大紀元時報

「デジタル人民元中心の国際金融システム」 中国共産党が見据える世界新秩序

2021年6月5日 18時02分
北京の銀行で展示されている1ドル札と100元札=2006年5月15日 イメージ写真(China Photos/Getty Images)
北京の銀行で展示されている1ドル札と100元札=2006年5月15日 イメージ写真(China Photos/Getty Images)
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オフラインでも利用可能なデジタル通貨は、従来の通貨に比べて優位性があり、世界の金融情勢を大きく変える可能性がある。中国人民銀行中央銀行)は、デジタル人民元の実用化に向けて大規模な試験運用を実施し、デジタル人民元のクロスボーダー(越境)利用の検討・準備を進めている。

昨年4月8日付の中国メディア「新浪財経(Sina Finance)」によると、中国人民銀行は2014年にデジタル通貨研究所を設立して以来、デジタル通貨技術に関する97件の特許を出願している。

習近平国家主席は2019年10月24日、中国共産党中央委員会(中共中央)政治局の第18回集団学習会議で、「ブロックチェーン技術と産業革新の発展を加速させるべきだ」と指示した。

1.実用化近づくデジタル人民元

中国の経済メディア「第一財経(YiCai)」は昨年11月22日、「ブロックチェーンで人民元をデジタル化し、中国は追従者から新秩序の指導者になる見込み」と題する記事を掲載した。記事は、デジタル人民元の登場に向けて、国内では新たな金融インフラの構築が始まり、海外ではクロスボーダー決済の新たな手段となる見込みがあると述べた。

デジタル人民元の取扱い方について、「デジタル人民元は、オンラインでもオフラインでも取引が可能だ。将来的には、アプリをインストールしたユーザー同士が、スマートフォンをかざすだけでリアルタイムに決済できるようになる」と説明した。

中央銀行は昨年4月、深圳、蘇州、北京、成都でのデジタル人民元パイロットテスト第1弾の開始を発表し、10月には試験地域を上海、海南、長沙、西安、青島、大連の6都市に拡大し、2021年までにデジタル人民元を全国に展開する計画だ。現在、中国の国有大手銀行6行がデジタルウォレットの普及に乗り出している。

一方、デジタル人民元は、クロスボーダー決済でも急速に進展している。中央銀行デジタル通貨研究所は2月、国際決済銀行(BIS)、アラブ首長国連邦やタイの中央銀行、香港金融管理局(通貨当局)とともに、クロスボーダー決済におけるデジタル人民元の応用を研究する「多国間中央銀行デジタル通貨ブリッジ研究プロジェクト(m-CBDC Bridge)」を立ち上げた。

2.「一つの地球に二つの制度」の戦いで優位立つ

中国の仮想通貨デジタル通貨の専門家で、復星グループの共同創業者である梁信軍氏は、4月30日の講演で、デジタル人民元が「より多くの国の中央銀行デジタル通貨やデジタルコミュニティ通貨とシームレスに交換し、グローバルな決済サイクルを可能にすることは、『一球二制度』に対処するための金融ソリューションである」と述べた。

中央銀行デジタル通貨とは、中央銀行が発行するデジタル形式の貨幣で、法定通貨(法貨)と同じ機能・属性を持ち、無制限に通用するもの。コミュニティ通貨(地域通貨)とは、市民団体などが独自に発行し、一定の地域や限られた会員の間でのみ流通する価値のあるもの。従来のプラスチックカードから、スマートフォン用の仮想通貨ソフトへと進化し、現在はブロックチェーン技術の発展により、デジタル通貨へと進化している。

「一球二制度」とは、マルクス・レーニン主義を信奉する中国共産党の世界情勢に対する基本的な理解である。つまり、現在、世界には資本主義と社会主義という2つの制度が存在している。ソビエト連邦の誕生から、この2つの制度の争いが始まった。「資本主義の終焉」までのかなりの期間、世界では、中国共産党に代表される全体主義体制と米国に代表される民主主義体制が闘争しながら共存することになる。

3.国際金融システスを支配するという野望

中国政府は2015年7月、上海で人民元国際決済システム(CIPS)を立ち上げた。そのウェブサイトには、「2019年末までに、CIPSの直接参加者は33社、間接参加者は903社となり、システム開始時に比べてそれぞれ74%、413%増加し、契約した国・地域は94に達した。CIPSのオペレーションは、167の国と地域の3000以上の銀行やその他の金融機関をカバーしている。2021年までに、香港、マレーシア、オーストラリア、南アフリカなど多くの国と地域で事業を展開し、決済総額は1億5100万ドル(約165億円)に達する見込み」と書かれている。

しかし、中国当局は、現在の国際決済システムにおいて、人民元が米ドルを直接脅かすほどの実力を有していないことを知っている。そのため、中国共産党は、デジタル通貨暗号資産仮想通貨)を強力的に推進することによって、この分野で世界の主導権を握り、米ドル基軸体制を覆そうとしている。

専門家の分析がそれを裏付けている。仮想通貨投資企業、プリミティブ・ベンチャーズ(Primitive Ventures)の創業パートナー、ダビー・ワン(Dovey Wan)氏は2019年5月17日、通貨メディアCoindeskに「デジタル人民元:ブロックチェーンベースのソブリン通貨、M0 (流通中の現金) を再び偉大に」と題した長文を掲載した。

ワン氏は記事で、「デジタル人民元は、中国にとって経済的にも政治的にも重要な意味を持っている。これが成功すれば、国内外の経済に対する中国の中央銀行の影響力が大幅に拡大するだけでなく、国際金融秩序やビットコインのような非主権的な暗号資産の将来にも大きな影響を与えることになる」と指摘した。

