習政権、北京証券取引所設立へ 専門家「金融貿易の南部集中を回避する狙い」

2021/09/04
更新: 2021/09/04

中国の習近平国家主席は2日、北京市で国内3番目の証券取引所、北京証券取引所を設立すると発表した。対象は中国の中小企業だという。専門家は、同取引所の設立は共産党内の勢力図に関わり、内循環経済政策に備えるためにあると指摘した。

習近平氏は同日、中国国際サービス貿易交易会の開幕式に合わせてビデオ演説を行った。同氏は「中小企業のイノベーションと発展を引き続きサポートし、新三板の改革を深化するために、イノベーション型中小企業向けの主要な拠点として北京証券取引所を設立する」と述べた。

今年1月、米ニューヨーク証券取引所(NYSE)は中国電信(チャイナ・テレコム)を含む中国通信大手3社の上場廃止を発表した。米国のトランプ前大統領が昨年11月署名した、中国軍とのつながりを持つ中国企業への証券投資を禁じる大統領令が背景にある。米国や中国では、今後米上場の中国企業が国内に回帰する動きが加速化するとの見方が広まった。

ロイター通信は今年3月、情報筋の話として、中国当局は国内に戻る中国企業のために、新たな証券取引所の設立を検討していると報道した。当時、中国の証券規制当局はコメントしなかった。

米株式市場は、中国企業にとって重要な資金調達先となっている。しかし、中国当局はこのほど、国外へのデータ流出を防ぐためだとして、中国企業の米上場に規制を強化した。当局は7月、「サイバーセキュリティ審査弁法」の改定案を公表し、ユーザーの個人情報を100万件以上保有するIT企業などが海外市場に上場する場合、事前に当局のサイバーセキュリティ審査を受けなければならないと定めた。

台湾経済学者の呉嘉隆氏は、「習政権が北京で証券取引所を設立する理由の1つは、党内派閥間の権力闘争にある」と大紀元に語った。中国本土にある2カ所の証券取引所、上海証券取引所と深セン証券取引所は中国の南部に位置し、「いずれも江沢民派と曽慶紅派の勢力拠点だ」。

呉氏は、習近平氏が北京証券取引所の設立を通じて「資金が少しでも北方地域に流れるようにしたい意図がある。中国の金融、IT、貿易などのセクターが南部に集中し過ぎているという現状を変えたいのだろう」とした。

呉氏は、「全世界の大半の国では、中小企業だけが上場する証券取引所はない」ことを挙げ、北京証券取引所の今後の運営に関して「うまく行かない」と示した。

「設立後、当局は市場調査や専門家などとの意見交換を行ったり、投資家や市場関係者に受け入れてもらう必要がある。簡単なことではない。このような取引所の成功例を見たことがない」と同氏は指摘した。

在米中国人経済学者の李恒青氏は、北京証券取引所の設立は習近平政権の内循環経済政策に関連するとの見方を示した。内循環は国内経済大循環という意味である。米中対立が激化するなか、海外に頼らず、国内の生産能力は国内で自ら消化し、国民のニーズは国内企業だけで満たしていく政策方針だ。文化大革命中、中国当局が掲げた「自力更生」に近い。

李氏は、習政権が内循環政策で米国とのデカップリングを進め、鎖国する意図があるとの見解を示した。国内経済を発展させていくのに「国民から資金を調達する必要がある」とした。

(翻訳編集・張哲)

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