アングル:少子高齢化が進む宮城のコメ農家、ドローンが救うか

2018/08/29
更新: 2018/08/29

Yuka Obayashi

[登米(宮城県) 23日 ロイター] – 少子高齢化が進む日本の農村地帯で次世代の担い手となるのは、ドローンかもしれない──。

この数カ月、宮城県登米市の農業協同組合と住友商事<8053.T>などは、水田の上空を旋回し、高齢な農業者の代わりに骨の折れる作業を短時間で行ってくれる新型の農業用ドローン「ナイルT18」の導入試験を行っている。

「かつてない先端技術」だと、同市のコメ農家でみやぎ登米農協の榊原勇・代表理事組合長(69)は話す。登米市を中心とする地域は1600年代から東京にコメを供給している。

この新しい農業用ドローンは、若者が都市部に移住したことなどで後継者不足に直面する地方の農家に、ハイテクを駆使した支援を提供するのが狙いだ。

「地域農業で担い手が不足する中で、先端技術の導入により、農業生産の効率化、農家所得の向上が図れるような新しい取り組みを、(ナイルワークス、住友商事の)技術を活用して、どういう形で提案できるかが、近々の課題であり農協の使命だ」と、榊原氏は語る。

ドローンは水田約1ヘクタールに農薬や肥料を約15分で散布することが可能。人間なら重いタンクを運びながら1時間以上は要する作業だ。

同ドローンはスタートアップ企業のナイルワークスが開発した。JAみやぎ登米と住友商事の協力を得て、導入試験を今年開始した。

長年、少子高齢化や過疎化と闘ってきた農村部における、肉体的負担の緩和と生産性の向上を目指している。

登米では、農業従事者の平均年齢は67─68歳で、あと4─5年で現役を退かざるを得ない農家も多い、と榊原氏は話す。

身体が先に壊れるか、トラクターが先に壊れるかだ、と同氏は付け加えた。

農業用の散布器が装備された無線操縦のミニヘリコプターは、価格が約1500万円もするのに比べ、このドローンは約400万円と安く、小型だ。

ナイルワークスは、ライセンスなしで同ドローンの飛行が許可されるよう当局と交渉している。タブレット端末での操縦が可能で、衛星利用測位システム(GPS)などを使って水田の位置を一度確定すれば簡単に操作できる。

最終的な目標は稲作農業のコストを現在の4分の1にまで削減することだと、ナイルワークスの柳下洋・代表取締役社長は記者団に語った。

ドローンは稲穂1株当たりの生育状態を診断し、どの程度の農薬や肥料がどこに必要かを瞬時に判断するため、薬剤の投入量を最低限に抑えることができる。また。生育データの取得により、収穫量を試算する上でも助けとなる。

ナイルワークスは来年5月にドローンの発売を開始する計画で、初年度の販売目標は100基。5年以内には4000基の販売を目指しており、稲作を行うアジアなど海外での展開も視野に入れる。

三菱商事<8058.T>と日立製作所<6501.T>が共同出資で設立したスカイマティクスのような他のドローンメーカーも農業向けサービスを提供している。

登米市の農地所有適格法人・株式会社たいらの専務取締役を務める千葉翔太氏(29)は、最新技術やデータの導入により農業の現代化が進めば、若者の関心が高まる可能性があると言う。

「農業はきつい、汚いなどのイメージが今も強いが、機械化などにより悪条件は変わってきている」と千葉氏。「自分は農業が好きで楽しんでやっている。ドローンにより重労働が軽減し、楽しい農業のイメージが広がれば、若い人が入ってくるのではないか」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

 8月23日、少子高齢化が進む日本の農村地帯で次世代の担い手となるのは、ドローンかもしれない。写真は、試験飛行するナイルワークス社製の農業用ドローン。宮城県登米市で20日撮影(2018年 ロイター/Yuka Obayashi)
Reuters
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