ドイツ「中国の土地買占めが原因」中国当局は否定=東アフリカ干ばつ

2011/08/04
更新: 2011/08/04

【大紀元日本8月4日】ソマリアエチオピアケニヤなどアフリカ大陸北東部の国では、過去60年間で最悪の干ばつに見舞われ、少なくとも1200万人が飢餓の危険に晒されている。この被害について、ドイツのアフリカ政調担当は、中国企業による大規模な土地買収が起因していると指摘した。中国当局は「全く根拠がない」などと反発している。

ドイツのアフリカ地区政調担当ギュンター・ヌーク氏は7月29日、地元紙フランクフルター・ルントシャウに対して、アフリカの深刻な干ばつは「人災だ」と述べ、また中国が、同国への輸出目的の大規模な耕地の買占めを行っているため、アフリカ現地の小さな農家は生計が立てられず、社会的紛争を生んでいる、と指摘した。また外国企業による土地の買占めは、アフリカの特定の権威者にのみ利を集中させ、人道的被害をもたらしているという。

これについて中国外交部(外務省に相当)は同日、「中国は海外の土地を大量購入する計画を立てたことはなく、またアフリカの土地を大量に買ったこともない」とAFP通信の取材に対して、書面でヌーク氏の指摘を否定した。

中国政府の主張によれば、中国は農業教育のためにアフリカで10つの農業デモンストレーション・センターを建設し、約1000人もの専門家や技術者を送ったとして、それは現地で「温かく歓迎されている」という。

また、「全く根拠がない上、下心から生じたものだ」などと逆にヌーク氏を非難した。同じ日、外交部は東アフリカ地区へ緊急食糧支援として9000万元(約10億8000万円)を送ると発表した。

 回答に矛盾 2007年からスタートした海外農業計画

「海外の土地を大量購入する計画はない」という今回の当局の回答には疑問が残る。なぜなら、北京の週刊経済紙「中国観察報」は2008年6月、「中国の海外農業計画の希望と試練」と題した記事で、中国当局が食糧安全保障に向けて、海外の土地を買収・賃借を予定していると報じているからだ。

その記事には、「農業部(農林水産省に相当)が、中国国内の企業に海外の土地を買収・賃借を奨励するような法案を立案した」とあり、さらに5つの主要な中国国営の農業企業には、投資先として、アフリカ、中央アジア、東南アジア、ロシア、南アメリカの5地域を指定したという。

前述の外交部の発表にもあるように、中国は実際に、スーダンの農業開発のために農業デモンストレーション・センターを建設し、農業専門家を派遣している。これはスーダンのタハ副大統領が2008年6月、北京を訪問した際、中国と農業協力協定を結んだ結果だ。

このプロジェクトについて、2007年にスーダンを訪問した胡錦濤中国国家主席から最初に提案されたものだ、とタハ氏は発言している。

同紙の取材によると、2007年の胡主席のアフリカ訪問直後、海外農業計画に向けた調査を行うよう、農業部は指示されたという。これに関する予備草案が2008年、国務院に提出された。

また記事は内部の情報筋の話にとして、海外農業の方針は3つの原則に基づくと伝えている。

第1に、農業地である国と中国は良好な関係であり、資源が豊かで、農業従事者の人口がいて、政治的に安定していなければならないこと。第2に、経験と資金、人材が豊富な大企業の海外投資が奨励されること。第3は、現地で立ち上げた農業企業は、中国の資源と経験が組み込まれなければならないことだ。

さらにこの情報筋によると、海外農業の主要な作物は、大豆など食用油が製造できる穀物になるという。2008年、中国は大規模な大豆農園を育てるために、ブラジル政府と土地売買について交渉していた。中国は世界最大の大豆の輸入国だ。

また、中国水利電力対外会社はジンバブエで10万ヘクタールの農地を賃借しており、生産する農産物はすべて中国に輸出している、と6月27日付のVOAの記事は指摘している。さらに、2010年8月の読売新聞では、中国はスーダンなどから計約200万ヘクタールの農地を借り上げており、「アフリカでの農地確保を着々と進めている」とも報じられている。

 中国の食糧安全保障

2007年の中国穀物部門全国協会の調査によると、国内の大豆の年間取引量は7500万トンで、うち4600万トンが輸入によるものだ。同会孫副会長は、大豆の自給自足を図るためには、あと1330万ヘクタールの農地が必要だと発表している。

中国の食料安全保障について多くの専門家は、遠くない将来、中国は食料の需要供給バランスを失うと考えている。北京東方アグリコンサルタント(BOABC)のアナリストは、約6年~8年で食物供給が中国では非常に難しい状況になる、と予測している。また、中国農業科学院の研究員は中国観察報の取材に対し、「中国の土地資源と人口は不釣合いである」とし、「食糧安全保障を確実なものにするために、海外投資のほか手段はない」と話している。

重慶地方局が農民へ、アフリカへの大規模な移住を促していたことも当時の報道により明らかになっている。

2007年9月、南華早報の取材に対して中国輸出入銀行の李若谷総裁は、「重慶は、農業において豊富な大量生産の経験がある。アフリカには多くの土地があるが、食糧生産での利用は満足なものとはいえない。重慶からの『労働力輸出』は今始まったばかりだが、我々がひとたび、重慶の農民たちに『海外で地主になれる』と説得すれば、彼らは飛んでいくだろう」と述べている。

英国シンクタンク「国際環境開発研究所」ら複数の機関の合同調査によると、2009年までには既に100万人の中国人が農業従事のためにアフリカに移住したという。

冒頭でギュンター・ヌーク氏が指摘した、中国によるアフリカの土地の大規模買占めに関する当局側の過去の公式発表はないものの、2007年の胡主席のアフリカ訪問から、中国食糧安全保障を目的とした農業に関する海外での動きが活発になっていったことが伺える。

今年2月の新華社の報道によると、中国では対アフリカ投資が「ブームになっている」とし、2009年末までに、中国はアフリカの49カ国に対して総額90億ドル(約7200億円)の直接投資を行ったという。

(翻訳編集・佐渡 道世)
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