日米演習 中国外務省、中国けん制への言及回避 専門家「冷戦前の情勢」

2010/12/05
更新: 2010/12/05

【大紀元日本12月5日】日本の自衛隊と米軍は12月3日から、共同軍事演習「キーンソード(鋭い剣)」を実施した。日本の防衛省によると、自衛隊員3万4千人と米軍兵士1万人余りが参加。米韓共同軍事演習を先日終えたばかりの米原子力空母「ジョージ・ワシントン」を含め、艦艇60隻、航空機400機が投入される。演習は日本各地の自衛隊基地や周辺海域で行われ、その規模は先日の米韓共同軍事演習の6倍で、戦後最大となる。

これまで日米共同軍事演習への参加を避けてきた韓国も、オブサーバーとして参加している。朝鮮半島の情勢を意識して、日米韓の連携を強化する狙いがあるとみられる。

8日間の日程で沖縄東方や四国南方、九州西方の海域などで展開する同演習は、北朝鮮の脅威の抑止に加えて、海洋権益を強硬に主張し、東シナ海や南シナ海で軍事活動を活発化させる中国をけん制する狙いがあると日本国内のメディアが報道している。

一方、今回の日米共同演習に対し、中国外務省は従来のような強硬な態度を見せていない。中国国営の新華社の報道によると、中国外務省による2日の定例記者会見で、記者から日米演習に尖閣諸島周辺の海域も含まれていることについての感想を聞かれた姜瑜・報道官は、「朝鮮半島問題の唯一の解決方法は対話であり、武力の誇示は問題解決にならない」と述べて、今回の日米演習の標的は朝鮮半島問題であるような発言をした。また姜報道官は「釣魚島(尖閣諸島)の問題において、我々の立場は明確で一貫している。関連国間の軍事同盟は、中国を含む第三国の利益を損なってはならない」と述べるに止め、中国国内では数カ月前からすでに同軍事演習は尖閣諸島を標的としたもので中国を仮想敵国としていると報道されていたものの、同会見では中国けん制狙いに対する言及を避けた形となった。

更に、中国外務省のホームページに掲載されている同記者会見についての発表では、質問や答えに入っていた「釣魚島」の文字は削除されている。

新華社も、今回の演習に関する報道では、「特定の国を対象としていない」という日本の北沢俊美防衛相のコメントを強調し、日本メディアに報道された「中国けん制狙い」などについては全く報道していない。演習がおこなわれる海域について、尖閣諸島に関する言及も避けている。

一方、中国共産党機関紙「人民日報」系列の「環球網」は、今回の演習は「中国を仮想敵」とし、「釣魚島を標的」にしていると明確に報道。3日には「独善的な米国、手当たり次第に中国を懲らしめる」と題する記事を掲載して、「(米国は)いらいらしている母親のように、毎日どうやって中国を懲らしめるかをばかり考えている」と米の対中政策を批判した。

中国の政府系メディアの論調に温度差が見られるほか、ネットユーザーの反応にも9月の中国漁船衝突事件の際に見られたような激しい反日感情は表れておらず、むしろ、政府の弱腰外交に対する批判の言葉が多くなっている。

中国国内の人気掲示板MOPに掲載された今回の軍事演習の報道に対して、「米国が侵略してきたら門を開け、米兵を案内してあげよう」「八カ国連合軍が北京に迫ってきたら、私はようこそ北京へと歓迎の歌を歌ってあげる」などと皮肉った発言が多く見られる一方、「CCP(中国共産党の略称)を打倒して人民が国の主人公となる」と中国共産党批判の発言さえ見られる。

一方、中国国内の国際情勢専門家は、今回の日米共同軍事演習に韓国のオブザーバーが参加している点に注目。領土問題による摩擦で今まで軍事面において手を結ぶことのなかった日韓両国だが、今回の両国関係の接近により、東アジアの情勢は自由主義と共産主義が対峙した冷戦時代に戻ったようだ、と見ている。中国国際関係学院の楊伯江教授は、「日米韓の関係が強化されつつあるこの情勢を憂慮すべきだ」と国内メディアのインタビューで述べた。

(翻訳編集・日本語ウェブ報道チーム)
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