「ブロックチェーンの利点は、追跡可能性と取引ルール変更可能性にある。中央銀行は、デジタル人民元の流れに関するルールをコードレイヤーに書き込むことができる。 例えば、中央銀行が不動産市場へのホットマネーの流入を阻止したい場合、デジタル人民元が不動産分野に入らないようなプログラムを設定すればよい」とワン氏は具体例を交え解説した。

デジタル人民元は、人民元の海外での影響力を高めることができる。ワン氏によると、巨大経済圏構想「一帯一路」の進展に伴い、デジタル人民元は、沿線の60カ国以上と国際貿易を促進することができる。さらに、中国はベネズエラの最大の債権者であり、アフリカ諸国の国債の14%以上を保有していることから、中国共産党は債務危機に陥ったこれらの「友好国」に、新興市場経済の基軸通貨としてデジタル人民元を提供できるという。

デジタル人民元がこれらの新興国の基軸通貨になれば、中国の国際的影響力の拡大につながる」とした。

デジタル人民元は、中国が外貨準備のドル資産を減らし、金準備を大幅に増やし、米国債を売却するなど、積極的に脱ドル金融政策をとっていることと、非常に相乗効果がある。いずれにしても、これらの動きは米中関係を悪化させ、さらには米国にデジタルドルの導入を迫る可能性もある」とワン氏は分析した。

4.デジタル人民元の究極目的「SWIFTと米国金融覇権の崩壊」

中国メディアの報道では、デジタル人民元の最終的な狙いも明らかになっている。中国最大のポータルサイト「新浪(sina)」は昨年9月2日、「デジタル人民元の背後にある金融覇権争い」と題した記事を掲載し、「デジタル通貨は表面的なものに過ぎず、国際決済システムの再構築こそが遠大な野望である。ドル覇権の裏には、ユビキタスな通貨決済ネットワークであるSWIFT(スイフト、国際銀行間通信協会)という技術的バックボーンがある」と論じた。

「決済システムの再構築は、デジタル通貨の構築よりもはるかに重要だ。ブロックチェーン時代の幕開けは、クリアリングシステム(清算機関、Clearing System)を再構築する絶好の機会でもある」と語った。

文章はさらに、「デジタル人民元のオープンソースシステムが優れたものとなり、他の国が安全かつ迅速に現地通貨を発行・送金できるようになれば、新しい金融システムの構築につながる画期的な成果となるだろう。これが中国(共産党)のデジタル通貨に対する最大の狙いだ。(中略)ドルの基軸通貨体制は常に金融危機を引き起こし、より穏健な競争相手を必要としている。デジタル通貨の時代には、数学へのパワープロジェクション(戦力投射)を最も早く完成させた者が、金融覇権を握ることができる」と主張した。

国営新華社通信2019年8月11日付は、中央銀行デジタル通貨研究所の穆長春(ムー・チャンチュン)所長の話として、現在、同研究所が複数の研究機関を競わせてデジタル通貨の開発を進めていると報じた。「ブロックチェーン、集中口座システム、電子決済、モバイル決済、その他の技術路線があっても、中央銀行は対応できる」と穆氏は述べた。

中央銀行の李波副総裁は、4月18日に開催された「ボアオ・フォーラム・フォー・アジア」で講演し、中央銀行は、ビットコインやステーブルコイン(法定通貨との交換レートが一定に保たれた仮想通貨、Stable coin)などの暗号資産を規制するためのルールを検討していると述べ、「将来的に広く使われる決済手段になり得るステーブルコインは、銀行や準銀行系金融機関と同様に、厳しい規制を受けなければならない」と強調した。

要するに、デジタル通貨であれ、暗号資産であれ、中国共産党はそれを世界の金融秩序を変えるための操作ツールとして利用している。中国共産党はブロックチェーン技術でデジタル人民元を支えるインフラを構築することで、金融専制システムを徐々に輸出している。

5.米国の反応

テキサス州ダラスに拠点を置くヘイマン・キャピタル・マネジメントの創業者、カイル・バス(Kyle Bass)氏は4月9日、大紀元のインタビューで、「中国共産党はデジタル通貨をトロイの木馬に見立てて民主主義を攻撃しており、自由主義陣営の国々はこれを非合法化する必要がある」と警告した。

オンライン決済サービス「PayPal(ペイパル)」の創業者であるピーター・ティール(Peter Thiel)氏は、4月6日に開催されたリチャード・ニクソン財団主催のイベントで、「暗号資産は、中国(共産党)による不換通貨、特に米ドルに対する脅威である」と述べ、暗号資産の規制強化を米政府に求めた。

シンシア・ルミス(Cynthia Lummis)米上院議員は5月19日、「中国(共産党)は一部の都市でデジタル人民元をテストし、それを利用して世界の金融界でドルを脅かしている。これは国家の安全保障上の問題であり、米国が反応しなければ、我々は後れを取ることになる」とツイートした。

バイデン政権は、中国のデジタル人民元プログラムへの監視を強化している。一部の政府関係者は、この動きが世界の基軸通貨としてのドルに取って代わるための長期的な計画の始まりではないかと懸念していると、4月12日付のブルームバーグが情報筋の話として報じた。

バイデン政権は現在、デジタル人民元の脅威に対抗する措置を講じる予定はないが、中国のデジタル人民元計画は、米国がデジタルドルの導入を検討する上で新たな刺激となっているという。

(文・Jennifer Bateman、Sophia Lam/翻訳編集・王君宜)

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