を中国当局がカットを要求したと言う情報迄ある。社会福祉や医療保険制度も共産党の中高幹部は別として農民を中心に大多数の中国人が恩恵に浴せず、その結果弱者が本能的に貯蓄に励み輸出依存型から内需喚起に向かおうにも左程機能しない状況に陥っていると思われる。要は数限りない矛盾を抱えていることになる。いわば,共産革命以来60年の負の部分が時間と共に累積し表面化しつつあると言うのが実態であろう。走資派どころか拝金主義が横行し貧富の差も深刻な社会問題化しているように見える。

本邦の場合、少なくともバブル発生の前には生活水準が戦前を遥かに上回る水準にまで成長し、一億総中産階級と自認する程度まで発展していたことも事実である。それでもバブルの後遺症を癒すにはあれほどの苦労があった。不動産や株式価格の右上がり基調を恰も永続性のあるトレンドと誤認し、土地本位制なる言葉が持て囃され幾多の悲劇を生んだのである。それでもどうにかこうにか現在まで辿り着いたというのが今日の日本の姿である。一方、中国の現状を見ると日本の苦い例を参考に早めに対策を講じる考えはあまりなかったように見える上、各種の分野で落差が目立つ。中国のバブル経済の崩壊が株式市場のみに止まればまだしも、不動産の価格までが暴落すれば、文字通り深刻な社会不安を起こすことは先ず避けられまい。そもそも世界最高の外貨準備が積み上がれば、人民幣がとめどなく国内に溢れるのは道理であり、その結果、バブルを生じているのだから是正しようにも特効薬は無かろう。硬直的な官僚主義や汚職の蔓延も度を過ぎており早急に是正すべきであるが、唐の詩人が「官倉の老鼠は大なること牛のごとく,人に倉を開かれるともまた逃げず」と嘆息した程、貪官汚吏の排除は至難の技である。不完全ながら法制度や規則も一応出来てはいるものの、肝心の運用段階で汚職が横行し機能不全に陥り、例えば建築でも朱前首相が「おから建築」と名指し、食品や薬品でも規則はあるのに匙加減で違法がまかり通ってしまうのが真相であろう。まして自浄力を失った独裁執政党が権益に固執する限り対策も中途半端なものにならざるを得まい。その結果として姑息な内憂を外患に変える一種のガス抜き等を模索しているのが実態であろう。いくら軍備を増強したところで台湾に侵攻したり、米国と事を構えると別の大問題が発生する。今や中国の貿易依存度はきわめて高く下手に外患を起こせば二次災害を招くのみか、それこそ矢が中央政権に向くリスクもあろうし貿易に支障を来たせば一番困るのは中国である。従って外患とは言っても精々反日とか靖国問題とか比較的手軽な方策を採ってきたのが真相であろう。元々実利を重んじる国柄である。異常な程、面子には拘るが、それも実利を損なわぬ範囲での話である。然しながら、そのような姑息な手段つまりcut and pasteでは対症療法の域を出ず、所詮は問題の先送りにしかなるまい。

建国以来、中国共産党の政策を瞥見すると周期的に左右に大きく揺れて来た。率直なところ中庸と言う発想はあまりなかったようだが、_deng_小平氏の南巡講話から四半世紀、一貫して右よりの政策を続けた結果、実態面では既に資本資本主義経済化し世界経済に組み込まれているのだから以前のような唯我独尊や自力更生のようなやり方、それも2次元的とでも言うか左か右かではなくより立体的つまり3次元の方策を採らざるを得まい。それが民主化であろう。あらゆる階層で党員籍を持つ貪官汚吏が増殖したのも共産党独裁制度の故である。いつまでも一党独裁に拘れば、バブル崩壊の対策も絶望的になり、それこそ悠久の歴史のなかで何度も有った内戦特に惨禍の激しかった胡漢陵轢のような事態を来たすことになりかねない。内乱や紛争で一番被害を受けるのは、中国13億の民である。バブルが崩壊してからでは遅過ぎる。騒乱や混乱を起こさない方法で早急に国務院の叡智を見せるべきであろう。遅ればせながら物権法も出来たが、当然のことながら虐げられて来た民衆の権利意識も触発し騒乱も一向に後を絶たなくなっているのも正しく事態の緊急性を告げていると理解すべきである。国務院が提唱する和諧社会の意図するところが真の良き中国を作ることにあるのなら共産党独裁の強圧政治から親民政策に転換し、抽象論や建前論を放棄し、本来の民主主義による法治国家を目指すべきであろう。共産党独裁と13億の国民と何れに重きを置くのか青史に残る英断を期待したいものである。それがバブル経済をソフトランディングさせる最も確実且つ安全な方策であろう。強引な手法を濫用すれば社会が混乱し、それこそ大躍進や文化大革命の二の舞になることは目に見えている。民主化してこそ中国共産党にも生き残るチャンスがある。古人曰く「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と。

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