大紀元時報

<インタビュー>麻生副総理の「台湾防衛」発言、その真意は 駐日米軍の元幹部に聞く

2021年7月8日 14時00分
2020年度の「漢光演習」で射撃訓練を行う台湾の機甲部隊 (Photo by SAM YEH/AFP via Getty Images)
2020年度の「漢光演習」で射撃訓練を行う台湾の機甲部隊 (Photo by SAM YEH/AFP via Getty Images)

麻生太郎副総理兼財務相は5日、東京都内で行われた講演で、中国が台湾に侵攻した場合には安全保障関連法が定める「存立危機事態」として認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得るとの認識を示した。「存立危機事態」とは、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したとき、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態のことだ。

そこで、麻生副総理がそのような発言をしたのはなぜなのか。また、どのような意義を有するのか。大紀元は、元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長のロバート・D・エルドリッヂ氏に聞いた。


ー麻生副総理の発言の意義と背景は。

背景としては主に4点挙げられる。その前に、意義について。麻生副総理の認識は当然だ。中国共産党政権による台湾侵攻は、完全に存立危機事態に当たると思う。台湾有事は日本の有事だ。地政学的観点からも、経済安全保障の観点からも明確だ。政治的発言というよりは、一般的な事実を述べただけだ。

背景には一点目として、麻生氏は個人的、歴史的に台湾台湾よりの政治家で、また、その地元である福岡も、戦前から台湾とのつながりが深い地域だ。

第二点には、台湾をより重視する流れが、最近の日本政府の関係者にあると思う。安倍政権から続く自然な流れの一環だと思う。先日、台湾が日本の「兄弟だ」と述べた中山防衛副大臣も同じような観点を持っている。数週間前に立憲民主党の枝野代表が日本外国特派員協会で新書を発表したが、その際も質問への回答のなかで台湾は国であると発言した。また、その前日、菅総理も台湾を国としての認識を国会において示した。この一連の動きを高く評価したい。

第三点だが、自民党党内にはあいにく中国共産党よりの国会議員、地方議員がいる。政権内において麻生氏の政敵は、親中の二階幹事長と言われている。麻生発言は中国へのけん制とともに、日本の対中の立場を著しく損害を与えている二階氏やその周辺に対してもだと言える。

四つ目だが、米国も台湾との関係をトランプ政権以来、強化してきたことを踏まえた発言だ。

ー日本と台湾の関係について。

日米台の三国関係では、日本は遅れていると思う。特に足りないのは、台湾関係法の制定だ。安倍・トランプ・蔡総統の三人の民主主義国家の首脳が揃っていた2018年にはそう提言したが、政府は残念ながら動かなかった。もちろん法律がなければ、日本はなにもできないということではない。しかし双方の関係を定めた法律が成立すれば、例えば合同訓練や、武器提供など様々なことができるようになる。人道支援活動も、日米台でよりスムーズに行うことができるし、その訓練もしやすくなる。

ー日本国内では慎重な意見もある。

実際の有事が発生してから、ゼロからの準備を行うのは手遅れだ。台湾有事を想定した様々な演習や訓練などに、台湾の関係者を参加させることが極めて重要だ。

平時に汗を流せば戦場で血を流さず(あるいは最小限)に済む。特に、汗を流してほしいのは、法律をつくる政治家。台湾を守ることは、世界を守ることになる。いうまでもなく、日本も守ることでもある。それをわからず、行動しない政治家は国政に送り込んではいけない。

ー秋の衆議院選挙でも台湾問題は論点となりえるか。

来る秋の衆議院選挙でも、台湾問題は争点の一つとなりえると考える。というより、なるべきだと思う。中共寄りの議員は難しい立場に立たされるだろう。なぜなら、ほとんどの日本国民は台湾を支持している。国会だけでこのような議論をするのはもったいない、国民の間でも議論をしてほしいというのが、麻生副総理の発言のもう一つの意義かもしれない。台湾問題がいかに重要であるかを国民に分かってほしいのだと思う。

ー東アジアにおけるパワーバランスをどう見るか。

中国人民解放軍は非常に強くなっている。20年前であれば、台湾侵攻は不可能だったが、今は既にできるようになった。侵攻しようという意志も前からあったが、能力はなかった。ところが、現在は両方を揃えている。すなわち、意思+能力=侵攻という式が成り立つ。

いっぽう、距離との戦いに直面するなか、遠く離れている米軍の力は相対的に弱くなっていると言える。日米同盟があるではないか、との意見もあるかもしれないが、合同訓練などは十分とは言えないため、抑止力は十分とは言えない。また、防衛の主要な義務のある台湾軍もその合同訓練に入っていない。

ー中国共産党による台湾侵攻の現実味をどのように考えるか。

中国共産党が台湾に侵攻することについて、多くの日本人やアメリカ人は「非合理的な選択だ」としてあざ笑う。しかし、「非合理的」というのは日本人やアメリカ人の観点からの判断であり、日本やアメリカで暮らす人にとっては、確かに非合理的な選択かもしれない。

いっぽう、中国共産党にとって、台湾侵攻には多くのメリットがある。彼らは本気だ。侵攻しないはずがない。実際、(当時)米インド太平洋軍司令官フィリップ・デービッドソン将軍は、台湾侵攻は6年以内に起こると発言しているのだ。

(聞き手・王文亮)


ロバート・D・エルドリッヂ

1968年米国ニュージャージー州生まれ。政治学博士。米リンチバーグ大学卒業後、神戸大学大学院で日米関係史を研究する。大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖アメリカ海兵隊政治顧問としてトモダチ作戦の立案に携わる。主な著書に『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会、2003年)、『尖閣問題の起源』(名古屋大学出版会、2015年)など多数。

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