大紀元時報

発展途上国の食料安保 中国の遠洋漁船団で脅かされる

2021年02月26日 13時21分
2018年、浙江省の人工湖である千島湖で魚を引き上げる漁師たち、参考写真(JOHANNES EISELE/AFP via Getty Images)
2018年、浙江省の人工湖である千島湖で魚を引き上げる漁師たち、参考写真(JOHANNES EISELE/AFP via Getty Images)

昨年発表された一連の報告書によると、漁業の持続可能性を破壊するほどのIUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)を行う中国の遠洋漁船団により、開発途上国では数十億米ドルに及ぶ収入損失が継続的に発生している。また 、合法的な漁業者や地域社会の食料安保が脅威にさらされている。 

国際的な独立系シンクタンクである英国海外開発研究所(ODI)が発表では、自国海域における漁業資源のほとんどを使い果たした中国は、前回の記録の5倍から8倍に当たる1万7000隻近くの船舶を擁する世界最大の遠洋漁船団を構成している。

ビッグデータ分析、アルゴリズム、地理情報システムを使用して実施された調査の結果を2020年6月に英国海外開発研究所がまとめて発表した報告書「China’s distant-water fishing fleet: scale, impact and governance(仮訳:中国の遠洋漁船団:規模、影響、統治)」によると、世界のIUU漁業への関与が疑われる船舶または確認された船舶の58%以上を中国漁船が占めている。

違反船舶には中国最大級の国営遠洋漁業会社の一部が所有する船舶や外国の旗を掲げた100隻超の中国所有船舶が含まれる。しかも、同報告書には「IUU漁業に関与している中国船舶数は実際にはもっと多いと考えられる」と記されている。

2020年に非営利団体「グローバル・フィッシング・ウォッチ(GWF/Global Fishing Watch)」のジェユン・パーク(Jaeyoon Park)上級データサイエンティストが主導した別の調査によると、北朝鮮海域で違法に漁業を操業した中国籍漁船は2017年には900隻超、2018年には700隻超に上っている。同調査は衛星画像に基づいている。

 学術誌「サイエンス・アドバンシス」誌によると、中国漁船によるスルメイカの推定水揚量は、合法的な日韓の合計水揚量に匹敵する16万4000メートルトンと試算されており、漁獲高は440億円(4億4000万米ドル)以上に上ると考えられている。パーク上級データサイエンティストが率いた調査では、ロシア海域でほとんど違法に漁業を操業している北朝鮮の小型船も約3000隻確認されている。

国際海洋安全保障センター(CIMSEC/Center for International Maritime Security)のウェブサイトが報じたところでは、また別の調査では、エクアドル領ガラパゴス諸島近辺で操業する中国漁船の増加に焦点が当てられている。予測海事情報プラットフォーム「ウィンドワード(Windward)」のデータ分析と洞察に基づいて判断した研究者等の見解によると、中国漁船による世界的な漁業の増加は同国の「全国遠洋漁業発展計画」が要因となっている。

研究者等が発表では、南米地域でも未だに課題が発生している。コンサルティング会社「中国海洋研究所(China Ocean Institute)」の創設者兼最高経営責任者(CEO)のタビサ・グレース・マロリー(Tabitha Grace Mallory)博士と海事法・安保の専門家であるイアン・ラルビー(Ian Ralby)博士が共著して国際海洋安全保障センターに発表した論文には、「漁船団の大部分は合法的に操業しているように見えるが、一部の行動からそれが違法漁業であることが分かる。しかも、技術面でも現行の法律や規制に準拠しているように見えるが、一部の中国船舶の活動は違法・無報告漁業に分類される。漁業の持続可能性の観点から、こうした操業を慎重に検討する必要がある」と記されている。

専門家等によると、世界的に乱獲を行っているのは中国漁船団だけではない。国際社会は遠洋漁船団とIUU漁業への関与を監視する良好な体制を確立する必要があると、専門家等は警告している。パーク上級データサイエンティスト率いる調査報告書では、特に多くの発展途上諸国の政府は遠洋漁船団の監視状況を改善する必要があると警鐘を鳴らしており、「今回の調査報告書が遠洋漁業の独立系監視機関の情報把握に貢献し、漁業監視に人工衛星を利用する新時代の幕開けに繋がれば幸いである」と記されている。

英国海外開発研究所の報告書は、「世界的な漁業危機がすべて中国のせいではない」にしても、同国の漁船団の規模と世界的な操業状態を考慮すれば、「中国が最も大きな要因である」と結論付けている。

また、同報告書には、「この状況により特に懸念される漁船団の運用に対する透明性と管理の水準が低下する。乱獲・IUU漁業対策と世界の漁業資源の劣化防止を目指すには、こうした漁船団の管理状況の改善が取り組みの中核となる」と記されている。

米インド太平洋軍(USINDOPACOM)隷下の西部麻薬取締任務部隊(JIATF-W)に属するベン・クロウェル(Ben Crowell)中佐とダニエル・K・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究所のウェイド・ターボルド教授の共著「Hindsight, Insight, Foresight: Thinking about Security in the Indo-Pacific(仮訳:後知恵、洞察、先見性:インド太平洋地域の安保に関する考察)」には、「IUU漁業は単なる環境犯罪ではない。これは世界的な戦略的課題であり、国際社会が協調的かつ戦略的に対処する必要がある」と記されている。

また、同書籍は、「企業、船舶、所有者、運営者は時には国の後援を受け、本質的に国際犯罪組織として機能している。これにより世界の海洋における生態系の健全性、経済的安保、食料安保だけでなく、全体的な海上安保に大きな悪影響がもたらされる」と警告を発している。

さらに、「IUU漁業に関与する漁船や国の行動を阻害する必要がある。IUU漁業に関与することで国、所有者、運営者に発生する費用がそのメリットよりも高くならない限り、公海全域でこうした犯罪行為が継続される」とも記されている。 

(Indo-Pacific Defense Forum)

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