アングル:米ミレニアル世代、金銭的節目では「親の助言」重視

2018/05/08
更新: 2018/05/08

Andrea Januta

[25日 ロイター] – アマンダ・ファリスさんは13歳のころ、父親からATMカードをもらった。父親はそれを現金のように扱いなさいと彼女に言い、お小遣いや雑用で稼いだおカネの使い方を教えてくれた。

現在25歳のファリスさんと彼女の夫は、金銭的に完全に自立している。だが、米ミズーリ州の弁護士協会でブランディングとマーケティングの仕事をしているファリスさんは、今でも父親にアドバイスを求めている。1年前に初めて家を購入したときも、父親は事細かにアドバイスした。

1980─2000年に生まれた人と定義されることの多いミレニアル世代が、不動産購入や転職といった金銭的な岐路に立ったとき、彼らの決断を左右するのは、親からのアドバイスだ。いわゆる「デジタル世代」であるにもかかわらず、同世代の多くが、インターネット上の情報よりも親や年配者に頼り続けている。

インスタモーターによる昨年の米国調査によると、ミレニアル世代の78.5%が、親から金銭的アドバイスを受けていると回答。また、賢明な金銭的決断をする上で、親から十分なアドバイスを受けていると感じている人は半数以上に上った。

ファリスさんはさまざまな情報を歓迎する一方、両親からのアドバイスには「信頼」という特別な利点があると語る。「特に2人は、私のことをいつも心から一番に思ってくれている」

<教える良い機会>

親が金銭的アドバイスを与える最善の方法とは何だろうか──。

「説教を垂れるのではなく、その話題について会話する機会を見つけること」だと、PNCインベストメンツのリッチ・ラマシーニ上級副社長は言う。金融業界における長年のキャリアに加え、ラマシーニ氏にはミレニアル世代の息子との実体験がある。

複利など多くの金融原則は世代を超えて適用可能だ。「現在でも、それは真実であり続ける永遠の真理だ。投資に関して言えば、時間が最大の友となる」とラマシーニ氏は話す。

同時に、ミレニアル世代と他世代との違いを同氏は指摘する。

ラマシーニ氏が数十年前に金融業界で働き始めたころ、フィナンシャルアドバイザーの元を訪れなければ、情報を一切得ることができなかった。しかし現在、ネット上でのデータやアドバイスの拡散によって、情報過多という真逆の問題が発生している。「人々はそうした情報を知識とするのに苦労している」と同氏は語った。

金融アプリなどのテクノロジーも、貯蓄や投資に新たな道を開いたとラマシーニ氏は付け加えた。

<世代間ギャップ>

大量のテクノロジーやデータのほか、ミレニアル世代は自分たちより先のベビーブーマー世代と比べ、さまざまな経済的課題を抱えている。

親世代と比較して、ミレニアル世代は、融資基準の厳格化や住宅価格の上昇、所得流動性の低下に直面していると、昨年のクレディ・スイスの調査は示している。

さらに、米国では現在、学生ローン残高は1兆ドル(約109兆円)を超えている。

このような懸念は、ミレニアル世代がアドバイスを求めるテーマに反映されている。前出したインスタモーターの調査によると、もっともよくあるテーマは「貯蓄」に関してで、72%が親と話し合ったことがあると回答。2番目に多かったのは「予算の立て方」で59%だった。また、半数が「借金」について親と協議したことがあると答えた。

投資に社会的・環境的目標を設定するミレニアル世代は、投資家全体の約2倍だと、サステナブル投資研究所による昨年の報告書は指摘している。

<役立つ関係>

 

親からアドバイスを受けられない場合は、経験豊富な助言者がその穴を埋めてくれる。

米ロサンゼルスの介護士、タラ・ラップさんは母親とおカネについて話したりはしない。父親は他界している。

最も役立つアドバイスは、自身が通う教会や義理の両親からもたらされている。21歳になる前、教会で知り合った年上の友人が親身になって予算の立て方の相談にのってくれた。義理の父親は彼女が初めて車を買うとき、交渉の仕方や高金利を避けるようアドバイスしてくれた。

ケイティ・ネイロンさん(27)は、両親とおカネについて話すことに関して「かなりざっくばらん」だと話す。ただ、会話はたいてい、一方的だという。自身の給料や投資習慣を明らかにする一方、ネイロンさんは親の家計については尋ねない。

ゴルフ業界でマーケティング・アドミニストレーターの仕事をするネイロンさんは、金銭面や転職のアドバイスを求める以外に、消費に関するもっと哲学的なアドバイスを父親に求めることもあるという。例えば、幸福の最低水準を維持する方法、具体的には、昇進や昇給が進むにつれ高まる欲求や期待をどう抑えられるか、といったことだ。

おもてなしを大切にする「ごく小さな山間の町」である米コロラド州ドゥランゴで働くことは、ほぼ毎週末にスキーを楽しめるライフスタイルを意味する。だが同時にそれは、他の場所でもっと稼げるかもしれないキャリアの道をあきらめなくてはならないことも意味している。

ネイロンさんと父親は、幸福と金銭的成功のバランスについて、よく話し合うという。「私たちは、おカネよりライフスタイルを優先するときもあるとの結論に至った。それはまさに私がしていることだ」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Reuters
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