「非核化」は「核廃棄」にすべき 北朝鮮の言葉戦術に注意=韓国研究

2018/04/20
更新: 2018/04/20

韓国保守系のシンクタンクは最近、南北会談および初となる米朝会談を控え、金正恩政権の「非核化は先代からの遺訓」との巧みな言葉の罠にはまらないように、と警戒を呼び掛けた。

韓国シンクタンク「峨山(アサン)政策研究所」のチョン・ソンフン研究員は3月30日に発表した文書で、北朝鮮のいう「非核化」は、根本的に米側の勢力を朝鮮半島から取り除くことであり、駐韓米軍の撤収と米韓同盟の崩壊であると指摘した。

チョン氏は、北朝鮮の非核化への歩みに関する一編の分析文を掲載。そのなかで、4月27日に予定された南北会談までに、北朝鮮の「非核化」定義で混乱しないために、今まで米国の前政府が主張した「非核化(Denuclearization)」から、トランプ大統領の唱える「完全で、不可逆的な、検証可能な核廃棄」(Complete、Irreversible、and Verifiable Dismantlement:CIVD)に意味を置き変えなければならないとした。

北朝鮮の「非核地帯化」に対抗するために作った米韓の「非核化」

冷戦期の1950年代、北朝鮮は旧ソ連を牽制するために米国の核戦術が及ぶ頃から、朝鮮半島の非核地帯化を主張し始めた。1980年には金日成・前国家主席が第6次党大会で、正式に言及した。

以後、1991年には第4次南北閣僚級会談で、北朝鮮は、在韓米軍の撤退、アメリカの核の傘破棄など、米韓同盟の崩壊に焦点を当てた「朝鮮半島の非核地帯化に関する宣言(初案)を発表した。

当時の韓国の盧泰愚(ノ・テウ)政府はこれに反論し、核兵器開発の無条件停止と国際査察団の受け入れを求めた。同年11月8日には、韓国政府が在韓米軍、核の傘の保護と米航空機、艦船の着陸・通過の許可を含む「朝鮮半島の非核化と平和政策に関する宣言」を発表した。

チョン氏は、「非核化」という言葉がここで公式の場に初めて現れたと述べる。

北朝鮮の緻密な言葉戦略、「北朝鮮の非核化」を「朝鮮半島の非核地帯化」にすり替える

 

チョン氏はまた、北朝鮮は、「朝鮮半島の非核地帯化」の論理を、米韓などが挙げる「北朝鮮の非核化」にすり替えていると指摘する。

 1991年ソ連崩壊による冷戦終息に大きな脅威を感じた金日成は、同年12月31日、既存の非核地帯化の主張を撤回し、南北の核開発放棄を規定した「非核化共同宣言」に合意した。

経済難から抜け出すために、対日外交、対米関係の改善を進め、核開発放棄のイメージを築き上げた。

しかし1992年、第1次南北核統制共同委員会の会議で、北朝鮮は非核化の条件として、外国軍隊の核兵器貯蔵・配置禁止、核の傘の中断など、過去の合意時に撤回した「朝鮮半島の非核地帯化」の立場を再度、主張した。

チョン氏によると、これは米韓による「北朝鮮の非核化」を、北朝鮮が逆手にとって、米勢力を半島から退ける「朝鮮半島の非核地帯化」理論にすり替えたという。

「金日成は『非核化』の用語を悪用して国際社会を欺き、(金体制維持のため)核開発の資金と時間を稼いだ」とチョン氏は指摘する。

先代も使ってきた「先代の遺訓」、継承される言葉のあや

また、最近北朝鮮が使用している「体制脅威の解消」「体制保障」「米国の敵対政策清算」なども、その根は米韓同盟崩壊を目指す非核地帯化に置いていると分析する。

今年の3月6日、南北特使団代表の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長はブリーフィングで金正恩が「非核化の目標は、先代の遺訓だ」と発言したことに注目し、世論の関心を向けた。

しかし、チョン氏の分析から、北朝鮮が主張したのは非核地帯化であって、核廃棄を意味しない。

実際に金正日前朝鮮労働党委員長は、2005年の韓国特使議論、2007年の南北首脳会談、2009年の中国・温家宝首相との会談などで、繰り返して「非核化が金日成主席の遺訓」と発言してきた。

このような発言にもかかわらず、金正日は2006年、2009年に核実験を強行してきた事実がある。

同様に、金正恩が主張する「先代の遺訓」にも矛盾が存在する。2011年に政権を握った正恩氏は、2012年の北朝鮮・改正憲法に核保有国であることを明示、2018年新年挨拶では核兵器完成に対して「将軍様と偉大な首領様の念願」と表現した。

チョン氏は、このたび初となる米朝会談で、悪用された非核化という言葉を捨て、核廃棄に変えるべきだと主張する。

トランプ米政権は非核化について「朝鮮半島の核不拡散モデルにしようとした、既存の米国政府の政策失敗」と数回指摘し、核廃棄しない以上、妥協のない強硬な態度を見せている。

チョン氏は「南北首脳会談を目前に控え、冷徹に、北朝鮮の言語戦術を見なければならない」と分析文章をしめくくった。

(翻訳編集・齊潤)

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