大紀元時報
【デジタル通貨】

急ピッチで進むデジタル人民元導入 中国の権威主義はますます強まる

2021年03月20日 09時11分
3月8日、上海市で行われたデジタル人民元の試行試験の様子(Photo by STR / AFP) / China OUT (Photo by STR/AFP via Getty Images)
3月8日、上海市で行われたデジタル人民元の試行試験の様子(Photo by STR / AFP) / China OUT (Photo by STR/AFP via Getty Images)

3月8日、国際女性デーに合わせて、上海市の繁華街や百貨店でデジタル人民元の実証試験が行われた。中国の中央銀行・中国人民銀行は数年前よりデジタル通貨である「デジタル人民元」の導入を進めており、普及させれば主要国で初となる。いっぽう、強権的な政府が国民の財布の中身まで管理しうる点で、中国共産党による統制がさらに強化される懸念がある。

中国は政府主導で中央銀行発行のデジタル通貨が進む

中央銀行が発行するデジタル通貨は「中央銀行デジタル通貨(CBDC、Central Bank Digital Currency)」と呼ばれている。日本銀行によると、CBDCは中央銀行の債務として発行される法定通貨建てのデジタル通貨である。市中金融機関への影響等の問題から、日本を含む世界の主要国は導入に慎重だ。

いっぽう、「アリペイ」や「WeChat Pay」といったキャッシュレス決済が急速に普及した中国では、政府主導で人民元のデジタル化が推進されている。中央銀行である中国人民銀行が発行する「デジタル通貨電子決済(DCEP、Digital Currency Electronic Payment)」、すなわちデジタル人民元のパイロットテストは、中国の主要都市で行われている。市民に抽選でデジタル人民元を配布し、買い物で使用させるというものだ。これまで同行は1億元以上のデジタル人民元を配布した。2022年に開催される北京冬季オリンピックでは、さらに多くのデジタル人民元プログラムが計画されており、普及を着実に進めている。

中国人民銀行デジタル貨幣研究所の元所長である姚前氏は「中国法定デジタル貨幣原型構想」と題する文章の中で、デジタル人民元を「一つの貨幣、二つの保管庫、三つのセンター」と形容した。「一つの貨幣」はすなわちデジタル貨幣(デジタル人民元)、「二つの保管庫」はデジタル貨幣発行庫およびデジタル貨幣銀行庫、そして「三つのセンター」とは認証センター、記録センター、ビッグデータ分析センターのことだ。

デジタル人民元の運用の仕組図(大紀元)

デジタル人民元で強まる権威主義

デジタル人民元は中国人民銀行によって一元的に管理されている。さらに、デジタル人民元は共産党政権の中国政府が管理し、マネーロンダリングや汚職、そして国内での「テロ」の資金調達を排除する名目で、政府が監視を行うこともある。このため、デジタル人民元を通じて、政権による国民の統制がこれまで以上に強化される可能性がある。

世界初の社会主義国である旧ソ連では計画経済を導入したものの、国の財源の要となる国民の消費活動を正確に把握することはできなかった。21世紀に入り、デジタル化の波に乗り内外に力の膨張を続ける中国共産党は、旧ソ連が成し得なかった、国民の靴修理事情まで国家が把握する仕組みを完成させようとしている。

「ネット上で政府にとって好ましくない言論を発表したり、政府が望まない行動をとったりすると、中共が中央銀行を通して直接貯金を差し押さえることができるかもしれない。これでは一種の政治弾圧もしくは経済的な略奪になる」時事評論家の唐浩氏は、中国共産党が管理するデジタル通貨の危うさを指摘する。

米国のシンクタンクも同様の懸念を示している。新アメリカ安全保障センター(CNAS)は1月27日にデジタル人民元に関する報告書を発表、中国のCBDCシステムの内容とその問題について論じた。

「中国政府がデジタル通貨/電子決済(DCEP)と呼んでいるこのCBDCシステムにより、中国共産党はデジタル権威主義を国内で強化し、その影響力と基準設定を海外に輸出できるようになるだろう」と報告書は書いている。さらに、中国当局がデジタル人民元の取引から収集された情報を「社会信用システム」と組み合わせることで、一部の国民に懲罰を与えることも考えられるとした。

デジタル人民元のプライバシーリスク

デジタル決済は世界中で取引されているが、各国政府がその利用データを取得するためには、金融機関を経由する必要があり、一定のプライバシーは確保されている。いっぽう、デジタル人民元は中央銀行が直接発行し、管理するものであるため、プライバシー面が保護されないリスクがある。

前出のCNAS報告書によると、中国人民銀行が発行するデジタル人民元は「制御可能な匿名性」を持っている。つまり、中国人民銀行は、取引当事者間のプライバシーを維持しつつも、行われたすべての取引を監視することが可能になる。この作業を行うのがビッグデータ分析センターだ。

報告書は、世界の中央銀行や金融機関はこれほど詳細に日常の取引データを入手したことがないとし、「制御された匿名性」を持つデジタル人民元は、権威主義国家の新たな統治ツールになると警告を発している。

日本国内の動き

日本では中央銀行デジタル通貨の発行こそ計画されていないものの、国際的な技術革新を踏まえ準備を進めている。

日本銀行は2020年10月9日、「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を発表、「技術革新のスピードの速さなどを踏まえると、今後、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」に対する社会のニーズが急激に高まる可能性」があるとした。そして「現時点でCBDCを発行する計画はないが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要」だと示している。

また、NHKの3月16日付の報道によると、黒田日銀総裁は同日金融庁等が主催した会合にメッセージを寄せた。黒田氏は、現段階ではデジタル通貨を導入する計画はないという立場を維持しつつも、将来の環境変化に備えて準備をするとの考えを示した。

(王文亮)

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