大紀元時報

北極圏に対する中国の野心とロシアが求める長期的利益の食い違い

2021年4月29日 12時35分
北極圏のコテリヌイ島に所在するロシア基地で軍用トラックの横に立つロシア軍兵士等(AFP/GETTY IMAGES)
北極圏のコテリヌイ島に所在するロシア基地で軍用トラックの横に立つロシア軍兵士等(AFP/GETTY IMAGES)

中国共産党が3月に発表した最新の5か年計画(国民経済・社会発展第14次5か年計画)には北極と南極に関する政策が盛り込まれた。2018年に中国共産党は初めて自国を「北極近隣国」として主張し、その前年の2017年には一帯一路(OBOR)政策の一環として北極・南極の開発に積極的に関与する方針を打ち出していたが、同5か年計画で中華人民共和国(中国)のこうした野心が再度強調されることとなった。

専門家等の説明によると、中国共産党はその目標を達成するために北極圏での軍事展開の拡大を継続するロシアに取り入り、中国の庇護者および政治的な推進要素として同国をうまく利用している。 2020年3月にオンライン雑誌のザ・ディプロマット(The Diplomat)誌に掲載されたリン・クォ(Ling Guo)アナリストとスティーブン・ロイド・ウィルソン(Steven Lloyd Wilson)博士共著の記事には、「今のところ北極圏における中露の協力関係は双方にとって実用的であり相互に有益な取引となる。つまり、NSR[北極海航路]を開発できる地理的近接性と専門知識を備えたロシアとこの取り組みを支援する経済的手段を有する中国との単なる結合である」と記されている。

しかし、両著者と他者の見解を合わせて考えると、北極圏の資源についてはロシアが競合する計画を掲げていることで最終的には中国共産党の攻撃的な姿勢がロシアの思惑と衝突することになりそうである。 2020年7月、オーストラリアのディーキン大学の教授を務めるエリザベス・ブキャナン(Elizabeth Buchanan)博士はフォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌の記事で、「ロシア政府が外資を必要としていることで中国政府は北極圏で権力の座に就くことができるが、ロシアは中国の投資に警戒を抱いている。ロシア政府は中国政府と取引することでもたらされる可能性と落とし穴の両方に慣れている。北極圏におけるロシアの経済安保計画を遂行するために同国が中国に過度に依存すると、地理的な中国の影響力が拡大する可能性がある」と述べている。

また、クォ・アナリストとウィルソン博士共著の記事には、「長期的に中露関係の流れを変える要因となり得るのは、中国が自国の優れた経済的地位を維持しながら、ロシアとの提携関係と他の選択肢(例えば砕氷船の国内開発や他の北極圏諸国との二国間関係の構築)を天秤にかける可能性である。一方、現在のところロシアでは北極海航路の開発を形成して管理を行うための資本が不足している」とも記されている。 中国共産党は今回の5か年計画で北極開発を推進するという野心を再び表明し、明らかに公海における北極資源に目を向けている。

さらに同記事には、「ロシアの極東に広がる北極圏に中国政府が侵略的にその存在感を高めることで、ゆっくりとではあるが着実に両国の利益の相違による対立が悪化する可能性が高い。現在の軌道を考えると北極圏で中国の役割が急激に高まっており、これがロシアとの直接的な競合に繋がる可能性があるが、問題はロシア側にこれに対処する準備が整っていないことである」と書かれている。 表面上は友好を装いながらも、中露関係では何十年にもわたり相互の不信感が水面下で燻っている。ロシアの国営通信社「イタルタス通信」の報道によると、2020年6月にロシア政府は機密情報を中国の諜報機関に提供した容疑で北極科学アカデミー(Arctic Academy of Sciences)の会長を刑事告発している。その後、北極評議会(AC)に実務者として参加するロシアのニコライ・コルチュノフ(Nikolai Korchunov)北極大使が、北極圏諸国と非北極圏諸国があるのみで中間はないと主張する米国への支持を表明し、自国を「北極近隣国」と主張する中国の民族自決に反駁した。

イタルタス通信によるとコルチュノフ北極大使は、「ロシアは他諸国にその権利を委任するつもりはない」と述べている。

ブキャナン博士著の記事に「中国政府に対して好意的な見方をするロシア国民の割合は2019年の72%から2020年の65%に低下した」と記されているように、中国共産党に対するロシア国民の不満が高まっている現状が世論調査により明らかとなった。 長期的に問題が深刻化する危険性がある。

2020年8月にザ・ディプロマット誌に掲載された北極評議会の高級実務者のシェリー・グッドマン(Sherri Goodman)法務博士とスティムソン・センターのユン・セン(Yun Sen)上級研究員共著の記事には、「港湾から飛行場に至るまでロシアが北極圏における軍事展開を継続的に強化する一方で、中国は従来型の「ハードな安全保障」よりも科学研究(これにより貴重な諜報機会が得られる)、統治、エネルギー、海運を優先して目立たないように北極圏で活動を展開している。これは北極圏において中国がロシアによる従来型の軍事的支配に対する挑戦者として捉えられることを回避するためだけでなく、現時点では中国政府に北極圏で活動できるだけの機能的な軍事力がないためである」と記されている。

同記事には、この中露の姿勢により中国共産党は「北極圏に対して脅迫的でないアプローチ」を取ることができたが、「現在の状況は中露の利益が常に同地域で一致することを約束するものではない。最も著しい中露の相違点は、ロシアが北極海航路を自国領海として定義し管理しようとしていることにある。ロシアが自国の権利と権威を過度に解釈していること、および北極海航路の航行に対する中国の権利をロシアが侵害したことについて中国は我慢を重ねてきた」と説明されている。

しかし、中国専門家等の指摘では、ロシアが外国船舶、特に外国海軍艦船に対して北極海航路の航行を制限することは国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約/UNCLOS)違反に当たる。グッドマン法務博士とセン上級研究員の記事には、ロシアが北極海に隣接していることを考えると、「中国などの非北極圏諸国は自国の権利を保護するために協議に頼らざるを得ない」と記されている。 

(Indo-Pacific Defence Forum)

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