米シンクタンク報告、米軍の投資強化の必要性を強調「強いパワーの維持は敵の好戦的行動を抑える」

2020/11/19
更新: 2020/11/19

​米国のシンクタンクヘリテージ財団(Heritage Foundation)は11月17日に発表した年次の軍事報告書『2021年米国軍事力指数』で、米国の財政や同盟国関係の状況から、米軍は重要な国益を守るためにかろうじて条件を満たしている状態だと指摘。このため、米国と同盟国の平和維持のためには、安定的な投資が必要だと主張した。

​報告書は、過去1年間で米国の国益に対する挑戦となった脅威はロシア、中国、イラン、北朝鮮、中東のテロ組織だと取り上げた。財団は、最も包括的な脅威は、軍事の近代化と拡張を続けている中国で、ネットワークや人工知能の能力には注視するべきだとしている。

​中国軍は引き続き周辺地域の外へ勢力範囲と軍事活動を拡大しており、より大規模で全面的な訓練を行っている。​報告書は、中国の行為を「侵略的である」(aggressive)と認定。増加しつつある能力を「恐るべき」(formidable)と位置付けている。

​米国は、自国防衛と海外での利益を守るために敵を押しのける「ハード・パワー」を維持する必要があると定義する。その上で、軍事力を測る基準には能力や装備が必要だが、現状では米軍は5段階の3にあり「かろうじて重要な国益を維持している状態」だという。また、力の競争に対応する軍の近代化や施設配備の遅れ、パイロット不足、艦艇の老朽化などは、能力の弱体化を招いているとした。

報告書は、​​現在の米国の軍事力は、単一の大規模な地域紛争に対応しうるが、同時に2つの大規模な地域での突発事態には対処する能力が不十分だとした。

米​下院軍事委員会委員長である共和党のマック・ソーンベリー(Mac Thornberry)氏はヘリテージ財団の報告書発表会で、米国の軍事発展のためには、安定的で信頼できる資金を提供し続けなければならないと述べた。​

​同財団のトーマス・スペアー(Thomas Spoehr)国防政策研究センター所長と、年次報告書の編集者である同財団のダコタ・ウッド(Dakota Wood)国防担当上級研究員は声明で、「​即応性重視の現在の作戦に適切な資源が振り分けられ、即応性レベルが維持されているが、10~20年の研究プログラムのために投資を行うには、困難な状況にある」と改めて強調した。

​さらに「われわれは、武力が使われないことを望んでいるが、歴史がはっきりと証明しているように、われわれの軍隊が強大であるとき、敵は米国やその同盟国に対して交戦行動を取る可能性は低い。今日、強大な軍隊に投資することは、今後数年の平和への道を開くことである」と主張した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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